アドレスホッパーとは?メリット・デメリットや始め方をわかりやすく解説

アドレスホッパーとは?、メリット・デメリットや始め方をわかりやすく解説

リモートワークの普及や働き方の多様化に伴い、私たちの「暮らし方」も大きな変革期を迎えています。その中で、特定の住居に縛られず、日本全国、あるいは世界中を旅するように暮らす「アドレスホッパー」というライフスタイルが注目を集めています。

場所に捉われない自由な生活は魅力的に映る一方で、「具体的にどんな生活なの?」「家がないと不便じゃない?」「費用はどれくらいかかるの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、アドレスホッパーの基本的な定義から、そのメリット・デメリット、向いている人の特徴、そして実際に始めるための具体的なステップまで、網羅的に詳しく解説します。この記事を読めば、アドレスホッパーという新しい暮らし方の全体像を理解し、自身にとって最適な選択肢であるかを判断できるようになるでしょう。


アドレスホッパーとは

アドレスホッパーとは

近年、メディアやSNSで耳にする機会が増えた「アドレスホッパー」。この言葉が示すのは、単なる旅行好きや引っ越し好きとは一線を画す、新しい時代のライフスタイルです。ここでは、アドレスホッパーの正確な定義と、混同されがちな関連用語との違いを明確に解説します。

定住する家を持たずに移動しながら暮らすライフスタイル

アドレスホッパーとは、その名の通り「Address(住所)」と「Hopper(転々と移動する人)」を組み合わせた造語です。具体的には、特定の賃貸物件や持ち家を所有せず、ホテル、ゲストハウス、ウィークリーマンション、そして近年増加している「住まいのサブスクリプションサービス」などを活用しながら、生活の拠点を次々と変えていく暮らし方を指します。

このライフスタイルが生まれた背景には、いくつかの社会的な変化が深く関わっています。

第一に、テクノロジーの進化とリモートワークの浸透です。高速インターネット網が全国に整備され、ノートパソコンやスマートフォンが高性能化したことで、場所に依存しない働き方が可能になりました。特に、新型コロナウイルス感染症の拡大を機にリモートワークが一気に普及したことは、アドレスホッパーという選択肢を現実的なものにした最大の要因と言えるでしょう。かつては一部のIT技術者やクリエイターに限られていた働き方が、今や多くの職種で可能になっています。

第二に、「所有」から「利用(シェア)」への価値観の変化が挙げられます。定額で音楽が聴き放題の音楽ストリーミングサービスや、映画・ドラマが見放題の動画配信サービスが当たり前になったように、「モノを所有すること」へのこだわりが薄れ、「必要な時に必要なだけサービスを利用する」というシェアリングエコノミーの考え方が住まいの領域にも広がってきました。家や家具・家電を所有するのではなく、サービスとして利用するという考え方は、アドレスホッパーの根幹をなす価値観です。

第三に、ライフスタイルの多様化と個人の幸福追求の流れがあります。終身雇用や年功序列といった従来の日本的な働き方が変化し、個人のキャリアパスや生き方が多様化しています。「一つの会社に勤め上げ、一つの土地に家を買い、定年まで過ごす」という画一的な幸福像だけでなく、自分らしい生き方や幸福を模索する人々が増えました。アドレスホッパーは、そのような人々にとって、経験価値を最大化し、自分だけの人生をデザインするための一つの有力な選択肢として受け入れられているのです。

彼らは、仕事のプロジェクトに合わせて都市部を移動したり、趣味のアウトドア活動のために自然豊かな地域に滞在したり、あるいは「夏は涼しい北海道、冬は暖かい沖縄」というように、季節に応じて最も快適な場所で生活します。このように、自分のライフステージや興味関心、価値観の変化に柔軟に合わせて住環境を最適化できる点が、アドレスホッパーの最大の特徴と言えます。

アドレスホッパーと混同されがちな言葉

アドレスホッパーという概念をより深く理解するために、しばしば混同される他のライフスタイルや働き方との違いを明確にしておきましょう。

用語 焦点 意味 アドレスホッパーとの関係
アドレスホッパー ライフスタイル 定住せず移動しながら生活する「暮らし方」そのもの。 働き方や所有物の量に関わらず、移動生活をしていればアドレスホッパー。
ノマドワーカー 働き方 特定のオフィスに属さず、カフェやコワーキングスペースなどで働く人。 アドレスホッパーはノマドワーカーであることが多いが、必須ではない。
ミニマリスト 所有物の思想 必要最小限の物だけで暮らす人、またはその考え方。 アドレスホッパーは持ち物が少ない傾向にあるため、結果的にミニマリストになることが多い。
ワーケーション 滞在の目的 休暇先(Vacation)で仕事(Work)も行う一時的な滞在スタイル。 アドレスホッパーの生活は継続的であり、ワーケーションはその一部と捉えられる。
住所不定 法的な状態 住民票の手続きを怠り、公的な居住地が登録されていない状態。 アドレスホッパーは適法に住民票を置くことが前提であり、住所不定とは明確に異なる。

ノマドワーカー

ノマドワーカーは、英語の「nomad(遊牧民)」に由来する言葉で、特定のオフィスに出社せず、ノートパソコンなどを駆使してカフェ、コワーキングスペース、自宅など、好きな場所で仕事をする人を指します。これはあくまで「働き方」に焦点を当てた言葉です。

アドレスホッパーの多くは、場所を選ばずに仕事ができるノマドワーカーです。しかし、全てのノマドワーカーがアドレスホッパーであるわけではありません。例えば、自宅を拠点にしながら、日によって働くカフェを変える人もノマドワーカーに含まれます。逆に、アドレスホッパーであっても、特定の期間は一つの場所に滞在し、そこを拠点にリモートワークをする場合、遊牧民的な「ノマド」のイメージとは少し異なります。アドレスホッパーは「暮らし方」、ノマドワーカーは「働き方」を指す言葉であり、両者は重なる部分が大きいものの、定義の軸が異なります。

ミニマリスト

ミニマリストは、自分にとって本当に必要なものだけを所有し、持たない暮らしを実践する人のことです。これは「所有物」に対する哲学や思想に基づいています。

アドレスホッパーは、物理的に移動を繰り返すため、必然的に多くの荷物を持つことができません。スーツケース一つで生活する人も珍しくなく、結果としてミニマリスト的な生活を送ることになります。しかし、これも必須条件ではありません。例えば、実家に荷物の大半を置いたり、トランクルームサービスを利用したりして、多くの私物を所有しながらアドレスホッパーとして生活することも可能です。アドレスホッパーがミニマリストになる傾向は強いですが、アドレスホッパー=ミニマリストではないのです。

ワーケーション

ワーケーションは、「仕事(Work)」と「休暇(Vacation)」を組み合わせた造語です。普段はオフィスや自宅で働いている人が、旅行先やリゾート地で休暇を楽しみながら、数日間から数週間程度、リモートで仕事も行うという一時的な滞在スタイルを指します。

これは、あくまで定住する拠点があることを前提とした、短期的な活動です。一方、アドレスホッパーは定住する家を持たず、移動生活そのものが日常であるという点で根本的に異なります。ワーケーションは、アドレスホッパーの日常の一コマと見ることもできますが、ワーケーションが「非日常」のイベントであるのに対し、アドレスホッパーの移動生活は「日常」であるという違いがあります。

住所不定との違い

これは最も重要で、明確に区別すべき概念です。「住所不定」とは、住民基本台帳法に基づく住民票の届け出を正しく行っておらず、公的に居住地が登録されていない状態を指します。これは法律上の義務を怠っている状態であり、各種行政サービス(健康保険、年金、選挙権など)が受けられなくなったり、銀行口座の開設や携帯電話の契約が困難になったりと、社会生活において深刻な不利益を被る可能性があります。

一方で、アドレスホッパーは、法的な手続きを適切に行うことが大前提のライフスタイルです。多くの人は、実家や親族の家、あるいは長期契約したシェアハウスの一室などに住民票を置き、そこを法的な「生活の本拠」として定めています。これにより、行政サービスを問題なく受けられ、社会的な信用を維持しながら移動生活を送ることが可能になります。アドレスホッパーと住所不定は、法的な正当性において全く異なるものであり、この違いを理解することが、アドレスホッパーというライフスタイルを実践する上で不可欠です。


アドレスホッパーのメリット

家賃や光熱費などの固定費を削減できる、家具や家電を所有する必要がない、ライフスタイルに合わせて住む場所を自由に変えられる、新しい出会いや発見がある、人間関係のしがらみから解放される、持ち物が減りミニマリストになれる

特定の住処を持たず、自由に拠点を変えながら生活するアドレスホッパー。その魅力は多岐にわたりますが、ここでは代表的な6つのメリットを、具体的な側面から深掘りしていきます。これらのメリットは、従来の定住生活では得られなかった新しい価値や豊かさをもたらしてくれます。

家賃や光熱費などの固定費を削減できる

アドレスホッパーの最も大きな経済的メリットは、生活費の中で最も大きな割合を占める住居関連の固定費を劇的に削減できる可能性にあります。

一般的な賃貸暮らしでは、毎月決まって以下の費用が発生します。

  • 家賃・管理費(共益費)
  • 水道光熱費(電気・ガス・水道)
  • インターネット回線費・プロバイダー料金
  • 火災保険料
  • 2年ごとの更新料

特に都市部では、これらの合計額は月々10万円を超えることも珍しくありません。アドレスホッパーは、これらの固定費が原則として不要になります。代わりに、ホテルや住まいのサブスクリプションサービスの利用料がかかりますが、トータルコストで見ると安くなるケースが多くあります。

例えば、住まいのサブスクリプションサービスは、月額数万円から利用できるものが多く、これらの料金には水道光熱費やWi-Fi利用料が全て含まれているのが一般的です。家具・家電も備え付けのため、自分で購入・維持する必要もありません。

具体的なシナリオを考えてみましょう。東京のワンルームに住み、家賃・光熱費・通信費で月13万円を支払っている人がいるとします。この人がアドレスホッパーになり、月額5万円の住まいのサブスクを利用し、移動費やその他経費が月3万円かかったとしても、合計は8万円です。単純計算で月に5万円、年間で60万円もの費用を削減できる可能性があります。この浮いた資金を、自己投資や新たな体験、将来のための貯蓄に回すことができるのは、非常に大きなアドバンテージです。敷金・礼金・仲介手数料といった、引っ越しのたびにかかる高額な初期費用も不要になるため、身軽に次のステップへ進めます。

家具や家電を所有する必要がない

固定費の削減と並ぶ大きなメリットが、大型の家具や生活家電を所有しなくて済むことです。アドレスホッパーが利用する滞在先の多くは、生活に必要な設備があらかじめ備え付けられています。

  • 住まいのサブスクリプションサービス: ベッド、机、椅子、収納はもちろん、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、Wi-Fiなどが完備されています。
  • ウィークリー・マンスリーマンション: 一般的な賃貸物件と同様の生活環境が家具・家電付きで提供されます。
  • ホテル・ゲストハウス: ベッドやデスクは基本設備であり、共有スペースにキッチンやランドリーが設置されている施設も多いです。

これにより、以下のような多くのメリットが生まれます。

  1. 初期費用の大幅な削減: 新生活を始める際に、家具・家電一式を揃えるには数十万円の費用がかかります。この出費が一切不要になります。
  2. 維持・管理の手間からの解放: 家電が故障した際の修理や買い替えの心配、費用負担がありません。
  3. 処分の手間とコストがゼロ: 引っ越しの際に最も頭を悩ませるのが、大型家具・家電の処分です。粗大ゴミの申し込みやリサイクル料金の支払い、運び出しの手間といった面倒から解放されます。
  4. 常に新しい設備を利用できる: 自分で所有すると長年同じものを使い続けることになりますが、移動するたびに比較的新しい、あるいはメンテナンスされた設備を利用できます。

「所有」することの責任やコストから解放され、必要な時に必要な機能を「利用」するという身軽さは、物理的にも精神的にも大きな自由をもたらします。移動の際の荷物は衣類や仕事道具など最小限で済むため、フットワークの軽さも格段に向上します。

ライフスタイルに合わせて住む場所を自由に変えられる

「仕事や季節、気分に合わせて住む場所を自由に選べる」というのは、アドレスホッパーの最大の魅力と言っても過言ではありません。従来の定住生活では、一度住む場所を決めると、契約期間や通勤・通学の都合上、簡単に引っ越すことはできませんでした。しかし、アドレスホッパーにはその制約がありません。

例えば、以下のような自由な暮らし方が可能になります。

  • 季節に合わせた移動: 「夏は避暑地である北海道や長野で涼しく過ごし、冬は温暖な沖縄や九州でアクティブに過ごす」といった、気候に応じた理想的な生活が実現できます。
  • 趣味や関心事を追求する: サーフィンが好きなら海の近く、登山が趣味なら山の麓、特定の文化やアートに興味があればその土地に、といったように、自分の「好き」を軸に生活拠点を決めることができます。数ヶ月単位での「お試し移住」も気軽にできるため、将来的な移住先を探す手段としても有効です。
  • 仕事の都合に合わせる: 特定のプロジェクトで一定期間ある都市に滞在する必要が出た場合でも、その期間だけマンスリーマンションを借りるなど柔軟に対応できます。複数のクライアントが異なる地域にいる場合、それぞれの場所を巡って仕事を進めることも可能です。
  • 気分転換: 「都会の刺激が欲しくなったら東京へ」「少し疲れたから静かな田舎でリフレッシュしたい」といった、その時々の気分に応じて環境を変えることで、常に新鮮な気持ちで生活でき、メンタルヘルスの維持にも繋がります。

このように、人生のフェーズや価値観の変化に応じて、住環境を柔軟にカスタマイズできることは、自己実現や幸福度の向上に直結する重要なメリットです。

新しい出会いや発見がある

同じ場所に住み続けると、日々の行動範囲や人間関係は固定化されがちです。しかし、アドレスホッパーは移動を繰り返すことで、常に新しい人、文化、価値観に触れる機会に恵まれます。

特に、ゲストハウスやシェアハウス、住まいのサブスクリプションサービスが提供するコミュニティスペースは、出会いの宝庫です。そこには、自分と同じように自由なライフスタイルを実践する人、地元で生まれ育った人、海外からの旅行者など、実に多様なバックグラウンドを持つ人々が集まります。

こうした人々との何気ない会話から、自分の知らなかった世界を知ったり、新しいビジネスのヒントを得たり、これまでの固定観念が覆されるような刺激を受けたりすることがあります。自分とは全く異なる人生を歩んできた人との出会いは、視野を大きく広げ、人生を豊かにする貴重な財産となるでしょう。

また、人との出会いだけでなく、その土地ならではの発見も数多くあります。ガイドブックには載っていない地元の美味しい食堂、美しい景色が見える隠れた散歩道、地域に根付いたお祭りやイベントなど、「暮らすように旅する」ことで見えてくるその土地の本当の魅力に触れることができます。こうした一つひとつの発見が、日常に彩りと深みを与えてくれます。

人間関係のしがらみから解放される

地域社会に根差して生活していると、良くも悪くも濃密な人間関係が生まれます。ご近所付き合いや町内会の役員、地域のイベントへの参加など、時にはそれが負担やストレスの原因になることもあります。

アドレスホッパーは、一つの場所に長期間留まらないため、こうした固定的な人間関係のしがらみから距離を置くことができます。人付き合いが苦手な人や、プライベートな時間を大切にしたい人にとっては、大きな精神的メリットと言えるでしょう。

もちろん、これは人との関わりを完全に断つという意味ではありません。むしろ、前述の通り新しい出会いは増えます。重要なのは、人間関係を自分で選択・コントロールしやすくなるという点です。滞在先で気の合う人がいれば深く交流することもできますし、一人の時間を過ごしたければそれも自由です。合わないと感じるコミュニティからは、物理的に離れるという選択肢も容易に取れます。このように、人間関係のストレスをリセットしやすい環境は、精神的な健康を保つ上で非常に有効です。

持ち物が減りミニマリストになれる

移動を前提とするアドレスホッパーの生活は、必然的に持ち物を厳選するプロセスを伴います。大きな家具や家電を持てないだけでなく、衣類や書籍、趣味の道具なども、スーツケースやバックパックに収まる範囲まで絞り込む必要があります。

このプロセスを通じて、「自分にとって本当に必要なものは何か」を真剣に考えることになります。最初は「あれもこれも必要だ」と思っていたものが、実際に手放してみると意外となくても困らないことに気づくでしょう。

このようにして持ち物が少なくなると、以下のような効果が生まれます。

  • 意思決定の負担が減る: 「今日はどの服を着ようか」「どの皿を使おうか」といった日常の些細な選択が減り、思考がシンプルになります。
  • 掃除や整理整頓が楽になる: モノが少ないため、部屋は散らかりにくく、掃除も短時間で終わります。
  • モノへの執着から解放される: 物質的な豊かさよりも、経験や体験から得られる豊かさを重視する価値観が育まれます。

結果として、多くのアドレスホッパーは、意識せずとも「ミニマリスト」としての思考や生活習慣を身につけていきます。モノに縛られない身軽な暮らしは、心にも余裕と自由をもたらしてくれるでしょう。


アドレスホッパーのデメリット

定期的に滞在先を探す手間がかかる、社会的な信用を得にくい場合がある、住民票の扱いに工夫が必要、郵便物の受け取りが不便になる、移動費や初期費用がかさむことがある、環境の変化で精神的に落ち着かないと感じることがある

自由で魅力的に見えるアドレスホッパーの生活ですが、その裏には現実的な課題や注意点も存在します。メリットだけに目を向けるのではなく、デメリットを正確に理解し、自分にとって許容できるものか、あるいは対策が可能かを事前に検討することが、後悔のない選択をするために不可欠です。

定期的に滞在先を探す手間がかかる

定住生活であれば、一度住まいを決めれば数年間は安泰です。しかし、アドレスホッパーは常に次の滞在先を探し、予約するというタスクが付きまといます。これが人によっては大きな負担となる可能性があります。

特に、観光シーズンの人気エリアや、イベントが開催される時期の都市部では、手頃な価格の宿泊施設はすぐに埋まってしまいます。数週間、あるいは数ヶ月前から計画的に予約をしなければ、希望の場所に滞在できない、あるいは高額な宿泊費を支払わざるを得ない状況に陥ることもあります。

住まいのサブスクリプションサービスを利用している場合でも、人気の物件は予約が集中し、希望の日に利用できないケースは少なくありません。そのため、常に先のスケジュールを考え、複数の候補をリストアップし、予約状況をチェックし続ける必要があります。

この「探し続ける」「計画し続ける」という行為は、旅のプランニングが好きな人にとっては楽しみの一つかもしれませんが、面倒に感じる人にとっては、次第に精神的な疲労となって蓄積していく可能性があります。行き当たりばったりの自由な移動をイメージしていると、現実とのギャップに戸惑うかもしれません。アドレスホッパーの自由は、ある程度の計画性と管理能力の上に成り立っていることを理解しておく必要があります。

社会的な信用を得にくい場合がある

現代社会の多くのシステムは、「定まった住所」があることを前提に構築されています。そのため、アドレスホッパーのように特定の住所を持たない(ように見える)ライフスタイルは、社会的な信用証明が求められる場面で不利に働くことがあります。

具体的には、以下のようなケースが考えられます。

  • 金融機関のローン契約: 住宅ローンや自動車ローンなど、高額なローンの審査では、安定した居住実態が重要な審査項目の一つとなります。住民票上の住所と実際の生活拠点が頻繁に変わることは、マイナス評価に繋がる可能性があります。
  • クレジットカードの新規発行・更新: 申込時に記載する現住所が短期間で変わることは、審査において懸念材料と見なされることがあります。また、更新カードが確実に受け取れないリスクも考えられます。
  • 新規の賃貸契約: 将来的に定住生活に戻ろうとした際、過去の居住遍歴が複雑であることから、入居審査で不利になる可能性が指摘されています。
  • 一部の就職・転職活動: 企業によっては、身元保証や連絡の確実性を重視し、定まった住所がないことを理由に採用を見送るケースもゼロではありません。

もちろん、実家に住民票を置き、そこを恒久的な連絡先として明確に説明できたり、安定した収入や十分な預貯金があることを証明できたりすれば、これらの問題をクリアできる場合も多いです。しかし、「定住所がない」というだけで、説明の手間が増えたり、選択肢が狭まったりする可能性があることは、覚悟しておくべきデメリットです。

住民票の扱いに工夫が必要

前述の「住所不定との違い」でも触れましたが、日本に住む以上、住民基本台帳法により「生活の本拠」となる場所に住民票を置くことが義務付けられています。アドレスホッパーにとって、この「生活の本拠」をどこに設定するかは、非常に重要な問題です。

選択肢としては、「実家や親族の家」「長期契約したシェアハウス」「バーチャルオフィス(法的にはグレーゾーンとされ、推奨されない)」などが考えられます。しかし、どの選択肢にも一長一短があります。

  • 実家に置く場合: 最も一般的でトラブルが少ない方法ですが、親や親族に事情を説明し、理解と協力を得る必要があります。また、国民健康保険料や住民税は、その自治体の基準で課税されるため、実際に住んでいなくても納税の義務が発生します。
  • 滞在先に置く場合: 住まいのサブスクやシェアハウスの中には、住民票の登録を認めている施設もあります。しかし、移動のたびに転出・転入の手続きを繰り返すのは、非常に手間がかかります。14日以内に手続きを行うという法律の規定を遵守し続けるのは、現実的ではありません。

このように、法律の要請とライフスタイルの実態との間に、ある種の「ねじれ」が生じるのが現状です。この問題をどうクリアするか、自分なりのルールと方法論を確立しておく必要があります。この点は、後ほどの「よくある質問」でさらに詳しく解説します。

郵便物の受け取りが不便になる

住民票の問題と密接に関連するのが、郵便物の受け取りです。私たちの生活には、クレジットカード、銀行からの明細、公的機関からの重要書類(納税通知書、年金関係書類など)といった、転送不要で送られてくる、あるいは確実に受け取る必要がある郵便物が数多く存在します。

移動生活を送るアドレスホッパーにとって、これらの郵便物をどう受け取るかは死活問題です。

  • 郵便局の転送サービス: 1年間は指定の場所に転送してもらえますが、毎年更新手続きが必要です。また、次々と滞在先が変わる場合、その都度転送先を変更するのは煩雑です。さらに、「転送不要」と記載された郵便物は転送されず、差出人に返送されてしまいます。
  • 実家や拠点で受け取ってもらう: 実家などに住民票を置いている場合、家族に郵便物を受け取ってもらい、保管や転送を依頼する方法があります。しかし、これは家族に大きな負担をかけることになり、プライバシーの問題も生じます。
  • 私設私書箱の利用: 月額料金で住所を借り、届いた郵便物を保管・転送してくれるサービスです。セキュリティは高いですが、毎月のコストがかかります。

重要な書類を見逃した結果、信用情報に傷がついたり、行政手続きで不利益を被ったりするリスクも考えられます。確実な郵便物受け取りのスキームを構築することは、アドレスホッパーを始める上での必須条件と言えるでしょう。

移動費や初期費用がかさむことがある

「家賃などの固定費が削減できる」というメリットの裏返しとして、移動にかかる交通費や、生活環境の変化に伴う変動費がかさむ可能性があります。

家賃が浮いた分、つい頻繁に長距離を移動していると、航空券代や新幹線代で月の支出が思った以上に膨らんでしまうことがあります。LCCや高速バスを上手く利用するなどの工夫が必要ですが、それでも移動頻度が高ければ、その分コストは増加します。

また、滞在先が変わるたびに、細々とした出費が発生することも見過ごせません。前の滞在先で使っていた調味料が次の場所では使えなかったり、その土地の気候に合わせた衣類を買い足す必要が出たりします。住まいのサブスクに登録する際の入会金や、トランクルームの契約金といった初期費用も考慮に入れる必要があります。

「固定費は減るが、変動費は増える」という構造を理解し、月々や年間のトータルコストで収支をシミュレーションしておくことが重要です。家賃がなくなった解放感から無計画に出費を重ねると、結果的に定住生活より高くついてしまった、という事態も起こり得ます。

環境の変化で精神的に落ち着かないと感じることがある

新しい場所、新しい出会いは刺激的で楽しいものですが、その一方で、常に環境が変化し続けることは、精神的なストレスの原因にもなり得ます

定住生活には、自分の部屋、使い慣れた家具、行きつけのお店といった、「帰る場所」があることによる安心感があります。しかし、アドレスホッパーには、物理的な意味での「自分のテリトリー」がありません。

  • プライバシーの欠如: ゲストハウスやシェアハウスでは、常に他人の気配を感じながら生活することになります。一人の時間を確保するのが難しく、気疲れしてしまう人もいるでしょう。
  • 生活リズムの乱れ: 移動や新しい環境への適応が続くと、睡眠や食事のペースが乱れ、体調を崩しやすくなることがあります。
  • 孤独感: 新しい出会いはあっても、関係性は一時的なものになりがちです。ふとした瞬間に、深い繋がりや心の拠り所がないことに寂しさや孤独を感じることもあるかもしれません。

環境の変化への適応力には個人差が大きいです。「変化=刺激」と楽しめる人もいれば、「変化=ストレス」と感じる人もいます。自分がどちらのタイプなのかを客観的に見極め、意識的に休息を取ったり、同じ場所に少し長めに滞在したりするなど、心身のバランスを取る工夫が求められます。


アドレスホッパーに向いている人の特徴

場所を選ばずにリモートで仕事ができる人、フットワークが軽く行動的な人、環境の変化を楽しめる人、コミュニケーション能力が高い人、持ち物が少ないミニマリスト、安定した収入がある人、自己管理能力が高い人

アドレスホッパーは、誰にでも適したライフスタイルというわけではありません。その自由を最大限に享受し、デメリットを乗り越えていくためには、いくつかの素養や条件が求められます。ここでは、アドレスホッパーという暮らし方に特に向いている人の特徴を7つ挙げ、それぞれについて解説します。

場所を選ばずにリモートで仕事ができる人

これは、アドレスホッパーになるための最も基本的かつ絶対的な前提条件です。生活の拠点を自由に移動するためには、収入を得る手段が特定の場所に縛られていては成り立ちません。

具体的には、ノートパソコンとインターネット環境さえあれば、どこでも業務を遂行できる職種が該当します。

  • ITエンジニア・プログラマー: ソフトウェア開発、ウェブサイト構築、システム運用など。
  • Webデザイナー・グラフィックデザイナー: ロゴ、バナー、ウェブサイトなどのデザイン制作。
  • ライター・編集者: 記事執筆、コンテンツ編集、コピーライティングなど。
  • 動画編集者・映像クリエイター: YouTube動画や広告映像の編集。
  • オンラインアシスタント・秘書: リモートでのスケジュール管理、事務作業代行。
  • Webマーケター・コンサルタント: SEO対策、広告運用、事業戦略の立案など。
  • イラストレーター、翻訳家、オンライン講師なども、アドレスホッパーと非常に親和性が高い職種です。

これらの仕事は、成果物ベースで評価されることが多く、勤務時間や場所に柔軟性があるため、移動しながらでも安定して収入を得ることが可能です。物理的な出社が必須ではない仕事に就いていることが、アドレスホッパーへの第一歩となります。

フットワークが軽く行動的な人

アドレスホッパーの日常は、移動と新しい環境への適応の連続です。そのため、じっとしているよりも動き回るのが好きで、新しいことへの挑戦を厭わない行動的な性格の人は、このライフスタイルを心から楽しむことができるでしょう。

次の滞在先をリサーチしたり、面白そうなイベントを見つけて参加したり、現地のコミュニティに飛び込んでみたりと、自ら積極的に動くことで、アドレスホッパーの魅力は倍増します。逆に、移動そのものが億劫に感じられたり、未知の場所へ行くことに不安を感じたりするタイプの人は、生活そのものが苦痛になってしまうかもしれません。変化を恐れず、それを楽しみに変えられる好奇心と行動力は、不可欠な資質と言えます。

環境の変化を楽しめる人

フットワークの軽さと関連しますが、より内面的な適応能力も重要です。アドレスホッパーは、住む場所だけでなく、気候、食事、人間関係、日々のルーティンなど、生活を取り巻くあらゆるものが常に変化します。

この絶え間ない変化を「ストレス」ではなく「刺激」や「学び」としてポジティブに捉えられるかどうかが、大きな分かれ目となります。

  • 毎回異なるベッドや枕でも気にせず眠れる。
  • 知らない土地のスーパーで食材を探すのを楽しめる。
  • 方言や文化の違いに興味を持てる。
  • 予期せぬトラブルが起きても、それすらも「旅の醍醐味」として面白がれる。

このような柔軟な思考と高い適応能力を持つ人は、アドレスホッパーとしての日々を豊かに過ごすことができるでしょう。逆に、決まったルーティンを好む人や、環境が変わると心身の調子を崩しやすい人は、安定した定住生活の方が向いています。

コミュニケーション能力が高い人

アドレスホッパーは、一人で黙々と過ごすことも可能ですが、その醍醐味の一つは間違いなく「出会い」にあります。ゲストハウスのラウンジ、シェアハウスの共有リビング、現地のコワーキングスペースなど、様々な場所で初対面の人と顔を合わせる機会が豊富にあります。

こうした場面で、物怖じせずに自分から話しかけたり、相手の話に興味を持って耳を傾けたりできるコミュニケーション能力があると、人間関係の輪は一気に広がります。多様なバックグラウンドを持つ人々との交流は、新たな知識や視点をもたらし、時には仕事に繋がることもあります。

また、滞在先のホストやスタッフ、地域住民との円滑な関係を築く上でも、基本的なコミュニケーション能力は必須です。必ずしもおしゃべりである必要はありませんが、相手に敬意を払い、良好な関係を築こうとする姿勢が大切です。

持ち物が少ないミニマリスト

物理的な制約から、アドレスホッパーは持ち物を少なくする必要があります。そのため、もともとモノへの執着が少なく、必要最小限のもので暮らすことに喜びを感じるミニマリストや、それに近い価値観を持つ人は、アドレスホッパーへの移行が非常にスムーズです。

「所有」することよりも、身軽であることの「自由」や、新しい「経験」に価値を見出す思考は、アドレスホッパーの哲学そのものです。荷造りや荷解きのストレスも少なく、少ない持ち物でどう快適に暮らすかを工夫すること自体を楽しめるでしょう。

逆に、コレクションしている趣味の道具、たくさんの本や服など、どうしても手放せないモノが多い人は、それらを保管するためのトランクルーム費用がかさむだけでなく、精神的にも「後ろ髪を引かれる」状態になり、アドレスホッパーの身軽さを十分に享受できないかもしれません。

安定した収入がある人

自由なイメージの強いアドレスホッパーですが、その生活を支えるのは確固たる経済的基盤です。家賃という大きな固定費はなくなりますが、滞在費、移動費、食費など、日々の生活コストは当然かかります。

特に、会社員のように毎月決まった給料が保証されているわけではないフリーランスの場合、継続的に案件を獲得し、安定した収入源を確保できる見込みが立っていることが極めて重要です。収入が不安定な状態でアドレスホッパーを始めると、目先の生活費を稼ぐことに追われ、精神的な余裕を失ってしまいます。これでは、本来の目的であったはずの自由な暮らしを楽しむどころではありません。

月の収入に波がある場合でも、数ヶ月分の生活費をまかなえるだけの貯蓄を用意しておくなど、リスク管理が不可欠です。経済的な安定が、精神的な自由を支えるという現実を直視する必要があります。

自己管理能力が高い人

会社に所属していれば、上司や同僚がある程度スケジュールやタスクを管理してくれます。しかし、アドレスホッパーとして、特にフリーランスとして働く場合、仕事のスケジュール管理、金銭管理、体調管理など、すべてを自分一人で律する必要があります。

  • スケジュール管理: 納期を守りつつ、移動計画や滞在先の予約もこなす。
  • 金銭管理: 毎月の収入と支出を正確に把握し、予算内で生活する。確定申告などの税務処理も自分で行う。
  • 健康管理: 環境の変化で体調を崩しやすいため、食事や睡眠、運動に気を配り、セルフケアを怠らない。

誰かに指示されることなく、自発的にこれらを管理し、生活と仕事のバランスを保つ高度な自己管理能力が求められます。自由であるということは、それだけ自己責任が大きくなるということを意味します。この責任を全うできる人こそ、アドレスホッパーに向いていると言えるでしょう。


アドレスホッパーに向いていない人の特徴

決まった場所で働く必要がある人、環境の変化が苦手な人、多くの私物を手元に置いておきたい人、神経質・潔癖症な人

アドレスホッパーというライフスタイルは、多くの魅力を持つ一方で、その特性上、どうしても馴染めない人がいるのも事実です。自分に合わないライフスタイルを選択してしまうと、理想と現実のギャップに苦しむことになりかねません。ここでは、アドレスホッパーにはあまり向いていない人の特徴を具体的に解説します。

決まった場所で働く必要がある人

これは最も分かりやすく、物理的な制約です。仕事の内容が、特定の場所に出勤することを前提としている場合、アドレスホッパーになることは極めて困難です。

具体的には、以下のような職種が挙げられます。

  • 店舗での接客・販売業: アパレル、飲食店、コンビニエンスストアの店員など。
  • 医療・介護・福祉関係者: 医師、看護師、介護士など、対面でのケアが必須の仕事。
  • 製造業・建設業: 工場や現場での作業が中心となる仕事。
  • 公務員や教員: 役所や学校など、指定された勤務地がある仕事。
  • 物理的な設備が必要な研究職や専門職: 特殊な実験装置や機材が必要な仕事。

これらの仕事に従事している人がアドレスホッパーを目指すのであれば、まずはリモートワークが可能な職種へ転職したり、副業でリモートの仕事を始めたりするなど、働き方そのものを変えることから始める必要があります。

環境の変化が苦手な人

アドレスホッパーの日常は、変化の連続です。滞在先、寝具、食事、気候、周囲の人々など、あらゆるものが目まぐるしく変わります。この変化をストレスに感じ、心身の不調をきたしやすい人には、アドレスホッパーは厳しいライフスタイルかもしれません。

  • 慣れ親しんだ環境に安心感を覚える人: 自分の部屋や使い慣れたものに囲まれていることで心が落ち着くタイプ。
  • 生活リズムが崩れると体調を崩しやすい人: 睡眠時間や食事の時間が不規則になることに強いストレスを感じる。
  • 新しい環境に馴染むのに時間がかかる人: いわゆる「場所見知り」や「人見知り」をする傾向がある。

安定したルーティンを好み、予測可能な日常に心地よさを感じる人にとっては、常にアンテナを張り、新しい環境に適応し続けなければならないアドレスホッパーの生活は、楽しい刺激よりもむしろ絶え間ない緊張と疲労をもたらす可能性があります。自分の「心の安定」が何によってもたらされるのかを自己分析することが重要です。

多くの私物を手元に置いておきたい人

モノに対する価値観も、向き不向きを判断する重要な要素です。趣味のコレクションや、たくさんの書籍、愛用の家具や調理器具など、多くの私物を手元に置いておきたいという欲求が強い人は、アドレスホッパーの生活にフラストレーションを感じるでしょう。

アドレスホッパーの基本は、身軽であることです。移動のたびに多くの荷物を運ぶのは現実的ではありません。トランクルームを借りるという選択肢もありますが、それはあくまで「今使わないもの」を保管する場所であり、日常的に使いたいものをすべて保管できるわけではありません。

  • 収集癖がある人: フィギュア、レコード、アンティークなど、物理的なコレクションが趣味の人。
  • 紙の本を愛する人: 電子書籍では満足できず、書棚に本が並んでいる状態を好む人。
  • 特定の道具にこだわりがある人: 料理が好きで専門的な調理器具が手放せない、DIYが趣味で多くの工具を持っているなど。

これらの人々にとって、愛するモノたちを手放したり、遠くに預けたりすることは、生活の質や幸福度を著しく低下させる要因になりかねません。「所有する喜び」が「移動する自由」を上回るのであれば、無理にモノを減らしてアドレスホッパーになる必要はないでしょう。

神経質・潔癖症な人

アドレスホッパーが利用する滞在先の多くは、不特定多数の人が利用する共有スペースを含みます。特に、コストを抑えようとすると、ゲストハウスやシェアハウスが主要な選択肢となりますが、そこでの生活にはある程度の寛容さが求められます。

そのため、衛生面に関して非常に神経質な人や、潔癖症の傾向がある人は、大きなストレスを感じる場面が多くなるかもしれません。

  • 共有のキッチンやバスルームに抵抗がある: 他人が使った後の水回りや調理器具を使うことに強い不快感を覚える。
  • 他人の生活音が気になる: 隣の部屋のいびきや、共有スペースでの話し声などが気になって眠れない、集中できない。
  • シーツやタオルの清潔さが過度に気になる: ホテルであっても、清掃の質に細かくこだわってしまう。

もちろん、清掃が行き届いた個室タイプのホテルや、プライベート空間が確保されたマンスリーマンションを選べば、これらの問題は軽減できます。しかし、その分コストは高くなり、滞在先の選択肢も狭まります。他者との共同生活や、ある程度の「アバウトさ」を受け入れられない場合、アドレスホッパー生活で安らげる場所を見つけるのは難しいかもしれません。


アドレスホッパーの始め方5ステップ

荷物を減らす・処分する、今住んでいる家の解約手続きをする、住民票の手続きをする、郵便物の転送手続きをする、滞在先を確保する

「自分もアドレスホッパーになってみたい」と決意したなら、次は何から手をつければ良いのでしょうか。思いつきで家を解約してしまうと、後で大変なことになりかねません。ここでは、定住生活からアドレスホッパーへとスムーズに移行するための、具体的な5つのステップを時系列で解説します。

① 荷物を減らす・処分する

アドレスホッパーへの第一歩は、「身軽になる」こと、つまり徹底的な断捨離から始まります。これは単なる片付けではなく、これからのライフスタイルを規定する重要な儀式です。移動を前提とした生活では、持っていけるモノはスーツケース1〜2個分が限界です。今ある家財を「持っていくモノ」「実家などに預けるモノ」「データ化するモノ」「処分するモノ」の4つに分類しましょう。

  • 持っていくモノ:
    • 衣類(1週間分を着回せる量、オールシーズン対応できるものが理想)
    • 仕事道具(ノートパソコン、スマートフォン、充電器など)
    • 洗面用具、常備薬、最低限の化粧品
    • 重要書類(パスポート、年金手帳、マイナンバーカードなど)
  • 実家などに預けるモノ:
    • シーズンオフの衣類
    • 捨てられない思い出の品(アルバム、記念品など)
    • たまにしか使わない趣味の道具
    • ※預け先がない場合は、月額制のトランクルームサービスの利用を検討します。
  • データ化するモノ:
    • 書籍・雑誌: スキャンしてPDF化するか、電子書籍で購入し直す。
    • 書類: 取扱説明書や契約書など、PDFで保存できるものはスキャンする。
    • 写真・CD: クラウドストレージや音楽ストリーミングサービスに移行する。
  • 処分するモノ:
    • 家具・家電: これらはアドレスホッパー生活では基本的に不要です。リサイクルショップ、フリマアプリ(メルカリ、ラクマなど)、地域の不用品交換サービス(ジモティーなど)を活用して、できるだけ早く手放しましょう。大型のものは粗大ゴミとして処分します。
    • 1年以上使っていない衣類・雑貨: 「いつか使うかも」は、ほとんどの場合使いません。思い切って処分するか、寄付しましょう。

この断捨離のプロセスは、物理的な準備であると同時に、「所有」への執着を手放すための精神的な準備でもあります。時間と労力がかかりますが、このステップを丁寧に行うことが、その後の身軽な生活の基盤となります。

② 今住んでいる家の解約手続きをする

荷物の整理に目処がついたら、現在の住まいの解約手続きを進めます。これはタイミングが非常に重要です。

まず、賃貸借契約書を再確認し、「解約通知の期限」をチェックしてください。一般的には「退去日の1ヶ月前まで」とされていることが多いですが、物件によっては「2ヶ月前まで」というケースもあります。この期限を過ぎてしまうと、余分な家賃を支払うことになりかねません。

解約通知は、管理会社や大家さんに電話で一報を入れた後、指定された書式(解約通知書)を郵送するのが一般的です。通知を済ませたら、退去日を確定させます。

退去日当日は、管理会社の担当者との「退去立ち会い」があります。部屋の傷や汚れをチェックし、原状回復費用を見積もるためのものです。ここで敷金から差し引かれる金額が確定します。スムーズに進めるためにも、退去日までに部屋の掃除はしっかり行っておきましょう。

また、電気、ガス、水道、インターネット回線といったライフラインの解約手続きも忘れてはいけません。各社のウェブサイトや電話で、退去日に合わせて解約の申し込みを済ませておきましょう。

③ 住民票の手続きをする

住所を移動させるための法的な手続きです。これは非常に重要なステップであり、慎重に行う必要があります。

まず、どこに新しい「生活の本拠」として住民票を置くかを決めなければなりません。最も一般的で推奨されるのは、「実家または信頼できる親族の家」です。事前に事情を説明し、許可を得ておきましょう。

住民票を移す場所が決まったら、以下の手順で手続きを行います。

  1. 転出届の提出:
    • 現在住んでいる市区町村の役所で、「転出届」を提出します。手続きは、引越しの14日前から当日まで可能です。
    • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)と印鑑が必要です。
    • 手続きが完了すると、「転出証明書」が発行されます。
  2. 転入届の提出:
    • 新しい住所地(実家など)の市区町村の役所で、「転入届」を提出します。手続きは、新しい住所に住み始めてから14日以内に行う必要があります。
    • 「転出証明書」と本人確認書類、印鑑を持参します。
    • この手続きと同時に、マイナンバーカードの住所変更、国民健康保険や国民年金の加入・住所変更手続きも行いましょう。

この手続きを正しく行うことで、「住所不定」の状態を避け、社会的な信用を維持することができます。

④ 郵便物の転送手続きをする

住民票を移しても、古い住所宛に郵便物が届くことはよくあります。重要な書類を見逃さないために、郵便物の転送手続きは必須です。

最も簡単なのは、日本郵便の「e転居」サービスです。インターネット上で申し込みができ、旧住所宛の郵便物を、新しい住所(住民票を置いた実家など)へ1年間無料で転送してくれます。

申し込みには、スマートフォンと本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)が必要です。手続き後、実際に転送が開始されるまでには数日かかる場合があるため、引越しの1週間前までには済ませておくと安心です。

この転送サービスは、1年ごとに更新手続きが必要です。また、「転送不要」と記載された郵便物(クレジットカードなど)は転送されないため、カード会社や銀行など、重要なサービスの登録住所は、個別に新しい住所へ変更手続きを行っておくことが極めて重要です。

⑤ 滞在先を確保する

すべての公的手続きと家の片付けが完了したら、いよいよアドレスホッパーとしての最初の滞在先を確保します。家の退去日からシームレスに移動できるよう、事前に予約を済ませておきましょう。

最初の滞在先として、どのような選択肢があるでしょうか。

  • 住まいのサブスクリプションサービス: ADDressやHafHなど、事前に会員登録とプラン契約を済ませておきます。最初の滞在先として、アクセスの良い都市部の物件や、自分が興味のある地域の物件を予約してみましょう。
  • ウィークリー・マンスリーマンション: ある程度の期間(1週間〜1ヶ月)、腰を据えて新しい生活に慣れたい場合におすすめです。予約サイトで希望のエリアと期間で検索し、契約します。
  • ホテル・ゲストハウス: まずは数日間、お試しで始めてみたい場合に手軽です。ホテル予約サイトで気軽に予約できます。

最初から長期の計画を立てる必要はありません。まずは1週間〜1ヶ月程度の滞在先を確保し、そこを拠点に新しい生活リズムを掴みながら、次の行き先をゆっくり考えるのがおすすめです。このステップを完了すれば、あなたも正式にアドレスホッパーの仲間入りです。


アドレスホッパーの滞在先の種類

アドレスホッパーの生活の質は、滞在先の選択に大きく左右されます。コスト、プライバシー、利便性、コミュニティなど、何を重視するかによって最適な選択肢は異なります。ここでは、代表的な4種類の滞在先の特徴と、それぞれのメリット・デメリットを比較検討します。

滞在先の種類 メリット デメリット こんな人におすすめ
住まいのサブスク 料金が定額で予算を立てやすい、光熱費・Wi-Fi込み、手続きが簡単、コミュニティがある 人気物件の予約が取りにくい、サービスのルールに縛られる、物件の質にばらつきがある 様々な地域を体験したい、コミュニティとの交流を求める人
ホテル・ゲストハウス 予約が手軽、清掃不要、セキュリティが高い(ホテル)、交流が盛ん(ゲストハウス) 長期滞在は割高、自炊できない場合が多い、プライベート空間が限られる(ゲストハウス) 短期滞在を繰り返す、身軽さを最優先したい人
ウィークリー・マンスリーマンション プライベート空間を完全に確保できる、家具家電付きで自炊可能、生活の自由度が高い 初期費用や保証人が必要な場合がある、契約期間の縛りがある、サブスク等より割高な傾向 特定の場所に1ヶ月以上滞在したい、プライバシーを重視する人
シェアハウス 家賃が比較的安い、共益費に光熱費等が含まれることが多い、入居者と長期的な関係を築ける プライバシーの確保が難しい、共同生活のルールがある、入居審査がある 一つの拠点で生活コストを抑えたい、共同生活が苦にならない人

住まいのサブスクリプションサービス

近年、アドレスホッパーの増加とともに急成長しているのが、月額定額制で全国各地の提携物件に住むことができる「住まいのサブスクリプションサービス」です。

仕組み: 月々の利用料を支払うことで、サービスが提携している全国の家(個室やドミトリー)を予約し、滞在することができます。料金には水道光熱費やインターネット(Wi-Fi)利用料が含まれていることがほとんどで、家具・家電も完備されています。

メリット:

  • コスト管理の容易さ: 月額料金が固定されているため、予算を立てやすいのが最大の魅力です。
  • 手続きの簡便さ: 物件ごとの面倒な賃貸契約やライフラインの契約が一切不要。アプリやウェブサイト上で手軽に予約が完結します。
  • コミュニティ機能: 多くのサービスでは、利用者同士や地域住民との交流を促すイベントが開催されたり、コミュニティマネージャー(家守)が常駐していたりします。これにより、移住先で孤立することなく、新しい出会いや発見を得やすくなります。

デメリット:

  • 予約の競争率: 都心部の物件や景観の良い人気物件は予約が殺到し、希望通りに滞在できないことがあります。柔軟なスケジュール調整が求められます。
  • ルールの制約: 各サービスや物件ごとに、同伴者の宿泊ルールや消灯時間などのハウスルールが定められており、それに従う必要があります。

総評: 多様な地域での暮らしを手軽に体験してみたい、人との交流を重視するアドレスホッパー初心者にとって、最も有力な選択肢の一つと言えるでしょう。

ホテル・ゲストハウス

最も手軽で、短期的な移動に適した選択肢がホテルやゲストハウスです。

  • ホテル:
    メリット: 完全なプライベート空間が確保され、セキュリティも万全です。毎日の清掃サービスがあり、タオルやアメニティも揃っているため、非常に快適に過ごせます。予約サイトで即時予約できる手軽さも魅力です。
    デメリット: 長期滞在するとコストが非常に高くなります。キッチンがないため自炊ができず、外食中心の生活になりがちで、食費もかさみます。
  • ゲストハウス:
    メリット: 宿泊費がホテルに比べて格安です。共有のラウンジやキッチンがあり、他の宿泊者(国内外の旅行者など)と気軽に交流できるのが最大の魅力です。
    デメリット: 寝室がドミトリー(相部屋)形式の場合、プライバシーの確保は困難です。セキュリティ面でもホテルに劣り、共有スペースの利用マナーなど、他者への配慮が求められます。

総評: 数日単位で目まぐるしく場所を変えたいフットワークの軽い人や、ワーケーションのような短期滞在には最適です。ただし、これを生活の基盤とするには、コストやプライバシーの面で課題があります。

ウィークリー・マンスリーマンション

1週間単位または1ヶ月単位で借りられる家具・家電付きのマンションです。一つの場所に比較的長く滞在する場合に有効な選択肢です。

メリット:

  • 完全なプライベート空間: 自分だけの空間で、誰にも干渉されずに生活できます。キッチン、バス、トイレもすべて専用で、自宅と同じような感覚で過ごせます。
  • 生活の自由度: 自炊はもちろん、友人を招いたり、自分の好きな時間に生活したりと、自由度が高いのが特徴です。
  • 家具・家電完備: スーツケース一つで入居し、その日から快適な生活をスタートできます。

デメリット:

  • コスト: 住まいのサブスクやゲストハウスに比べると、料金は割高になる傾向があります。
  • 契約の手間: 敷金・礼金の代わりに保証金が必要だったり、保証人が求められたりする場合があります。契約期間の縛りもあり、途中解約すると違約金が発生することもあります。

総評: 特定の都市でプロジェクトがあるなど、1ヶ月以上の滞在が決まっている場合や、プライバシーと生活の自由度を最優先したい人に向いています。アドレスホッパー生活の合間に、一度腰を落ち着けてリフレッシュするための拠点として利用するのも良いでしょう。

シェアハウス

一つの家を複数の住人で共有して暮らすスタイルです。個人の寝室は確保しつつ、リビングやキッチン、バスルームなどを共有します。

メリット:

  • 経済性: 一般的な賃貸マンションを一人で借りるよりも家賃を安く抑えられます。共益費に水道光熱費やWi-Fi利用料が含まれていることが多く、コスト管理がしやすいです。
  • コミュニティ: 日常的に顔を合わせる入居者と、長期的な人間関係を築きやすいのが特徴です。一人暮らしの寂しさを感じにくく、情報交換や助け合いも生まれます。

デメリット:

  • プライバシーの問題: 共有スペースでは常に他人の存在があり、一人の時間を確保するのが難しい場合があります。生活音や価値観の違いから、入居者同士のトラブルに発展する可能性もゼロではありません。
  • 入居審査と契約: 入居前に審査があり、最低契約期間が定められていることがほとんどです。短期間での移動を繰り返すアドレスホッパーのスタイルとは、やや相性が悪い側面もあります。

総評: 生活コストを抑えつつ、一つの場所に拠点を定めてコミュニティに深く関わりたい人に適しています。頻繁に移動するのではなく、特定の都市をハブとして、そこから時々旅に出るような「セミ・アドレスホッパー」的なスタイルと相性が良いでしょう。


アドレスホッパーにおすすめの住まいのサブスク3選

アドレスホッパーというライフスタイルを支えるサービスとして、今や欠かせない存在となった「住まいのサブスクリプションサービス」。ここでは、数あるサービスの中でも特に知名度と人気が高い3つのサービスをピックアップし、それぞれの特徴や料金、どんな人におすすめかを比較・解説します。

※以下の情報は2024年5月時点のものです。最新の情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。

サービス名 特徴 月額料金(目安) こんな人におすすめ
ADDress 全国の古民家や遊休別荘などを活用。家守(コミュニティマネージャー)との交流。光熱費・Wi-Fi込み。 4.4万円〜(プランによる) 地域との繋がりや人との交流を重視する人。
HafH コイン制。国内外のホテル、旅館、ゲストハウスなど多様な施設。ホテルの個室が中心。 9,800円〜(プランによる) 国内外を旅したい人。ホテルの快適さを求める人。
unito 都心部の物件が豊富。「リレント機能」で外泊日数に応じて家賃が割引。 物件により異なる(月額10万円前後〜) 都心に拠点が必要な人。拠点と多拠点生活を両立したい人。

① ADDress

ADDressは、全国の空き家や遊休別荘などをリノベーションした家を拠点として提供する、コミュニティ重視型の住まいのサブスクです。

特徴:

  • 多彩な拠点と家守(やもり)の存在: 北海道から沖縄まで、全国に280拠点以上(2024年5月時点)を展開。各拠点には「家守」と呼ばれるコミュニティマネージャーがおり、地域の案内や会員同士の交流をサポートしてくれます。これにより、ただ滞在するだけでなく、その土地の文化や人々と深く繋がる体験ができます。
  • 光熱費・Wi-Fi込みの明朗会計: 月額料金に、水道光熱費、Wi-Fi利用料、共有スペースの備品代などがすべて含まれています。追加費用を気にせず生活できるのは大きな魅力です。
  • 多様な部屋タイプ: 個室だけでなく、複数人で利用できるドミトリー(相部屋)もあり、予約時に選択可能です。また、同伴者と一緒に滞在できる制度も整っています。

料金プラン:
月額4.4万円(税込)または月額5.5万円(税込)のプランが基本で、契約期間によって料金が異なります。これらのプランでは、月に利用できる家の予約枠(チケット)の枚数が決まっています。
(参照:ADDress公式サイト)

こんな人におすすめ:
コストを抑えながら全国を巡りたい人、そして何よりも地域の人々や他の会員との交流を楽しみたい人に最適です。一人で静かに過ごすというよりは、コミュニティに溶け込み、新しい出会いや発見を求める人に向いています。

② HafH(ハフ)

HafHは「Home away from Home(第二のふるさと)」をコンセプトに、国内外の宿泊施設をネットワーク化したサービスです。ホテルや旅館の比率が高いのが特徴です。

特徴:

  • 独自の「HafHコイン」制度: 月額プランに応じて毎月一定数の「HafHコイン」が付与されます。宿泊施設の予約には、このコインを使用します。人気の施設やグレードの高い部屋ほど、必要なコイン数が多くなる仕組みです。コインは無期限で貯めておくことができるため、「今月はあまり移動しないからコインを貯めて、来月は貯めたコインで豪華なホテルに泊まる」といった柔軟な使い方が可能です。
  • 国内外の豊富な拠点: 日本国内1,000以上、海外30以上の国と地域、合計2,000以上の施設(2024年5月時点)と提携しています。都心の高級ホテルから地方のゲストハウス、海外のリゾートまで、選択肢が非常に幅広いのが強みです。
  • ホテルの快適さ: 提携先はホテルや旅館が中心のため、プライバシーが確保された個室で、清掃やアメニティといったホテルならではの快適なサービスを受けられる場合が多いです。

料金プラン:
月額9,800円(スタンダードプラン)から、複数の料金プランが用意されています。プランによって、毎月付与されるコインの数が異なります。
(参照:HafH公式サイト)

こんな人におすすめ:
日本国内だけでなく海外も視野に入れて移動したい人、ゲストハウスのような交流よりもホテルのようなプライベートな快適さを重視する人にぴったりです。コインを計画的に使うことで、コストを抑えながら質の高い滞在を実現できます。

③ unito(ユニット)

unitoは、特に都心部での「暮らし」に焦点を当てたサービスです。最大の特徴は「リレント」という独自の仕組みにあります。

特徴:

  • 「リレント」機能: 自分が部屋を使わない日(外泊する日)を申請すると、その日数分の家賃が日割りで割引されるという画期的なシステムです。例えば、月額15万円の部屋で月に10日リレントを利用すれば、5万円が割引されて家賃は10万円になります。自分が使わない間、その部屋はホテルとして他の人に貸し出されます。
  • 都心部の物件が中心: 渋谷、新宿、恵比寿など、東京の人気エリアを中心に、サービスアパートメントやホテルなどを提供しています。通勤やビジネスの拠点として非常に便利です。
  • 家具・家電付きで即入居可能: すべての部屋に家具・家電、Wi-Fiが完備されており、敷金・礼金・仲介手数料も不要です。ホテルライクな暮らしをすぐに始められます。

料金プラン:
料金は月額定額のサブスクリプション型ではなく、物件ごとに月額の家賃が設定されています。料金は物件の立地や広さ、グレードによって大きく異なります(月額10万円前後から30万円以上の物件まで様々)。
(参照:unito公式サイト)

こんな人におすすめ:
仕事の都合などで都心にメインの拠点を持ちつつ、週末や長期休暇には他の場所へ移動する、というハイブリッドな暮らしをしたい人に最適です。「リレント」機能を上手く活用すれば、都心に拠点を持ちながらも、実質的な家賃を抑えることができます。完全なアドレスホッパーではなく、「拠点+多拠点」のスタイルを目指す人におすすめのサービスです。


アドレスホッパーの生活にかかる費用の内訳

滞在費、移動費、食費・日用品費、荷物の保管料

アドレスホッパーの生活費は、定住生活とは費目の構成が大きく異なります。家賃や水道光熱費といった固定費がなくなる代わりに、滞在費や移動費といった変動費が中心となります。ここでは、アドレスホッパーの生活にかかる主な費用を4つのカテゴリーに分けて解説し、具体的なモデルケースを考えてみましょう。

滞在費

生活費の中で最も大きな割合を占めるのが滞在費です。これは、利用する滞在先の種類によって大きく変動します。

  • 住まいのサブスクリプションサービス:
    • 月額4万円〜6万円程度が相場です。これには光熱費やWi-Fi代が含まれているため、コストパフォーマンスは高いと言えます。ADDressや一部のHafHプランがこれに該当します。
  • ホテル・ゲストハウス:
    • ゲストハウス(ドミトリー): 1泊3,000円〜5,000円程度。月換算で9万円〜15万円。
    • ビジネスホテル: 1泊7,000円〜12,000円程度。月換算で21万円〜36万円となり、現実的ではありません。長期割プランを利用しても高額になりがちです。
  • ウィークリー・マンスリーマンション:
    • 都心部では月額15万円〜、地方都市では月額8万円〜が目安です。プライベート空間が確保できる分、コストは高めです。
  • シェアハウス:
    • 都心部で月額5万円〜8万円、地方では月額3万円〜5万円程度。コストを抑える有力な選択肢ですが、移動の自由度は低くなります。

節約派のアドレスホッパーは、住まいのサブスクやゲストハウスを中心に、月々の滞在費を5万円〜10万円程度に抑えることが多いようです。

移動費

滞在費の次に大きな変動費となるのが、拠点間を移動するための交通費です。どれくらいの頻度で、どんな手段で移動するかによって、この費用は青天井に増える可能性があります。

  • 移動頻度:
    • 月に1〜2回程度の移動であれば、コストは比較的抑えられます。週に1回以上移動するようなハイペースな生活だと、費用はかさみます。
  • 移動手段:
    • LCC(格安航空会社)や高速バス: 長距離移動のコストを抑えるための基本戦略です。セールなどを上手く活用しましょう。
    • 新幹線・特急列車: 快適で時間も正確ですが、コストは高くなります。
    • 青春18きっぷなど: 期間限定ですが、時間をかけてのんびり移動するなら、非常に安価な手段です。

移動のスタイルにもよりますが、月々の移動費は2万円〜5万円程度を一つの目安として計画しておくと良いでしょう。移動を少なくすれば、この費用はさらに抑えることが可能です。

食費・日用品費

定住生活でもかかる費用ですが、アドレスホッパーの場合は自炊できる環境にあるかどうかで大きく変動します。

  • 自炊中心の場合:
    • 住まいのサブスク、ゲストハウス、シェアハウスなど、共有キッチンがある場所に滞在すれば自炊が可能です。この場合、食費は月4万円〜6万円程度に抑えることができます。
  • 外食中心の場合:
    • キッチンがないホテル滞在が中心になると、3食外食か中食(コンビニ・スーパーの惣菜など)になります。この場合、食費は月8万円〜12万円以上かかることも珍しくありません。

日用品費(洗面用具、洗剤、化粧品など)は、定住生活と大きくは変わりませんが、滞在先が変わるたびに細かなものを買い足す必要が出てくるため、やや多めに見積もっておくと安心です。

荷物の保管料

すべての荷物を持ち運ぶのではなく、一部をトランクルームなどに預ける場合、その保管料が月々の固定費として発生します。

  • トランクルームの種類:
    • 屋外型コンテナ: 比較的安価(月額5,000円〜)ですが、温度・湿度管理が難しく、衣類や書籍の保管には向きません。
    • 屋内型トランクルーム: 空調が完備されておりセキュリティも高いですが、料金は高め(月額1万円〜)になります。
    • 宅配型トランクルーム: 箱単位で預けるサービスで、取り出しも宅配便で行えます。少量・小型の荷物に適しており、月額数百円から利用可能です。

もしトランクルームを利用する場合、月々5,000円〜15,000円程度の費用を見込んでおく必要があります。

【モデルケース:節約志向のアドレスホッパーの月間生活費】

  • 滞在費(住まいのサブスク):50,000円
  • 移動費(月2回の長距離移動):30,000円
  • 食費(自炊中心):50,000円
  • 荷物保管料(宅配型):5,000円
  • 通信費・その他雑費:15,000円
  • 合計:150,000円

このシミュレーションからわかるように、計画的に生活すれば、都市部で一人暮らしをするのと同等か、それ以下のコストでアドレスホッパー生活を送ることは十分に可能です。


アドレスホッパーに関するよくある質問

住民票はどうすればいい?、郵便物はどこで受け取る?、アドレスホッパーは違法ではない?、確定申告はどうすればいい?、仕事はどうやって探す?

アドレスホッパーという新しいライフスタイルには、多くの疑問がつきものです。特に、法律や税金、仕事といった実務的な側面については、不安を感じる方も多いでしょう。ここでは、アドレスホッパーを目指す人が抱きがちな質問に、Q&A形式で分かりやすくお答えします。

Q. 住民票はどうすればいい?

これはアドレスホッパーにとって最も重要で、最も悩ましい問題です。日本の法律(住民基本台帳法)では、住所を変更した場合、14日以内に転入届を提出することが義務付けられています。しかし、数日〜数週間単位で移動するアドレスホッパーがこのルールを厳密に守るのは不可能です。そこで、現実的な落としどころとして、以下の3つの方法が考えられます。

実家や親族の家に置く

最も一般的で、トラブルが少ないとされている方法です。親や親族の理解と協力が得られるのであれば、そこを「生活の本拠」として住民票を登録します。これにより、以下のメリットがあります。

  • 行政サービスの継続: 国民健康保険、国民年金、選挙権などを問題なく維持できます。
  • 社会的信用の維持: クレジットカードの契約や銀行口座の開設など、住所の証明が必要な場面でスムーズに対応できます。
  • 郵便物の受け取り拠点: 重要な郵便物を確実に受け取ってもらえます(ただし、家族に負担をかける点は考慮が必要です)。

多くの先輩アドレスホッパーがこの方法を選択しています。

滞在先の拠点に置く

一部のシェアハウスや住まいのサブスクリプションサービスでは、運営会社の許可を得て、その施設に住民票を登録できる場合があります。一つの場所に比較的長く(数ヶ月以上)滞在する予定がある場合に有効な選択肢です。

ただし、この方法には注意点もあります。

  • 運営会社の許可が必須: 無断で住民票を置くことはできません。
  • 移動のたびに手続きが必要: もしその拠点を離れて別の場所に住民票を移す場合、毎回、転出・転入の手続きが必要になり、非常に煩雑です。

そのため、長期的なメイン拠点として利用する場合に限られるでしょう。

住民票の除票手続きを行う

これは、1年以上にわたって海外で生活する場合に選択する方法です。「海外転出届」を役所に提出することで、住民票が「除票」されます。これにより、日本国内に住所がない状態になります。

除票すると、住民税の納税義務がなくなり、国民年金の加入も任意になります。しかし、国民健康保険は利用できなくなるため、海外旅行保険への加入が必須となります。

日本国内を移動するアドレスホッパーは、この手続きの対象外です。安易に除票すると、国内での行政サービスが受けられなくなるため、絶対に行わないでください。

Q. 郵便物はどこで受け取る?

住民票の問題と並んで重要なのが、郵便物の受け取りです。特に、カード会社や役所から送られてくる「転送不要郵便」をどう受け取るかが課題となります。

郵便局の転送サービスを利用する

住民票を置いた住所(実家など)を旧住所、これから滞在するホテルやマンスリーマンションを新住所として、日本郵便の「e転居」で転送手続きを行う方法です。1年間は無料で利用できます。

ただし、滞在先が変わるたびに転送先を変更する手間がかかります。また、前述の通り「転送不要郵便」は転送されず、差出人に返送されてしまうという大きな欠点があります。

私設私書箱サービスを利用する

月額料金(数千円程度)で、自分専用の住所(私書箱)をレンタルできるサービスです。ここに届いた郵便物を保管してもらい、指定の滞在先にまとめて転送してもらうことができます。

メリット:

  • 転送不要郵便も受け取ることができる。
  • 郵便物を一括管理でき、必要な時に転送してもらえる。
  • サービスの住所を、一部のウェブサービスなどの登録住所として利用できる場合がある。

デメリット:

  • 月額のコストがかかる。
  • 法人登記などに利用できない場合が多い。

コストはかかりますが、郵便物を確実に管理したいアドレスホッパーにとっては非常に有効な解決策です。

滞在先で受け取る

ホテルやゲストハウス、マンスリーマンションのフロントや管理人に依頼して、郵便物を受け取ってもらう方法です。

事前に必ず受け取りが可能かどうかを確認し、許可を得る必要があります。また、あくまで一時的な対応であり、長期的に安定した受け取り方法とは言えません。友人や知人への荷物など、緊急性の低いものを送ってもらう際に利用するのが良いでしょう。

Q. アドレスホッパーは違法ではない?

結論から言うと、適切な手続きを踏んでいれば、アドレスホッパーというライフスタイル自体は全く違法ではありません

違法性が問われる可能性があるのは、「住所不定」の状態、つまり住民票を正しく届け出ていない場合です。住民基本台帳法では、正当な理由なく住民票の異動届を怠った場合、「5万円以下の過料」に処される可能性があると定められています。

したがって、実家や特定の拠点にきちんと住民票を置き、納税や社会保険料の支払いの義務を果たしている限り、法的に何の問題もありません。重要なのは、「住所不定」と「アドレスホッパー」を明確に区別し、後者の立場として法的な義務を遵守することです。

Q. 確定申告はどうすればいい?

フリーランスや個人事業主のアドレスホッパーにとって、確定申告は避けて通れない義務です。

納税地は、原則としてその年の1月1日時点での「住所地」を管轄する税務署となります。この「住所地」は、住民票のある場所(実家など)とするのが一般的です。したがって、確定申告書の提出先は、住民票のある自治体を管轄する税務署になります。

移動生活を送るアドレスホッパーにとって、申告時期に税務署へ直接出向くのは困難な場合があります。そこで強く推奨されるのが、国税庁のシステムである「e-Tax(電子申告)」の利用です。

マイナンバーカードと、それを読み取れるスマートフォンかICカードリーダーがあれば、インターネットを通じてどこからでも確定申告を完了させることができます。これは、場所を選ばない働き方をするアドレスホッパーにとって、まさに必須のツールと言えるでしょう。

Q. 仕事はどうやって探す?

アドレスホッパーになるためには、場所を選ばないリモートワークの仕事が不可欠です。そのような仕事を探すには、以下のような方法があります。

  • リモートワーク専門の求人サイト・転職エージェント:
    「リモートOK」「フルリモート」といった条件で求人を絞り込んで探せるサイトが増えています。専門のエージェントに相談すれば、自分のスキルに合ったリモート求人を紹介してもらえます。
  • クラウドソーシングサイト:
    「ランサーズ」や「クラウドワークス」といったサイトには、ライティング、デザイン、プログラミングなど、単発から継続まで様々なリモート案件が掲載されています。まずは副業から実績を積むのも良いでしょう。
  • 自身のスキルや人脈を活用する:
    これまでのキャリアで培った専門スキルや人脈を活かして、フリーランスとして独立する道です。元いた会社から業務委託で仕事をもらったり、知人から紹介を受けたりするケースも多いです。
  • SNSやブログでの情報発信:
    自分のスキルや実績、活動内容をSNS(X, Instagramなど)やブログで発信し続けることで、それを見た企業や個人から仕事の依頼が舞い込むこともあります。セルフブランディングが重要になります。

いきなり仕事を辞めてアドレスホッパーになるのではなく、まずは現在の会社でリモートワークが可能か交渉してみる、あるいは副業でリモートの仕事を始めてみて、安定した収入源を確保してから移行するのが、最もリスクの少ない進め方です。