【2024年最新】泊まってみたい古民家ホテルおすすめ20選 全国の人気宿

泊まってみたい古民家ホテルおすすめ20選、全国の人気宿

忙しい日常から離れ、どこか懐かしく、それでいて新しい発見に満ちた旅をしてみませんか。近年、旅のスタイルとして注目を集めているのが「古民家ホテル」です。長い年月を経てきた日本の伝統的な家屋が、現代の感性と快適性を備えた宿泊施設として生まれ変わり、多くの旅人を魅了しています。

そこには、ただ泊まるだけではない、特別な時間が流れています。太い梁や柱が語りかける歴史の物語、職人の手仕事が光る美しい意匠、そしてその土地ならではの文化や食との出会い。古民家ホテルでの滞在は、五感を満たし、心に深く刻まれる体験となるでしょう。

しかし、一言で「古民家ホテル」といっても、その個性はさまざま。ラグジュアリーなホテルタイプから、暮らすように過ごせる一棟貸しまで、多種多様な選択肢があります。だからこそ、自分にぴったりの一軒を見つけるのは、宝探しのような楽しさがあるのです。

この記事では、古民家ホテルの基本的な知識から、その尽きない魅力、そして自分に合った宿を見つけるための選び方までを詳しく解説します。さらに、北は北海道から南は鹿児島まで、全国から厳選したおすすめの古民家ホテル20選を、その特徴とともにご紹介します。

次の休日は、日本の古き良きものに触れる、心豊かな旅へ出かけてみませんか。この記事が、あなたの特別な旅のきっかけとなれば幸いです。

古民家ホテルとは

古民家ホテルとは

近年、旅行雑誌やウェブサイトで頻繁に目にするようになった「古民家ホテル」。この言葉に、どこか懐かしく、温かみのある響きを感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、具体的にどのような宿泊施設を指すのか、一般的なホテルや旅館と何が違うのか、正確に理解している人はまだ少ないかもしれません。ここでは、古民家ホテルの定義からその背景、特徴までを掘り下げ、その全貌を明らかにしていきます。

古民家ホテルとは、その名の通り、建築から長い年月が経過した日本の伝統的な家屋、すなわち「古民家」を、現代の宿泊施設として再生(リノベーション)した施設を指します。明確な法的定義はありませんが、一般的には戦前に建てられた、あるいは築50年以上を経過した伝統的工法による木造建築物を活用したものを指すことが多いです。これらの建物は、かつては庄屋の屋敷であったり、商家、武家屋敷、農家など、その土地の歴史や文化を色濃く反映したものが少なくありません。

古民家ホテルの最大の特徴は、歴史的建造物ならではの趣や意匠を最大限に尊重しつつ、現代人が快適に過ごせるための設備を巧みに融合させている点にあります。例えば、がっしりとした梁や柱、美しい細工が施された欄間、趣のある土壁や縁側といった伝統的な要素はそのままに、断熱性を高め、最新の空調設備や清潔な水回り(バスルーム、トイレ)、快適なベッド、Wi-Fi環境などを整備しています。これにより、古き良き日本の建築美を堪能しながら、現代のホテルに遜色ない快適な滞在が可能となるのです。

この古民家ホテルが注目されるようになった背景には、いくつかの社会的な要因が絡み合っています。一つは、深刻化する日本の「空き家問題」です。人口減少や核家族化の進行により、日本全国で管理されずに放置される空き家が増加し、景観の悪化や防災上のリスクなどが社会問題となっています。こうした状況の中、歴史的・文化的に価値のある古民家を解体するのではなく、宿泊施設として再生・活用する動きが、持続可能な地域づくりの一つの解決策として期待されるようになりました。これは、建物の保存だけでなく、新たな雇用創出や交流人口の増加を通じて、地域経済の活性化にもつながります。

また、旅行者の価値観の変化も大きな要因です。画一的なサービスを提供する大型ホテルではなく、その土地ならではのユニークな体験や、本物の文化に触れたいという「コト消費」へのニーズが高まっています。古民家ホテルは、建物自体が持つ物語性や、その地域に根差した食、文化体験を提供することで、こうしたニーズに見事に応える存在なのです。特に、日本文化への関心が高い海外からの旅行者(インバウンド)にとっても、古民家ホテルでの滞在は、日本の伝統的な暮らしを体験できる非常に魅力的なコンテンツとして受け入れられています。

ここで、一般的なホテルや旅館と古民家ホテルの違いを整理してみましょう。

項目 古民家ホテル 一般的なホテル 伝統的な旅館
建物 歴史的建造物を再利用(リノベーション) 新築または近代建築物 伝統的な和風建築(新旧混在)
デザイン 伝統的な意匠とモダンデザインが融合 機能的・現代的なデザインが主流 統一された和風のデザイン
客室数 少ない(数室~十数室、一棟貸しも多い) 多い(数十室~数百室) 規模により様々
宿泊体験 非日常性、歴史・文化体験、プライベート感 快適性、利便性、標準化されたサービス 日本のおもてなし文化、温泉、会席料理
食事 地産地消の創作料理、オーベルジュ形式など多様 レストラン、ビュッフェなど選択肢が豊富 部屋食または食事処での会席料理が基本
地域との関わり 地域の文化拠点となることが多く、連携が強い 主に観光拠点としての機能 地域に根差しているが、宿内で完結する場合も

この表からもわかるように、古民家ホテルはホテルと旅館の良い面を併せ持ちつつ、「歴史性」と「ユニークな体験価値」という独自の強みを持っています。

とはいえ、古民家と聞くと「冬は寒そう」「隙間風が入るのでは?」「虫が出やすいのでは?」といった快適性に関する不安を抱く方もいるかもしれません。しかし、現代の古民家再生プロジェクトでは、こうした懸念点を解消するための工夫が凝らされています。床下や壁、天井に高性能な断熱材を入れたり、サッシを二重窓にしたりすることで、断熱性・気密性を飛躍的に向上させています。また、最新の空調システムや床暖房を導入している施設も少なくありません。防虫対策も専門業者が行うなど、見た目の趣はそのままに、住環境としての快適性は現代の住宅以上に高められているケースが多いのです。

古民家ホテルは、単に古い建物を宿泊施設に変えただけのものではありません。それは、失われつつある日本の美しい建築文化を未来へと継承し、その土地の歴史や風土を深く体験できる、新しい旅のプラットフォームです。過去と現在が交差し、訪れる人々に静かな感動と本質的な豊かさを提供してくれる場所、それが古民家ホテルの本質と言えるでしょう。

古民家ホテルが人気の理由と3つの魅力

伝統とモダンが融合した美しい空間、日常を忘れる特別な宿泊体験、その土地ならではの歴史や文化に触れられる

なぜ今、多くの人々が古民家ホテルに惹きつけられるのでしょうか。その人気は一過性のブームではなく、現代人が旅に求める本質的な価値と深く結びついています。ここでは、古民家ホテルが持つ普遍的な魅力を「空間」「体験」「文化」という3つの切り口から解き明かしていきます。

① 伝統とモダンが融合した美しい空間

古民家ホテルの最大の魅力の一つは、何と言ってもその空間美にあります。長い年月を耐え抜いてきた建物だけが持つ、独特のオーラと温もり。それは、現代の建築技術だけでは決して再現できない、時間という名のデザイナーが創り上げた芸術品とも言えます。

まず目を引くのが、日本の伝統建築ならではの構造美です。天井を見上げれば、何百年もの間、家を支え続けてきた黒光りする太い梁(はり)や、緻密に組まれた小屋組がダイナミックな景観を見せてくれます。客室を仕切る障子や襖を開け放てば、内と外がゆるやかにつながり、開放感あふれる空間が生まれます。縁側に腰を下ろし、手入れの行き届いた庭を眺めれば、心地よい風が吹き抜け、季節の移ろいを肌で感じることができます。細部に目を向ければ、職人の遊び心が垣間見える欄間(らんま)の透かし彫りや、美しい組子細工など、思わずため息が出るような手仕事の粋に出会えるでしょう。

しかし、古民家ホテルの魅力は、ただ古いものをそのまま残しているだけではありません。その真骨頂は、歴史を物語る伝統的な意匠と、洗練されたモダンデザインとの絶妙な融合にあります。例えば、古びた土壁の前に、北欧デザインのミニマルなソファが置かれていたり、和紙を通した柔らかい光を放つ伝統的な照明の隣に、現代アーティストによる間接照明が効果的に配置されていたりします。畳の間に置かれた寝心地の良いローベッド、歴史を感じる建具の向こうに見える最新式のスタイリッシュなバスルームなど、新旧の要素が見事に調和し、互いの魅力を引き立て合っているのです。

この「伝統とモダンの融合」は、単なるデザインの折衷ではなく、宿泊者に最高のくつろぎを提供するための機能的な配慮でもあります。古民家の持つ落ち着きや安心感はそのままに、現代生活に不可欠な快適性や利便性を確保する。このバランス感覚こそが、古民家ホテルならではの居心地の良さを生み出しています。

そして、こうした美しい空間は、現代のライフスタイルに欠かせない「写真映え」という観点からも非常に魅力的です。自然光が差し込む縁側、陰影が美しい土間の空間、アートのように配置された家具や調度品など、どこを切り取っても絵になります。SNSを通じてその美しい空間が拡散されることで、新たなファンを獲得し、人気がさらに高まるという好循環が生まれています。古民家ホテルでの滞在は、美しい写真を撮る楽しみも提供してくれるのです。

② 日常を忘れる特別な宿泊体験

都市の喧騒から離れ、心からリラックスしたい。多くの人が旅に求めるこの願いを、古民家ホテルは格別な形で叶えてくれます。それは、画一的なホテルでは決して味わえない、日常から完全に切り離された「非日常」の体験です。

その非日常感の源泉は、まずプライベート性の高さにあります。多くの古民家ホテルは、客室数が数室程度と限られていたり、中には一日一組限定、あるいは建物一棟を丸ごと貸し切れる「一棟貸し」のスタイルをとっていたりします。これにより、他の宿泊客の気配をほとんど感じることなく、静かでプライベートな時間を過ごせます。まるで自分の別荘のように、誰にも邪魔されずに家族やパートナー、友人たちと水入らずの時間を満喫できるのです。広々としたリビングで語らったり、キッチンで地元の食材を使って料理をしたり、庭でバーベキューを楽しんだり。「泊まる」だけでなく「暮らす」ように旅をするという、新しい贅沢な時間の使い方がそこにあります。

さらに、古民家ホテルでの滞在は、私たちの五感を豊かに刺激します。玄関の扉を開けた瞬間に感じる、古い木や畳、土壁の懐かしい香り。素足で歩いた時の、無垢材の床や畳の心地よい感触。窓から聞こえてくるのは、車の騒音ではなく、鳥のさえずりや虫の音、風にそよぐ木々の葉音。夜には、満点の星空が広がり、静寂の中で自分と向き合う時間を持つことができます。

施設によっては、囲炉裏に火を入れ、パチパチと薪がはぜる音を聞きながら暖をとる体験もできます。こうした体験は、デジタルデバイスに囲まれた日常では決して得られない、原始的で根源的な安らぎを心にもたらしてくれます。便利さや効率性とは対極にある、ゆったりと流れる時間の中に身を置くことこそが、最高のデトックスとなり、心身をリフレッシュさせてくれるのです。古民家ホテルが提供するのは、単なる宿泊サービスではなく、忘れかけていた人間本来の感覚を取り戻させてくれる、特別な時間そのものなのです。

③ その土地ならではの歴史や文化に触れられる

古民家ホテルに泊まることは、その土地の歴史と文化の物語に深く分け入っていく体験でもあります。建物自体が、生きた歴史の証人だからです。

多くの古民家ホテルでは、その建物の歴史や、かつてどのような人々が暮らし、どのような生業を営んでいたのか、その物語を大切に伝えています。チェックインの際にスタッフから建物の由来を聞いたり、館内に置かれた資料を読んだりすることで、私たちは時間旅行者のように、その土地の過去に思いを馳せることができます。「この太い梁は、何世代にもわたる家族の暮らしを見守ってきたのだろう」「この柱の傷は、子供たちがつけたものかもしれない」。そんな想像を巡らせる時間は、旅をより一層味わい深いものにしてくれます。

さらに、古民家ホテルは単なる宿泊施設に留まらず、地域の文化発信拠点としての役割を担っていることが少なくありません。その最たる例が「食」です。多くの宿では、料理長が自ら畑を耕したり、地元の生産者を訪ね歩いたりして仕入れた、旬の野菜や山菜、新鮮な魚介類、ジビエなど、その土地でしか味わえない食材をふんだんに使った料理を提供しています。地域の伝統的な調理法をベースに、現代的な感性でアレンジされた一皿一皿は、まさに「食べる文化体験」。その土地の風土や季節を丸ごと味わうような、贅沢な食体験が待っています。

食以外にも、さまざまな文化体験プログラムが用意されていることも魅力です。例えば、地元の職人を講師に招いた陶芸や和紙作り、藍染めといった伝統工芸のワークショップ。あるいは、農業体験やそば打ち体験、季節によっては山菜採りや川魚釣りなど、その土地の自然や暮らしに根差したアクティビティ。これらの体験を通じて、旅行者は単なる観光客ではなく、地域コミュニティの一員として、その文化に深く触れることができます。

そして、こうした古民家ホテルの在り方は、「サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)」という現代的な価値観とも共鳴します。歴史的建造物を保存・活用することは文化遺産の継承に直結し、地元の食材や産品を利用し、雇用を生み出すことは地域経済の活性化に貢献します。私たちが古民家ホテルを選んで宿泊するという行為そのものが、その地域の文化や経済を支え、未来へと繋いでいく一助となるのです。自分の旅が社会的な意義を持つという実感は、旅の満足度をさらに高めてくれるでしょう。

自分にぴったりの古民家ホテルを見つける4つの選び方

宿泊スタイルで選ぶ、旅の目的で選ぶ、ロケーションや周辺環境で選ぶ、設備やアメニティで選ぶ

全国に魅力的な古民家ホテルが増える中、「どこを選べばいいかわからない」と迷ってしまうこともあるでしょう。最高の滞在を叶えるためには、自分の旅のスタイルや目的に合った宿を見つけることが重要です。ここでは、後悔しない古民家ホテル選びのための4つの具体的な視点をご紹介します。

① 宿泊スタイルで選ぶ(ホテル・旅館・一棟貸し)

古民家ホテルは、その運営形態によって大きく3つのスタイルに分けられます。それぞれの特徴を理解し、誰と、どのように過ごしたいかに合わせて選ぶのが最初のステップです。

スタイル メリット デメリット こんな人におすすめ
ホテルタイプ フロントやレストラン、バーなどサービスが充実。コンシェルジュに相談できる安心感。 料金は比較的高めになる傾向。他の宿泊客との共有スペースが多い。 手厚いサービスを求める人、食事の心配をしたくないカップルや夫婦。
旅館タイプ 仲居さんによるおもてなしや部屋食など、日本の伝統的な旅館文化を体験できる。こだわりの会席料理が楽しめる。 サービスが手厚い分、プライベートな時間を重視する人には少し窮屈に感じる場合も。 伝統的な「おもてなし」を受けたい人、本格的な和食を楽しみたい美食家。
一棟貸し 完全なプライベート空間で、気兼ねなく過ごせる。キッチン付きが多く、自炊や持ち込みも可能で自由度が高い。 食事の準備は基本的に自分で行う必要がある。常駐スタッフがいない場合も多く、サービスは最小限。 グループや三世代家族での旅行、暮らすように旅をしたい長期滞在者。

ホテルタイプは、古民家の趣と現代的なホテルの快適性・利便性を両立させたい方に最適です。フロントにはスタッフが常駐し、レストランやバーが併設されていることも多く、滞在中の食事や観光の相談もスムーズです。サービスの質を重視し、安心して快適に過ごしたいカップルや記念日旅行におすすめです。

旅館タイプは、日本の伝統的な「おもてなし」を深く体験したい方にぴったりです。仲居さんによるきめ細やかなサービス、部屋でゆっくりと味わう会席料理など、古き良き旅館文化を古民家の空間で満喫できます。特に、食事の時間を大切にしたい方や、非日常の特別感を存分に味わいたい方に向いています。

一棟貸し(ヴァケーションレンタル)タイプは、プライベート感を何よりも重視する方に絶大な人気を誇ります。広々とした家屋を丸ごと自分たちだけで使えるため、小さなお子様連れの家族や、友人グループでの旅行に最適です。キッチンで地元の食材を料理したり、庭でBBQをしたりと、まるでその土地に暮らしているかのような自由な滞在が楽しめます。コストパフォーマンスが高い場合も多く、長期滞在にも向いています。

② 旅の目的で選ぶ(温泉・食事・体験)

次に、その旅で何を一番楽しみたいか、「旅の目的」を明確にしましょう。古民家ホテルはそれぞれに強い個性やこだわりを持っています。

【温泉で癒されたい】
旅の醍醐味といえば、やはり温泉。古民家ホテルの中には、敷地内に源泉を持っていたり、趣のあるお風呂を備えていたりする宿が多くあります。チェックすべきポイントは、「源泉かけ流し」かどうか、「貸切風呂」や「露天風呂付き客室」があるかどうかです。源泉かけて流しであれば、新鮮で質の高いお湯を堪能できます。また、プライベートな空間で温泉を楽しみたいなら、貸切風呂や客室露天風呂の有無は重要な選択基準になります。泉質(単純温泉、硫黄泉、塩化物泉など)やその効能(美肌効果、疲労回復など)を事前に調べて、自分の体調や好みに合った温泉を選ぶのも良いでしょう。

【美食を堪能したい】
その土地ならではの食を味わうことは、旅の大きな楽しみです。古民家ホテル選びにおいても、「食」は非常に重要な要素です。「オーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)」を謳う宿であれば、シェフのこだわりが詰まった最高レベルの料理が期待できます。注目したいのは、地産地消へのこだわりです。公式サイトなどで、地元のどんな食材(有機野菜、ブランド牛、新鮮な魚介類、ジビエなど)を使っているか、どのような料理コンセプト(伝統的な郷土料理、フレンチやイタリアンとの融合など)かをチェックしましょう。囲炉裏でいただく炭火焼きや、その土地の器を使ったプレゼンテーションなど、食の「体験」全体を重視する宿も魅力的です。

【特別な体験をしたい】
せっかくなら、そこでしかできない体験をしたい、という方にはアクティビティが充実した宿がおすすめです。宿が提供する体験プログラムは多岐にわたります。

  • 文化体験: 陶芸、藍染め、和紙作り、そば打ち、お茶席体験など
  • 自然体験: 農業体験(収穫)、星空観測ツアー、カヌー、トレッキング、山菜採りなど
  • 暮らし体験: 囲炉裏体験、薪割り、五右衛門風呂体験など

どのような体験を通じてその土地の魅力を感じたいかを考え、自分の興味に合ったプログラムを提供している宿を選びましょう。こうした体験は、旅の思い出をより一層色鮮やかで忘れがたいものにしてくれます。

③ ロケーションや周辺環境で選ぶ

どこに佇む宿なのか、そのロケーションも滞在の質を大きく左右します。静けさを求めるのか、街歩きを楽しみたいのかで、選ぶべき場所は変わってきます。

  • 山間・里山: 豊かな自然に囲まれ、静寂の中で心からリラックスしたい方におすすめ。鳥のさえずりで目覚め、夜は満点の星空を眺めるような、穏やかな時間を過ごせます。アクセスが不便な場合もあるため、車での訪問が基本となることが多いです。
  • 城下町・宿場町: 歴史的な街並みが保存されているエリアに立地。着物で街を散策したり、老舗の店を訪ねたりと、宿の外でも歴史情緒を満喫できます。公共交通機関でアクセスしやすい場所も多く、車がない方にも便利です。
  • 海辺の集落: 窓から海を眺め、潮風を感じながら過ごしたい方に。新鮮な海の幸を味わえるのも魅力です。漁村の素朴な暮らしに触れたり、ビーチでのんびりしたりと、海辺ならではの滞在が楽しめます。

また、アクセスの利便性も現実的な問題として考慮しましょう。公共交通機関を利用する場合は、最寄り駅からの距離や送迎サービスの有無を確認することが必須です。車で訪れる場合は、駐車場の有無と、冬場であれば積雪や道路の凍結の可能性も頭に入れておく必要があります。宿での滞在だけでなく、周辺にどんな観光スポットや飲食店、スーパーなどがあるかを事前にリサーチしておくと、より充実した旅の計画が立てられます。

④ 設備やアメニティで選ぶ

古民家の趣は大切にしつつも、滞在の快適性を左右する設備やアメニティのチェックも忘れてはなりません。特に長期滞在やワーケーションを考えている場合は重要です。

  • 基本的な快適設備: Wi-Fiの有無と速度は今や必須条件の一つです。ワーケーションで利用する場合は特に重要になります。また、夏や冬の滞在を考えるなら、エアコンや床暖房などの空調設備がしっかりしているかを確認しましょう。ベッドで眠りたい方は、マットレスの質や寝具のブランドに言及している宿を選ぶと安心です。
  • 水回り: バスルームやトイレの清潔感は快適な滞在に直結します。リノベーションで最新の設備が導入されているか、写真などで確認しましょう。
  • アメニティ: シャンプーやボディソープなどのバスアメニティに、オーガニックブランドや地元のハーブを使ったオリジナル製品を採用している宿は、滞在の質へのこだわりが感じられます。質の良いタオルや肌触りの良い部屋着(浴衣や作務衣)が用意されているかも、心地よさを左右するポイントです。
  • 特別な設備: 滞在をより豊かにするプラスアルファの設備にも注目してみましょう。プライベートサウナやジャグジー、露天風呂付きの客室は、特別な記念日などに最適です。また、読書好きにはライブラリースペース、映画好きにはプロジェクターや高音質のオーディオシステム、料理好きには設備の整ったキッチンなど、自分の趣味に合った設備がある宿を選ぶと、満足度が格段に上がります。

これらの4つの選び方を参考に、自分の理想の旅を具体的にイメージすることで、数ある古民家ホテルの中から「運命の一軒」を見つけ出すことができるでしょう。

【エリア別】全国の古民家ホテルおすすめ20選

ここからは、北は北海道から南は鹿児島まで、全国に点在する魅力あふれる古民家ホテルの中から、特におすすめの20軒を厳選してご紹介します。伝統とモダンが織りなす空間、その土地ならではの食や体験など、各宿が持つ唯一無二の魅力に触れてみてください。
※宿泊料金やプランの詳細は変動するため、各公式サイトで最新の情報をご確認ください。

① 【北海道】NIPPONIA HOTEL 函館 港町

歴史が薫る港町の洋館で、美食と過ごすクラシカルな時間

函館の歴史的景観保存地区に佇む「NIPPONIA HOTEL 函館 港町」。ここは、かつて海産物商や輸入雑貨商が軒を連ね、ハイカラな文化が行き交ったエリアです。その中心にあった明治期築の赤レンガ倉庫などをリノベーションした、わずか9室のブティックホテルです。一歩足を踏み入れると、レンガの壁や太い木の梁が残る重厚な空間が広がり、まるで開港時代の函館にタイムスリップしたかのよう。客室は、メゾネットタイプやテラス付きなど、それぞれ異なる趣向が凝らされており、クラシカルな雰囲気の中にモダンな快適性が備わっています。併設のレストランでは、函館近郊で獲れる新鮮な魚介や野菜をふんだんに使った、目にも美しいフレンチを堪能できます。歴史が息づく空間で、港町の風を感じながら美食に酔いしれる、贅沢な滞在が叶います。

  • 所在地:北海道函館市豊川町
  • 参照:NIPPONIA HOTEL 函館 港町 公式サイト

② 【宮城県】時音の宿 湯主一條

200年の歴史を刻む、国登録有形文化財の湯守りの宿

開湯600年の歴史を持つ鎌先温泉に佇む「時音の宿 湯主一條」。その象徴である木造本館は、大正末期から昭和初期にかけて建てられたもので、国登録有形文化財にも指定されています。宮大工の粋を集めた精緻な建築美は圧巻で、館内を歩くだけで美術館にいるかのような感動を覚えます。一方で、現代的な快適性を追求した別館「一條スイート」も用意されており、伝統とモダンの両方を選択できます。自慢の温泉は、保温効果が高い「あたたまりの湯」と、傷に良いとされる「きずの湯」の2種類を、趣の異なる6つのお風呂で楽しめます。食事は、”おくずかけ”などの郷土料理を取り入れた「森の晩餐」。歴史が紡ぐ重厚な空間で、名湯と美食に癒される、大人のための隠れ家です。

  • 所在地:宮城県白石市福岡蔵本
  • 参照:時音の宿 湯主一條 公式サイト

③ 【栃木県】THE KEY HIGHLAND NASU

那須の自然とアートが共鳴する、五感をひらくリゾート

雄大な那須連山の麓、豊かな自然に抱かれるように佇むのが「THE KEY HIGHLAND NASU」です。昭和の古民家をリノベーションした建物は、木の温もりを活かしつつ、モダンアートが随所に散りばめられた洗練された空間。コンセプトは「感覚を開放する鍵(THE KEY)」。滞在中は、暖炉の火を眺めたり、ライブラリーで本を読んだり、森を散策したりと、思い思いの時間を過ごせます。特筆すべきは、宿泊料金に食事やドリンク、アクティビティなどが含まれるオールインクルーシブスタイルであること。地元食材を使ったイタリアンや、夜のバータイム、季節のアクティビティなどを追加料金なしで心ゆくまで楽しめます。那須の自然、アート、美食が一体となった空間で、心身ともに解き放たれるような休日を過ごせます。

  • 所在地:栃木県那須郡那須町
  • 参照:THE KEY HIGHLAND NASU 公式サイト

④ 【群馬県】白井屋ホテル/SHIROIYA HOTEL

アートの力で再生した、まちのヘリテージ

群馬県前橋市の中心部に、ひときわ異彩を放つ建物があります。それが、300年以上の歴史を誇った老舗旅館「白井屋」を、建築家の藤本壮介氏をはじめとする国内外のクリエイターたちが再生させた「白井屋ホテル/SHIROIYA HOTEL」です。かつての構造を大胆に活かした「ヘリテージタワー」は、4層吹き抜けの空間にレアンドロ・エルリッヒ氏の作品が浮かぶ圧巻の空間。客室も、ミケーレ・デ・ルッキ氏やジャスパー・モリソン氏など、世界的なデザイナーが手がけたスペシャルルームが用意され、泊まること自体がアート体験となります。敷地内には、ミシュラン二つ星を獲得した東京・青山のレストラン「フロリレージュ」監修のメインダイニングもあり、食のレベルも随一。アートと建築、食が融合した、唯一無二のデスティネーションホテルです。

  • 所在地:群馬県前橋市本町
  • 参照:白井屋ホテル/SHIROIYA HOTEL 公式サイト

⑤ 【千葉県】古民家宿 楽古

里山の原風景の中で、「何もしない贅沢」を識る一棟貸し

都心から車で約90分。千葉ののどかな里山に、築140年の古民家をリノベーションした一日一組限定の一棟貸しの宿「楽古(らっこ)」があります。約600坪の広大な敷地には母屋と離れがあり、最大10名まで宿泊可能。高い天井に渡された立派な梁、囲炉裏、縁側、五右衛門風呂など、日本の原風景ともいえる空間が広がります。ここでは、時間に追われることなく、ただのんびりと過ごすことが最高の贅沢。縁側で読書をしたり、囲炉裏を囲んで語らったり、キッチンで地元の食材を使って料理を楽しんだり。夜には満点の星空の下で焚き火をすることも。都会の喧騒を忘れ、家族や仲間と心ゆくまで語り合う。そんなシンプルで豊かな時間を過ごしたい人にぴったりの宿です。

  • 所在地:千葉県夷隅郡大多喜町
  • 参照:古民家宿 楽古 公式サイト

⑥ 【新潟県】里山十帖

絶景と食と温泉。「リアルジャパン」を体感する場所

日本有数の豪雪地帯、新潟県南魚沼市に位置する「里山十帖」。ここは、ライフスタイルマガジン「自遊人」が手がけた、体験型複合施設です。築150年の古民家を再生したレセプション棟・客室棟は、古い梁や柱の力強さと、モダンなデザイン家具が見事に調和。特に、すべての客室に設けられた露天風呂からは、日本百名山の巻機山(まきはたやま)を望む圧巻のパノラマビューが広がります。食事は、「ミシュランガイド新潟2020」で一つ星として掲載された「早苗饗(さなぶり)」で。地元の伝統野菜や山菜をふんだんに使った、身体が喜ぶ滋味深い料理を堪能できます。「食」「農」「温泉」「建築」「環境」など、様々な角度から日本の本質的な豊かさを再発見させてくれる、日本を代表する古民家宿の一つです。

  • 所在地:新潟県南魚沼市
  • 参照:里山十帖 公式サイト

⑦ 【長野県】松本十帖

本と温泉と出会う、新しい文化の拠点

長野県松本市の奥座敷、浅間温泉。その歴史ある温泉街で、かつての老舗旅館「小柳」を再生したブックホテルが「松本十帖」です。敷地内には、書店の「松本本箱」と、2つのホテル「松本本箱」「小柳」が共存しています。圧巻なのは、「松本本箱」のブックストアエリア。古い建物の構造を活かした空間に、約1万2千冊もの本が壁一面に並びます。宿泊者は、気に入った本を部屋に持ち込んでゆっくり読むことができます。客室は全室露天風呂付きで、源泉かけ流しの温泉を心ゆくまで楽しめます。食事は、信州の発酵食文化を取り入れたローカル・ガストロノミー。本の世界に没頭し、温泉で癒され、信州の食文化に触れる。知的好奇心と癒やしを同時に満たしてくれる、新しいスタイルのデスティネーションです。

  • 所在地:長野県松本市浅間温泉
  • 参照:松本十帖 公式サイト

⑧ 【山梨県】NIPPONIA 小菅 源流の村

村全体がホテルになる。700人の村で紡ぐ、暮らしの物語

東京都を潤す多摩川の源流に位置する、人口約700人の小さな村、山梨県小菅村。この村では、「700人の村がひとつのホテルに。」をコンセプトに、村内に点在する古民家を改修した分散型ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」が運営されています。宿泊棟となるのは、かつて村の有力者であった「大家」の屋敷をリノベーションした4室の客室。重厚な蔵や美しい庭園が、往時の暮らしを偲ばせます。フロント機能は村の施設が担い、食事は村のレストランで提供されます。滞在中は、村人との交流や、ヤマメ釣り、わさび田の見学など、村の日常に溶け込むような体験ができます。宿泊することが、村の文化や営みを未来に繋ぐ力になる。そんなサステナブルな旅を体現できるユニークな宿です。

  • 所在地:山梨県北都留郡小菅村
  • 参照:NIPPONIA 小菅 源流の村 公式サイト

⑨ 【静岡県】AWA西伊豆

1日2組限定。古民家と蔵で過ごす、何もない贅沢

西伊豆の静かな入江に佇む「AWA西伊豆」。ここは、築150年の母屋と、海を望む高台に建つ築100年の蜜柑蔵をそれぞれリノベーションした、一日二組限定のオーベルジュです。母屋の「Tachibana」は平屋の広々とした空間、蔵の「Keyaki」は海を見下ろすメゾネットタイプ。どちらもプライベートな時間を心ゆくまで満喫できます。夕食は、駿河湾で揚がった新鮮な魚介や、地元農家の有機野菜など、西伊豆の恵みをふんだんに使った創作イタリアン。その日に仕入れた最高の食材でメニューが組まれるため、訪れるたびに新しい味覚との出会いがあります。目の前に広がる穏やかな海と、歴史を刻んだ空間、そして絶品の料理。すべてを独り占めするような、究極の贅沢がここにあります。

  • 所在地:静岡県伊豆市土肥
  • 参照:AWA西伊豆 公式サイト

⑩ 【岐阜県】飛騨古川の古民家宿 Iori Stay

城下町の町家で、「暮らすように旅する」体験を

情緒あふれる白壁土蔵の街並みが美しい、飛騨古川。この町に溶け込むように佇むのが、一棟貸しの町家宿「Iori Stay」です。築100年を超える町家などをリノベーションした宿が町に点在しており、宿泊者はまるでその町の一員になったかのような気分で滞在できます。室内は、飛騨の匠の技が光る伝統的な建築美と、現代的な快適性が融合した上質な空間。キッチンも完備されており、地元の市場で食材を買い、自分たちで料理を楽しむことも可能です。オプションで、地元の料亭からの仕出し料理や、プライベートシェフを呼ぶこともできます。歴史ある町を散策し、人々と触れ合い、町家でくつろぐ。「観光」では味わえない、その土地の日常に深く入り込む旅を求める人におすすめです。

  • 所在地:岐阜県飛騨市古川町
  • 参照:Iori Stay 公式サイト

⑪ 【三重県】NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町

忍びの里で歴史に泊まる、分散型ホテル

伊賀流忍者の里として知られる伊賀上野。その歴史的な城下町に点在する建造物を客室として再生したのが「NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町」です。宿泊棟は、江戸時代の武家屋敷や、明治時代の商家など、それぞれ異なる歴史を持つ3棟10室。宿泊者は、城下町を回遊しながら、まるで町全体をひとつの大きな旅館のように楽しみます。レセプションでチェックインを済ませたら、自分の「客室」である歴史的建造物へ。夕食は、伊賀牛や伊賀米、地野菜など、地元の食材を活かしたフレンチを、これまた歴史ある元料亭を改修したレストランで堪能します。忍者の歴史が息づく町で、その物語の一部になるような、ユニークな滞在が待っています。

  • 所在地:三重県伊賀市上野
  • 参照:NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町 公式サイト

⑫ 【京都府】nazuna 京都 椿通

路地全体がひとつの宿。京都の美意識が詰まったラグジュアリー旅館

世界的な観光都市・京都には数多くの宿がありますが、中でもユニークな存在感を放つのが「nazuna 京都 椿通」です。ここは、築110年以上の町家が立ち並ぶ路地(ろーじ)を丸ごとリノベーションし、一つの宿として再生したラグジュアリー旅館。灯籠の灯る石畳の路地を進むと、全23室の客室が連なります。各客室は、日本の自然美をテーマにした「TAKE(竹)」や「MIZU(水)」など、異なるデザインコンセプトで設えられ、全室に半露天風呂または露天風呂が備わっています。夕食は、京都の旬の食材を使った創作和食。レトロな雰囲気と現代的なラグジュアリーが融合した空間で、京都ならではの美意識とおもてなしを心ゆくまで満喫できます。

  • 所在地:京都府京都市下京区
  • 参照:nazuna 京都 椿通 公式サイト

⑬ 【奈良県】NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち

造り酒屋の記憶を継ぐ、日本酒と楽しむ奈良の宿

世界遺産に囲まれた古都・奈良。その風情ある旧市街「ならまち」に、ひときわ大きな存在感を放つ宿があります。それが、創業150年の歴史を持つ「豊澤酒造」の元酒蔵を改修した「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」です。高い天井、太い梁、土間など、酒蔵ならではのダイナミックな空間を活かしつつ、モダンで快適な客室へと生まれ変わりました。この宿のテーマはもちろん「日本酒」。かつての酒母室を改装したレストランでは、奈良の食材を使ったフランス料理と、豊澤酒造の銘酒をはじめとする奈良の地酒とのペアリングを楽しめます。また、利き酒体験や酒蔵見学(要予約)など、日本酒の魅力を深く知るためのプログラムも。奈良の歴史と日本酒文化に浸る、大人な滞在が叶います。

  • 所在地:奈良県奈良市西城戸町
  • 参照:NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち 公式サイト

⑭ 【兵庫県】竹田城 城下町 ホテルEN

天空の城の麓で、歴史と食を味わう

「天空の城」として名高い竹田城跡。その城下町に、400年の歴史を持つ元酒造場などをリノベーションした分散型ホテル「竹田城 城下町 ホテルEN(えん)」があります。明治時代に建てられた1,000坪の敷地を持つ本館「旧木村酒造場EN」を中心に、町に点在する6棟の古民家が客室となっています。宿泊者は、歴史的な街並みを散策しながら、自分たちの客室へと向かいます。夕食は、但馬の豊かな食文化を体現する場所。但馬牛や、日本海で獲れる海の幸、地元の新鮮な野菜など、地域の恵みをふんだんに使ったフランス料理を、発酵をテーマにしたレストランで堪能できます。歴史と自然、そして美食が織りなす、ここでしか味わえない滞在を提供しています。

  • 所在地:兵庫県朝来市和田山町竹田
  • 参照:竹田城 城下町 ホテルEN 公式サイト

⑮ 【岡山県】滔々 toutou 倉敷川沿いの町家宿

美観地区の日常に溶け込む、アートな町家ステイ

白壁の蔵屋敷が並ぶ美しい倉敷美観地区。その中心部に、築100年を超える古民家をリノベーションした、一日一組限定の一棟貸し宿「滔々(とうとう)」はあります。宿の名前は、倉敷川のゆったりとした流れに由来します。室内は、土間や格子窓といった町家の趣を残しつつ、現代アートや作家ものの家具が配された、洗練された空間。まるで小さなギャラリーのようです。キッチンには調理器具や食器が一通り揃っており、近くの市場で食材を調達して料理を楽しむことも。夜、観光客が去った静かな美観地区を散策するのは、宿泊者だけの特権です。倉敷の歴史とアート、そして人々の暮らしの息遣いを肌で感じる、上質でプライベートな滞在が約束されます。

  • 所在地:岡山県倉敷市中央
  • 参照:滔々 toutou 公式サイト

⑯ 【広島県】せとうち 湊のやど

尾道と鞆の浦。二つの港町の物語に泊まる

坂の町・尾道と、江戸時代の港町の風情が残る鞆の浦。瀬戸内の二つの魅力的な町を舞台に、歴史的建造物を再生した宿が「せとうち 湊のやど」です。尾道ではかつての海運業で栄えた豪商の別邸「出番さん」を、鞆の浦では築約200年の町家をリノベーションし、それぞれ一棟貸しの宿として運営しています。どちらの宿も、当時の建築美を大切に残しながら、現代の暮らしに合わせた快適な空間へと生まれ変わっています。宿泊者は、チェックイン後、鍵を受け取って自分たちの「家」へ。食事は付いていませんが、それがかえって自由な滞在を可能にします。地元の人に愛される食堂を訪ねたり、市場で買った魚を調理したり。瀬戸内の港町の日常に深く溶け込む、本物の旅がここにあります。

  • 所在地:広島県尾道市、広島県福山市鞆町
  • 参照:せとうち 湊のやど 公式サイト

⑰ 【徳島県】篪庵(ちいおり)

桃源郷・祖谷に佇む、アレックス・カーが再生した茅葺き民家

日本三大秘境の一つ、徳島県三好市の祖谷(いや)渓谷。急峻な斜面に集落が点在するこの地に、約300年の歴史を持つ茅葺き屋根の古民家を再生した宿「篪庵(ちいおり)」はあります。この宿を再生したのは、日本の原風景の美しさを世界に伝えた東洋文化研究者のアレックス・カー氏。囲炉裏のある広間、煙で燻された黒光りする梁や柱はそのままに、床暖房や快適なバスルームを設置し、伝統と快適性を見事に両立させています。窓の外に広がるのは、雲海が広がる幻想的な渓谷の風景。ここでは、都会の時計を外し、火を熾し、食事を作り、ただ静かに自然と対話する時間が流れます。日本の失われつつある原風景の中で、魂が浄化されるような滞在を体験できる、世界的に見ても貴重な宿です。

  • 所在地:徳島県三好市東祖谷
  • 参照:篪庵(ちいおり) 公式サイト

⑱ 【愛媛県】NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町

本物のお城に泊まる。城下町全体がホテルの舞台

「伊予の小京都」と称される愛媛県大洲市。この町では、大洲城と城下町全体を一つのホテルと見立てる、壮大なプロジェクトが進行しています。それが「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」です。このプロジェクトのハイライトは、何と言っても日本で初めて実現した「大洲城キャッスルステイ」。復元された天守閣に、一日一組限定で宿泊することができます。入城時には、かつての城主のように、家臣団の出迎えや法螺貝の合図など、特別な演出も。城下町に点在する商家や邸宅をリノベーションした客室も用意されており、宿泊者は町を巡りながら、その歴史と文化を体感します。町全体でゲストをもてなす、まさに唯一無二の体験ができる、究極の古民家(城)ホテルです。

  • 所在地:愛媛県大洲市
  • 参照:NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 公式サイト

⑲ 【福岡県】NIPPONIA HOTEL 八女福島 商家町

茶の香りと職人技。八女の文化を体感する宿

福岡県八女市は、全国有数の高級茶「八女茶」の産地として、また仏壇や提灯などの伝統工芸が息づく職人の町として知られています。その中心地である白壁の商家町に、複数の歴史的建造物を活用した分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 八女福島 商家町」があります。中心となるのは、かつて酒蔵として栄えた「旧大坪邸」。これをレセプションとレストランに改修し、周辺の町家を客室としています。滞在のテーマは、もちろん「八女茶」。ウェルカムドリンクから食事、客室での呈茶体験まで、さまざまな形で八女茶の奥深い魅力に触れることができます。職人の町ならではの、手仕事の温もりが感じられる空間で、八女の豊かな文化に浸る滞在を楽しめます。

  • 所在地:福岡県八女市福島
  • 参照:NIPPONIA HOTEL 八女福島 商家町 公式サイト

⑳ 【鹿児島県】伝泊 奄美 古民家

奄美の集落に泊まり、島の暮らしと文化を継承する旅

世界自然遺産に登録された奄美大島。この島では、「集落文化の保存と再生」をテーマに、島の伝統的な建築様式の古民家を再生した宿泊施設群「伝泊 奄美 古民家」が展開されています。宿泊施設は、島内の複数の集落に点在。かつての米蔵であった「高倉」や、伝統的な平屋の家屋などが、一棟貸しの宿として生まれ変わっています。室内は、島の職人の手による伝統的な意匠と、モダンで快適な設備が調和。宿泊者は、まるで島民の一員になったかのように、集落の日常に溶け込みます。目の前の海で泳いだり、集落を散策して島の人と交流したり。宿泊することが、島の貴重な文化を未来へ「伝承」していく一助となる。そんな意義深い旅を体験できるのが、「伝泊」の最大の魅力です。

  • 所在地:鹿児島県奄美市、大島郡龍郷町・大和村
  • 参照:伝泊 公式サイト

古民家ホテルで心に残る特別なひとときを

この記事では、古民家ホテルの定義や魅力、そして自分にぴったりの一軒を見つけるための選び方、さらには全国から厳選したおすすめの宿20選をご紹介してきました。

北は北海道の港町から、南は奄美の集落まで。日本各地には、その土地の歴史や文化を静かに物語る、数多くの美しい古民家ホテルが存在します。それらは単なる宿泊施設ではなく、過去と現在、そして未来を繋ぐ、生きた文化遺産とも言えるでしょう。

太い梁や柱が醸し出す重厚な空気感、職人の手仕事が光る繊細な意匠、そして現代のデザイナーによって吹き込まれた新しい息吹。伝統とモダンが見事に融合した空間は、私たちを日常から解き放ち、心からの安らぎを与えてくれます。

また、古民家ホテルでの滞在は、その土地の風土を五感で味わう体験でもあります。地元の旬の食材をふんだんに使った料理に舌鼓を打ち、その土地ならではの文化体験に参加し、地域の人々と交流する。こうした経験を通じて、旅はより深く、忘れがたい思い出として心に刻まれていきます。

そして何より、私たちが古民家ホテルを選んで宿泊するという行為そのものが、日本の貴重な建築文化を保存し、地域経済を活性化させ、未来へと継承していくための小さな一歩となるのです。自分の旅が、社会にとって意義のあるものになる。これもまた、古民家ホテルがもたらしてくれる大きな喜びの一つではないでしょうか。

今回ご紹介した20軒の宿は、数ある魅力的な古民家ホテルのほんの一部にすぎません。この記事をきっかけに、ぜひあなたの「泊まってみたい」一軒を見つけてみてください。

次の休日は、都会の喧騒を離れ、古民家ホテルへ。そこにはきっと、懐かしくも新しい、心に残る特別な時間が流れているはずです。日本の古き良きものに触れる豊かな旅が、あなたを待っています。