アパートメントホテルとは?ホテルとの違いやメリットデメリットを解説

アパートメントホテルとは?、ホテルとの違いやメリットデメリットを解説

「アパートメントホテル」という言葉を耳にする機会が増えていませんか。旅行の計画を立てる際、宿泊先の選択肢として目にするものの、一般的なホテルと何が違うのか、具体的にどのような施設なのか、よくわからないという方も多いかもしれません。特に、家族旅行やグループでの旅行、あるいは出張やワーケーションでの長期滞在を考えている場合、アパートメントホテルは非常に魅力的な選択肢となり得ます。

この記事では、アパートメントホテルの基本的な定義から、一般的なホテルとの具体的な違い、メリット・デメリット、そしてどのような人におすすめなのかを徹底的に解説します。さらに、コンドミニアムや民泊といった類似施設との違いや、失敗しない選び方のポイント、具体的なホテルブランドまで、網羅的にご紹介します。

この記事を読み終える頃には、あなたはアパートメントホテルに関する深い知識を身につけ、ご自身の旅行スタイルや目的に最適な宿泊施設を選び出すことができるようになっているでしょう。「旅先で暮らすように過ごす」という新しい滞在体験は、あなたの旅をより豊かで思い出深いものに変えてくれるはずです。

アパートメントホテルとは

アパートメントホテルとは

アパートメントホテルとは、その名の通り「アパートメント(集合住宅)」と「ホテル」の機能を融合させた宿泊施設のことです。一般的なホテルが提供する宿泊サービスに加えて、中長期の滞在でも快適に生活できるような設備、特にキッチンや洗濯機、広々としたリビングスペースなどを備えているのが最大の特徴です。

法的には、旅館業法における「ホテル営業」「旅館営業」または「簡易宿所営業」の許可を得て運営されています。これにより、消防法や建築基準法、食品衛生法など、利用者の安全と衛生に関わる厳格な基準をクリアしているため、安心して滞在できます。この点は、個人が運営する施設が多い民泊との大きな違いの一つと言えるでしょう。

アパートメントホテルのコンセプトの根底にあるのは、「暮らすような旅」という価値観です。観光地を駆け足で巡る従来の旅行スタイルだけでなく、その土地に腰を据え、まるで住んでいるかのように日常を体験したいというニーズが高まっています。地元のスーパーマーケットで食材を買い込み、部屋のキッチンで料理を作ったり、リビングのソファでくつろいだりと、旅先にいながら自宅のようなリラックスした時間を過ごせるのが、アパートメントホテルの提供する大きな価値です。

この「暮らすような旅」というスタイルは、特に近年、多様化するライフスタイルと深く結びついています。例えば、リモートワークの普及によって可能になった「ワーケーション(ワーク+バケーション)」では、日中は快適な環境で仕事に集中し、業務後はその土地の魅力を満喫するという過ごし方が求められます。アパートメントホテルは、仕事用のデスクスペースと生活空間を両立しやすく、長期滞在でも食生活のバランスを取りやすいため、ワーケーションの拠点として最適です。

また、三世代での家族旅行や友人グループでの旅行など、大人数での滞在にもアパートメントホテルは力を発揮します。複数のホテルの部屋を予約する代わりに、広々とした一つの空間で全員が一緒に過ごせるため、コミュニケーションが深まり、一体感のある旅を楽しめます。リビングで団らんしたり、一緒にキッチンに立ったりする時間は、旅の特別な思い出となるでしょう。

具体的に、アパートメントホテルでの滞在がどのようなものか、架空の家族旅行を例に見てみましょう。
ある4人家族(夫婦と小学生の子供2人)が、地方都市へ3泊4日の旅行を計画しています。彼らは、観光だけでなく、その土地の雰囲気をゆっくり味わいたいと考え、アパートメントホテルを選びました。
ホテルに到着すると、そこは2LDKの間取りで、広々としたリビングダイニングと寝室が二つあります。チェックイン後、まずは近所のスーパーへ。地元の新鮮な野菜や魚介類、特産品などを買い込みます。子供たちは、見慣れない食材に興味津々です。
その日の夜は、みんなでキッチンに立ち、買ってきた食材で郷土料理に挑戦。外食では味わえない、手作りの温かい食事をダイニングテーブルで囲みます。食後は、リビングの大きなソファでゲームをしたり、テレビを見たりと、自宅と変わらないリラックスした時間を過ごしました。
日中は観光を楽しみ、汗をかいたり服を汚したりしても、部屋に備え付けの洗濯乾燥機を使えばすぐに洗濯できます。これにより、旅行の荷物を最小限に抑えることもできました。夜、子供たちが寝室で寝た後は、夫婦二人でリビングでお酒を飲みながら、その日の出来事を語り合います。
このように、アパートメントホテルは、単に「寝る場所」を提供するだけでなく、旅の中に「日常」と「団らん」という要素を取り入れ、滞在そのものを旅の目的に変える力を持っています。

もちろん、すべての旅行にアパートメントホテルが最適というわけではありません。ホテルならではの豪華な食事や手厚いサービスを求める旅もあります。しかし、「費用を抑えたい」「自炊がしたい」「大人数で気兼ねなく過ごしたい」「プライベートな空間を重視したい」といったニーズがある場合には、アパートメントホテルは非常に有力な選択肢となります。

次の章からは、一般的なホテルとの具体的な違いを7つのポイントに分けて、さらに詳しく掘り下げていきます。これらの違いを理解することで、あなたの次の旅がより一層充実したものになるはずです。

一般的なホテルとの7つの違い

アパートメントホテルと一般的なホテルは、どちらも「宿泊施設」という点では共通していますが、そのコンセプトや提供されるサービス、設備には明確な違いがあります。これらの違いを理解することが、自分の旅のスタイルに合った宿泊先を選ぶための第一歩です。ここでは、両者の違いを7つの重要なポイントに絞って詳しく解説します。

比較項目 アパートメントホテル 一般的なホテル
① 部屋の広さと設備 比較的広く、リビングと寝室が独立していることが多い。ソファやダイニングテーブルがある。 ワンルームタイプが主流で、コンパクトな設計。
② キッチンの有無 ほぼ全ての部屋に完備(調理器具・食器付き)。 基本的になし(ミニバーや湯沸かしポット程度)。
③ 洗濯機の有無 多くの部屋に洗濯乾燥機を完備。 共用ランドリーか有料サービスが一般的。
④ 料金体系 「1室あたり」の料金設定が多く、グループ利用で割安。 「1人あたり」の料金設定が多い。
⑤ スタッフの常駐とサービス フロント常駐時間が限定的、または無人の場合がある。セルフチェックインも多い。 24時間フロント対応が基本。コンシェルジュなどサービスが手厚い。
⑥ 清掃サービスの頻度 毎日の清掃はないのが一般的(週1〜2回程度)。 原則として毎日清掃が入る。
⑦ アメニティの充実度 初日分のみ提供、または必要な分をセルフで取る形式が多い。 毎日新しいものが補充される。種類も豊富。

① 部屋の広さと設備

最大の違いの一つが、部屋の広さと間取りです。
一般的なビジネスホテルやシティホテルでは、ベッドと小さなデスク、テレビが置かれたワンルームタイプの客室が主流です。広さは20㎡前後のことが多く、寝るための空間が中心となります。

一方、アパートメントホテルは「暮らす」ことを想定しているため、平均的な客室面積が40㎡以上と、格段に広く設計されていることがほとんどです。多くの場合、リビング・ダイニングスペースと寝室が独立した間取り(1LDKや2LDKなど)になっています。これにより、食事やくつろぎの空間と、就寝の空間を明確に分けることができます。

この空間的な余裕は、滞在の質に大きく影響します。例えば、グループ旅行で誰かが先に寝たい場合でも、リビングで他のメンバーが談笑を続けることができます。また、ワーケーションで利用する場合、リビングのダイニングテーブルを仕事スペースとして使い、寝室をプライベートな休息空間として区別することで、仕事とプライベートの切り替えがしやすくなります。

さらに、設備面でも大きな違いがあります。アパートメントホテルには、大型のソファやダイニングテーブルセットが備え付けられているのが一般的です。これにより、買ってきた食事を広げたり、家族全員で食卓を囲んだり、パソコン作業をしたりと、多様な過ごし方が可能になります。一般的なホテルでは、ベッドの上か小さな椅子で窮屈に食事をするしかない場面も多いですが、アパートメントホテルなら自宅のように快適な環境で過ごせます。

② キッチンの有無

アパートメントホテルの象徴とも言える設備がキッチンです。
一般的なホテルでは、安全・衛生上の理由から客室内に本格的な調理設備はありません。冷蔵庫(ミニバー)や電気ケトルが設置されている程度です。

対して、アパートメントホテルには、IHクッキングヒーターやシンク、電子レンジ、大きめの冷蔵庫が標準装備されています。さらに、鍋やフライパンといった調理器具、包丁やまな板、お皿やカトラリー(箸、フォーク、スプーンなど)まで、一通りのものが揃っているため、食材さえあればすぐに自炊を始められます。施設によっては、炊飯器やトースター、コーヒーメーカーなどが用意されていることもあります。

このキッチンの存在が、旅のスタイルを大きく変えます。外食続きによる出費を抑えられる経済的なメリットはもちろん、アレルギーがある方や小さなお子様連れで食事に配慮が必要な場合でも、安心して食事を用意できます。また、地元の市場で珍しい食材を見つけて料理に挑戦するなど、「食」を通じた文化体験という、新しい旅の楽しみ方も生まれます。

③ 洗濯機の有無

長期滞在において非常に重要になるのが洗濯です。
一般的なホテルでは、館内に共用のコインランドリーが設置されているか、有料のランドリーサービスを利用するのが基本です。コインランドリーは他の宿泊客と利用時間が重なる可能性があり、ランドリーサービスは料金が高額になりがちです。

一方、アパートメントホテルの多くは、客室内に洗濯乾燥機が完備されています。これにより、他人に気兼ねすることなく、好きなタイミングで洗濯から乾燥までを完結させることができます。特に、汗をかく夏場の旅行や、子供が服を汚しやすい家族旅行では、この設備の有無が快適さを大きく左右します。旅行の荷物を減らせるというメリットも見逃せません。数日分の着替えだけ持っていき、滞在中に洗濯することで、スーツケースを軽くできます。

④ 料金体系

料金体系も、両者で大きく異なる点です。
一般的なホテルは、「1人あたり(per person)」の料金設定が主流です。同じ部屋でも、宿泊人数が増えればその分料金が加算されていきます。

それに対し、アパートメントホテルは「1室あたり(per room)」の料金設定が一般的です。定員が4名の部屋であれば、2人で泊まっても4人で泊まっても、1室あたりの料金は基本的に変わりません(※施設やプランによっては追加料金が発生する場合もあります)。そのため、宿泊人数が多いほど一人あたりの料金は割安になり、家族や友人グループでの旅行において大きなコストメリットが生まれます。

さらに、アパートメントホテルは中長期滞在を歓迎しているため、「ウィークリープラン」や「マンスリープラン」といった長期滞在者向けの割引料金が設定されていることが多く、出張やワーケーションでの利用にも適しています。

⑤ スタッフの常駐とサービス

提供される人的サービスにも違いがあります。
一般的なホテルでは、24時間体制でフロントにスタッフが常駐しており、夜間のトラブル対応や急なリクエストにも応じてもらえます。また、レストランの予約代行や観光案内などを行うコンシェルジュサービス、荷物を部屋まで運んでくれるベルサービス、食事を部屋に届けてくれるルームサービスなど、手厚いサービスが充実しています。

一方、アパートメントホテルでは、フロントデスクの営業時間が限られている、あるいはそもそもフロントがなく、タブレット端末などによるセルフチェックイン・チェックアウト方式を採用している施設も少なくありません。人的サービスを合理化することで、リーズナブルな価格を実現しているのです。そのため、きめ細やかなおもてなしや、24時間いつでも対応してもらえる安心感を求める場合は、物足りなさを感じるかもしれません。しかし、これは「スタッフとの接触が少なく、プライバシーが保たれる」というメリットにも繋がります。

⑥ 清掃サービスの頻度

一般的なホテルでは、滞在中は毎日客室の清掃が行われ、ベッドメイキングやタオルの交換、ゴミの回収がなされます。

しかし、アパートメントホテルは「生活の場」という側面が強いため、毎日の清掃サービスは基本的にありません。多くの施設では、清掃は週に1〜2回程度、あるいはチェックアウト時のみと定められています。これにより、滞在中にスタッフが部屋に入ることがほとんどなく、プライベートな空間と時間を邪魔されずに過ごせます。もちろん、追加料金を支払うことで、追加の清掃を依頼できる場合もあります。

⑦ アメニティの充実度

アメニティの提供方法も異なります。
ホテルでは、歯ブラシやシャンプー、リンス、ボディソープ、カミソリといったアメニティが毎日新しいものに補充されます。

アパートメントホテルでは、提供方法が施設によって様々です。滞在日数分のアメニティが最初にまとめて置かれているケース、初日分のみ提供され、あとは自分で用意するケース、あるいはフロントや共用スペースに置かれたアメニティを必要な分だけ自分で持っていくセルフサービス形式などがあります。これは、不要なアメニティの提供を減らすという環境配慮の観点や、コスト削減の目的があります。そのため、普段から使い慣れたものを持参したい人にとっては合理的ですが、手ぶらで宿泊したい人にとっては不便に感じるかもしれません。

これらの7つの違いを総合すると、アパートメントホテルは「自由度とプライバシー、コストパフォーマンス」を重視し、一般的なホテルは「手厚いサービスと利便性」を重視していると言えるでしょう。どちらが良い・悪いではなく、旅の目的や個人の価値観によって最適な選択は変わります。

アパートメントホテルに泊まる4つのメリット

自宅のようにリラックスして過ごせる、自炊ができて食費を節約できる、大人数や長期滞在で宿泊費を抑えやすい、プライベートな空間で気兼ねなく過ごせる

アパートメントホテルの特徴を理解したところで、次にその具体的なメリットを4つのポイントに分けて詳しく見ていきましょう。これらのメリットを知ることで、アパートメントホテルがあなたの次の旅行をどれほど豊かにしてくれるか、より深くイメージできるはずです。

① 自宅のようにリラックスして過ごせる

アパートメントホテル最大の魅力は、「旅先の第二の家」とも言える、自宅さながらのくつろぎの空間を手に入れられることです。一般的なホテルが「非日常」を演出する空間であるのに対し、アパートメントホテルは旅先に「日常」の快適さをもたらしてくれます。

このリラックス感を生み出す要素は、主に3つあります。
第一に、「空間の広さと間取り」です。前述の通り、アパートメントホテルはリビングと寝室が分かれていることが多く、広々とした空間が確保されています。これにより、家族やグループで滞在していても、それぞれのパーソナルスペースを保ちやすくなります。例えば、子供が寝室で寝た後、大人はリビングのソファでゆっくりお酒を飲んだり、映画を観たりと、思い思いの時間を過ごせます。ワンルームのホテルでは、誰かが寝てしまうと部屋全体を暗くして静かに過ごさなければならず、窮屈さを感じることがありますが、アパートメントホテルならその心配はありません。

第二に、「家具・家電の充実」です。大きなソファ、ダイニングテーブル、設備の整ったキッチン、洗濯乾燥機といった、普段の生活で当たり前に使っているものが揃っていることで、精神的なストレスが大幅に軽減されます。観光で疲れて帰ってきたときに、ふかふかのソファに身を沈めて一息つく。買ってきたお惣菜やデザートをダイニングテーブルに広げて、ゆっくりと味わう。こうした何気ない行動が、旅の満足度を大きく向上させます。

第三に、「自由な時間の使い方」です。ホテルのように朝食の時間に縛られることなく、好きな時間に起きて、好きなものを食べることができます。夜も門限などを気にする必要がなく、自分のペースで一日を設計できます。この自由度の高さが、心からのリフレッシュに繋がります。まるでその街の住人になったかのような感覚で、気ままに過ごす時間は、何物にも代えがたい贅沢と言えるでしょう。

② 自炊ができて食費を節約できる

旅の出費の中で大きな割合を占めるのが食費です。特に、数日間にわたる滞在や大人数での旅行では、毎食外食となるとかなりの金額になります。アパートメントホテルは、この食費問題を解決する強力なソリューションとなります。

客室に完備されたキッチンを使えば、自由に自炊ができます。朝食はパンとコーヒーで簡単に済ませたり、昼食は観光の合間に外で楽しみ、夕食は地元のスーパーで買った食材で手料理を振る舞ったりと、食のプランを柔軟に組み立てられます。これにより、外食費を大幅に節約することが可能です。浮いた予算を、少し豪華なレストランでの食事や、お土産代、アクティビティ費用に回すこともできます。

経済的なメリットだけではありません。自炊は、旅をより深く楽しむための素晴らしい体験にもなります。その土地ならではの旬の食材や、地元の人しか知らないような調味料を探しにスーパーや市場へ足を運ぶこと自体が、一つのアクティビティになります。現地の食文化に直接触れ、自分たちの手で再現してみるという経験は、レストランで食べるだけでは得られない特別な思い出となるでしょう。

また、健康面でのメリットも大きいと言えます。外食が続くと、どうしても栄養が偏ったり、味付けの濃いものが多くなったりしがちです。特に、小さなお子様連れの家族や、食事制限がある方にとっては、安心して食べられるものを自分たちで用意できる環境は非常に重要です。離乳食の準備や、アレルギーに対応した食事作りも、自宅と同じように行えます。旅先でも健康的な食生活を維持できる安心感は、アパートメントホテルならではの大きな利点です。

③ 大人数や長期滞在で宿泊費を抑えやすい

アパートメントホテルは、コストパフォーマンスの面で非常に優れています。特に、その恩恵を大きく受けられるのが、大人数での旅行や長期滞在です。

その理由は、アパートメントホテルの多くが「1室あたり」の料金体系を採用しているからです。例えば、定員6名の3LDKの部屋を予約した場合、3人で泊まっても6人で泊まっても、支払う宿泊料金は同額です。もし同じ人数で一般的なホテルに泊まるとすれば、2〜3部屋を予約する必要があり、総額はかなり高くなります。友人グループや二世代、三世代での家族旅行など、複数の世帯が一緒に旅行する場合、アパートメントホテルを選ぶことで宿泊費を劇的に抑えることができます

さらに、一つの広い空間を共有することで、別々の部屋に泊まるのとは違う一体感が生まれます。夜はリビングに集まって語り合ったり、ゲームを楽しんだりと、コミュニケーションが活発になり、旅の思い出がより一層深まるでしょう。

長期滞在においても、そのコストメリットは際立ちます。多くのアパートメントホテルでは、1週間以上の滞在を対象とした「ウィークリー割引」や、1ヶ月以上の滞在を対象とした「マンスリー割引」といった長期滞在プランが用意されています。通常の1泊あたりの料金よりも大幅に割安になるため、出張やワーケーション、あるいは一時的な住まいとして利用する場合に最適です。ビジネスホテルに長期連泊するのに比べて、広い生活空間と自炊・洗濯環境が手に入るため、生活の質(QOL)を高く保ちながらコストを削減できるという、一石二鳥の効果が期待できます。

④ プライベートな空間で気兼ねなく過ごせる

プライバシーの確保も、アパートメントホテルの大きなメリットです。一般的なホテルでは、毎日の清掃やベッドメイキングのために、滞在中であってもスタッフが部屋に出入りします。もちろん、これは快適さを保つためのサービスですが、中には「自分の空間に他人に入ってほしくない」「日中は部屋を散らかしたままにしておきたい」と感じる人もいるでしょう。

アパートメントホテルでは、定期清掃の頻度が週に1〜2回程度と少ないため、滞在中にスタッフが部屋に入ってくることはほとんどありません。これにより、完全にプライベートな空間として客室を利用できます。朝寝坊をしても、日中部屋でくつろいでいても、誰にも邪魔されることはありません。

この特徴は、特に小さな子供連れの家族にとって大きな安心材料となります。子供が部屋の中を走り回ったり、少し大きな声を出してしまったりしても、一般的なホテルほど周囲の目を気にする必要がありません。また、夜泣きが心配な場合も、隣室への音漏れを過度に気にしなくて済むような、防音性に配慮した設計の施設も増えています。親も子も、精神的な負担が少なく、リラックスして過ごすことができるのです。

また、フロントスタッフとの接触機会が少ないことも、プライバシーを重視する人にとってはメリットとなります。チェックイン・アウトが非対面のセルフサービスである施設も多く、他人とのコミュニケーションを最小限に抑えたい場合に適しています。誰にも干渉されず、自分たちだけの時間を心ゆくまで満喫したいというニーズに、アパートメントホテルは完璧に応えてくれます。

知っておきたいアパートメントホテルの3つのデメリット

食事の提供やルームサービスがない、フロントが24時間対応ではない場合がある、セキュリティ面に注意が必要な場合がある

アパートメントホテルには多くのメリットがありますが、快適な滞在を実現するためには、そのデメリットや注意点も事前に理解しておくことが不可欠です。ここでは、予約してから「思っていたのと違った」と後悔しないために、知っておきたい3つのデメリットとその対策について解説します。

① 食事の提供やルームサービスがない

アパートメントホテルの最大のメリットである「キッチン完備」は、裏を返せば「食事の提供サービスがない」ことの現れでもあります。多くの施設では、館内にレストランやカフェ、バーといった料飲施設が併設されていません。したがって、食事は基本的に自炊をするか、外食、あるいはテイクアウトやデリバリーを利用することになります。

【デメリットの詳細】

  • ホテルの朝食が楽しめない: 旅行の楽しみの一つとして、ホテルのビュッフェスタイルの豪華な朝食を挙げ-る人も少なくありません。こうした体験を期待している場合、アパートメントホテルでは物足りなさを感じるでしょう。朝食を用意する手間もかかります。
  • ルームサービスが利用できない: 夜中に小腹が空いたときや、疲れて部屋から一歩も出たくないときに便利なルームサービスも、アパートメントホテルにはありません。食事や飲み物が欲しくなったら、自分で用意するか、外に買いに行く必要があります。
  • 手軽さに欠ける: 毎食自炊をするのは、時間も手間もかかります。観光で目一杯時間を使いたい場合、買い出しや調理、後片付けの時間が負担に感じられる可能性があります。

【対策】
このデメリットを乗り越える鍵は「事前のリサーチと計画」です。

  • 周辺の飲食店を調べる: 滞在するアパートメントホテルの周辺に、どのようなレストランやカフェ、スーパーマーケット、コンビニエンスストアがあるかを、予約前に地図アプリなどで確認しておきましょう。朝食を提供しているカフェや、テイクアウトに対応しているお店を把握しておくと便利です。
  • デリバリーサービスを活用する: 現在地周辺のレストランから料理を届けてもらえるフードデリバリーサービスは、アパートメントホテル滞在の強い味方です。アプリを事前にダウンロードしておけば、部屋にいながら様々な食事を楽しめます。
  • 食事プランを柔軟に考える: 「毎食自炊」と気負わず、「朝はシリアルやパンで簡単に」「昼は外食」「夜はスーパーのお惣菜やデリバリーを活用しつつ、時々自炊」といったように、柔軟な食事プランを立てるのがおすすめです。無理のない範囲で自炊を取り入れることで、節約と手間のバランスを取ることができます。

② フロントが24時間対応ではない場合がある

コストパフォーマンスを追求するアパートメントホテルでは、人的サービスを合理化しているケースが多く見られます。その一つが、フロントの対応時間です。一般的なホテルのように24時間スタッフが常駐しているとは限らず、営業時間が日中のみ(例:9時〜21時)に限定されていたり、週末や祝日は無人になったりする施設も珍しくありません。

【デメリットの詳細】

  • 深夜・早朝のトラブルに対応できない: 例えば、深夜に鍵を紛失したり、設備に不具合が生じたりした場合、すぐに対応してもらえない可能性があります。緊急連絡先は用意されていますが、スタッフが駆けつけるまでに時間がかかることも考えられます。
  • チェックイン時間に制約がある: フライトの遅延などで、フロントの営業時間外に到着した場合、チェックインができなくなるリスクがあります。セルフチェックインシステムがあっても、操作方法がわからずに困ってしまう可能性もゼロではありません。
  • 手厚いサポートは期待できない: タクシーの手配やレストランの予約代行、観光情報の提供といった、ホテルならではのコンシェルジュ的なサービスは、基本的に期待できません。荷物の一次預かりなども、対応時間が限られている場合があります。

【対策】
安心して滞在するためには、「予約時の確認」が何よりも重要です。

  • フロントの対応時間を必ず確認する: 予約サイトの施設情報や公式サイトで、フロントデスクの営業時間を必ず確認しましょう。特に、到着が夜遅くになったり、出発が朝早くなったりする可能性がある場合は、その時間帯に対応可能かどうかを事前に問い合わせておくと安心です。
  • チェックイン・アウトの方法を把握する: 対面での手続きが必要か、タブレットなどによるセルフサービスか、事前に送られてくる暗証番号で入室するのかなど、チェックイン・アウトの具体的な方法をあらかじめ理解しておきましょう。セルフチェックインの場合は、操作マニュアルなどがメールで送られてくることが多いので、見落とさないように注意が必要です。
  • 緊急連絡先を控えておく: 万が一の事態に備え、施設の緊急連絡先(電話番号)をすぐに確認できるように、スマートフォンなどにメモしておきましょう。

③ セキュリティ面に注意が必要な場合がある

スタッフの常駐時間が限られていることは、セキュリティ面での懸念に繋がる可能性があります。24時間体制で人の目がある一般的なホテルと比較すると、不審者の侵入リスクなどが相対的に高いと感じる人もいるかもしれません。

【デメリットの詳細】

  • 人的な監視が手薄: 夜間にフロントが無人になる場合、エントランスや共用部分の監視は、監視カメラなどの機械警備に頼ることになります。人的な抑止力が働きにくい側面は否定できません。
  • 施設のセキュリティレベルに差がある: アパートメントホテルと一口に言っても、そのセキュリティ対策は様々です。エントランスがオートロックになっているか、エレベーターの利用にカードキーが必要か、客室の鍵は複製が困難なカードキーかなど、施設によってレベルが異なります。比較的新しい施設はセキュリティが強固な傾向にありますが、古い建物をリノベーションした施設などでは、注意が必要な場合もあります。

【対策】
安全な滞在のためには、「自己防衛意識と施設の選定」が鍵となります。

  • セキュリティ設備を確認する: 予約を検討する際には、施設のセキュリティに関する情報を注意深くチェックしましょう。公式サイトや予約サイトの説明文に「オートロック完備」「24時間監視カメラ作動中」「カードキーシステム」といった記述があるかを確認します。
  • 口コミを参考にする: 実際に宿泊した人の口コミは、セキュリティの実態を知るための貴重な情報源です。「夜間は人通りが少なく少し不安だった」「オートロックで安心できた」など、具体的な感想を参考にしましょう。
  • 基本的な防犯対策を徹底する: どの宿泊施設に泊まる場合でも共通ですが、在室中は必ずドアチェーンや補助錠をかける、短時間の外出でも必ず施錠する、貴重品はセーフティボックスに入れるか肌身離さず持ち歩くなど、基本的な防犯対策を徹底することが重要です。

これらのデメリットは、事前に対策を講じることで、その多くがカバーできます。アパートメントホテルの特性を正しく理解し、賢く利用することで、メリットを最大限に享受しましょう。

アパートメントホテルはこんな人におすすめ

ここまで解説してきたメリットとデメリットを踏まえると、アパートメントホテルが特にどのような人々のニーズに応える宿泊施設なのかが明確になります。ここでは、具体的な人物像を挙げながら、アパートメントホテルが最適な4つのケースをご紹介します。ご自身の旅行計画と照らし合わせながら、読んでみてください。

旅行費用を節約したい人

「できるだけコストを抑えて、賢く旅行を楽しみたい」と考えている人にとって、アパートメントホテルは非常に強力な味方です。節約できるポイントは大きく分けて「宿泊費」と「食費」の二つです。

まず「宿泊費」ですが、特に3人以上のグループや家族で旅行する場合、その効果は絶大です。一般的なホテルで複数の部屋を予約するのに比べ、1室料金のアパートメントホテルなら総額を大幅に削減できます。例えば、学生時代の友人たちとの卒業旅行や、サークル仲間との旅行など、予算が限られている中で、みんなで一緒に泊まれる場所を探している場合に最適です。浮いたお金で、少しリッチなディナーを楽しんだり、特別なアクティビティに参加したりと、旅の体験価値をさらに高めることができます。

次に「食費」です。キッチンで自炊ができるため、毎食外食する必要がなくなり、食費をコントロールしやすくなります。朝食と夕食は自炊にし、昼食だけ観光地で名物を食べる、といったプランを立てれば、かなりの節約に繋がります。特に、滞在期間が長くなるほど、この自炊による節約効果は大きくなります。節約志向のカップルや、倹約しながらも豊かな旅をしたいと考えている人々にとって、アパートメントホテルは合理的な選択肢と言えるでしょう。

出張やワーケーションで長期滞在する人

リモートワークの普及に伴い、「ワーケーション」という新しい働き方・休み方が注目されています。また、数週間から数ヶ月にわたる長期出張も珍しくありません。このような長期滞在者にとって、アパートメントホテルは理想的な環境を提供します。

ビジネスホテルでの長期滞在は、部屋が狭く、常に外食かコンビニ弁当になりがちで、心身ともに疲弊してしまうことがあります。一方、アパートメントホテルなら、広々としたリビングスペースと寝室、そして自炊可能なキッチンが揃っています。これにより、仕事をする空間と休息する空間を分け、生活にメリハリをつけることができます。ダイニングテーブルで集中して仕事に取り組んだ後は、ソファでリラックスしたり、自分で作った健康的な食事で英気を養ったりと、QOL(生活の質)を高く保ちながら滞在できます。

室内に洗濯乾燥機がある点も、長期滞在者にとっては非常に重要です。こまめに洗濯ができるため、多くの着替えを持っていく必要がなく、荷物をコンパクトにできます。

さらに、多くの施設で提供されている長期滞在者向けの割引プラン(ウィークリー・マンスリー料金)を利用すれば、コストを大幅に抑えることも可能です。生産性を維持しつつ、滞在コストも削減できるアパートメントホテルは、まさに現代のビジネスパーソンやデジタルノマドにとって最適な拠点と言えるでしょう。

家族や友人グループで旅行する人

家族旅行、特に小さな子供連れや三世代での旅行、あるいは気の置けない友人グループでの旅行において、アパートメントホテルはその真価を最大限に発揮します。

最大の魅力は、「一つの空間でみんなが一緒に過ごせる」ことです。ホテルで部屋が分かれてしまうと、就寝前や朝の準備など、どうしても行動がバラバラになりがちです。しかし、アパートメントホテルなら、広々としたリビングが共有スペースとなり、自然とコミュニケーションが生まれます。一緒に料理をしたり、テレビを見ながら談笑したり、ゲームで盛り上がったりと、全員で同じ時間を共有する経験は、旅の何よりの思い出になります。

小さな子供連れの家族にとっては、まさに至れり尽くせりの環境です。周りの宿泊客に気兼ねすることなく、子供をのびのびと過ごさせることができます。キッチンがあれば、子供の年齢に合わせた離乳食や食事の準備も簡単です。また、子供が寝た後に、夫婦でゆっくりと過ごす時間も確保できます。

友人グループでの利用も同様です。誰かの部屋に集まるのに気を使う必要もなく、まるで自分たちの別荘のように自由に過ごせます。修学旅行のようなワクワク感を、大人になってもう一度味わうことができるでしょう。宿泊費を人数で割れば一人当たりの負担も軽くなるため、気軽に集まりやすいのも嬉しいポイントです。

「暮らすような旅」を体験したい人

「観光名所を巡るだけの旅はもう卒業。その土地の日常に溶け込み、まるで住んでいるかのように過ごしたい」。そんな新しい旅の価値観を持つ人にとって、アパートメントホテルは最高のパートナーです。

アパートメントホテルでの滞在は、旅のプロセスそのものを楽しむ体験です。朝、近所のパン屋さんに焼きたてのパンを買いに行く。昼は、地元の人が利用するスーパーマーケットで、見たことのない野菜やご当地グルメの食材を探す。夜は、キッチンでその日の収穫を使って料理をし、現地のテレビ番組を見ながら食事をする。こうした一連の行動は、旅行者という「お客様」の立場から一歩踏み出し、その街の「生活者」の視点を得ることを可能にします。

ガイドブックに載っている有名店だけでなく、自分たちの足で見つけた隠れ家的なお店を発見する喜びもあります。観光の合間に一度部屋に戻って休憩したり、疲れたら無理せず部屋でゆっくり過ごしたりと、スケジュールに縛られない自由な旅が実現します。

この「暮らすような旅」は、表面的な観光では決して得られない、その土地の空気感や人々の息遣いを肌で感じる貴重な機会を与えてくれます。旅の概念を「イベント」から「ライフスタイル」へと変えたいと願う人に、アパートメントホテルは心からおすすめできる選択肢です。

アパートメントホテルと似ている宿泊施設との違い

アパートメントホテルを検討する際、よく似た形態の宿泊施設として「コンドミニアム」「サービスアパートメント」「民泊」といった言葉を目にすることがあります。これらは一見似ていますが、それぞれに特徴や法的な位置づけ、ターゲットとする利用者が異なります。これらの違いを正確に理解することで、より自分の目的に合った施設を選ぶことができます。

施設種別 主な特徴 法律上の位置づけ サービスレベル 主なターゲット層
アパートメントホテル キッチン・洗濯機等完備、ホテルに近いサービス(一部)、短期〜中期滞在向け 旅館業法(ホテル・旅館/簡易宿所) ホテルとサービスアパートメントの中間 家族、グループ、長期出張者
コンドミニアム リゾート地に多い、家具・家電付きの貸別荘スタイル、分譲マンションの一室を貸し出す形態も 旅館業法(ホテル・旅館/簡易宿所)など 施設により様々、セルフサービスが基本 家族、グループ(リゾート目的)
サービスアパートメント 長期滞在者向け、家具・家電付き、清掃やリネン交換などホテル並みのサービス 賃貸借契約が多い(一部旅館業法) ホテルに近い、充実したサービス 企業の駐在員、ビジネスエグゼクティブ
民泊 個人宅の空き部屋などを貸し出す、ユニークな体験が可能、品質にばらつき 住宅宿泊事業法(民泊新法) ホスト(運営者)により大きく異なる 多様(価格重視の若者、交流を求める旅行者など)

コンドミニアム

コンドミニアムは、もともと「分譲マンション」を意味する言葉です。宿泊施設の文脈で使われる場合、家具や家電、キッチンなどが備え付けられたマンションタイプのリゾート施設を指すことが一般的です。所有者が利用しない期間を、旅行者向けに貸し出しているケースも多くあります。

【アパートメントホテルとの違い】

  • 立地: アパートメントホテルが都市部を中心に展開しているのに対し、コンドミニアムはハワイや沖縄、スキーリゾートといった国内外のリゾート地に多いのが特徴です。そのため、バカンス目的での利用が主となります。
  • 規模と設備: 比較的規模の大きな施設が多く、プールやフィットネスジム、共用のバーベキュースペースなどが併設されていることもあります。部屋の間取りも、大人数で利用できる広々としたタイプが中心です。貸別荘に近い感覚で利用できる施設と言えるでしょう。
  • サービス: サービス内容は施設によって様々ですが、基本的にはセルフサービスが中心で、ホテルのような手厚いサービスは少ない傾向にあります。

簡単に言えば、「都市型で短期〜中期滞在向けがアパートメントホテル、リゾート型でバカンス向けがコンドミニアム」と大別できます。

サービスアパートメント

サービスアパートメントは、その名の通り「サービス」が充実した「アパートメント(賃貸住宅)」です。主に、企業の駐在員やプロジェクト単位で赴任するビジネスパーソンなど、数ヶ月から年単位の長期滞在者をメインターゲットとしています。

【アパートメントホテルとの違い】

  • 契約形態: アパートメントホテルが旅館業法に基づき、1泊単位で宿泊契約を結ぶのに対し、サービスアパートメントは不動産の賃貸借契約をベースにすることが多いです。そのため、入居時には審査や保証金が必要になる場合があります。(ただし、近年は短期利用が可能な施設も増えています)
  • サービスレベル: 「サービス」と名が付くだけあり、ホテル並みか、それ以上に手厚いサービスが提供されるのが特徴です。定期的なルームクリーニングやリネン交換はもちろん、24時間対応のフロントやコンシェルジュサービス、フィットネスジムや居住者専用ラウンジ、朝食サービスなどを備えている施設も少なくありません。
  • 料金: 充実したサービスを反映し、一般的にアパートメントホテルよりも料金は高めに設定されています。

アパートメントホテルが「ホテルとアパートの中間」だとすれば、サービスアパートメントは「賃貸住宅にホテルの利便性をプラスした施設」と言えます。ビジネスでの長期滞在で、高いレベルの快適性とサービスを求める場合に最適な選択肢です。

民泊

民泊は、「住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)」などに基づいて、個人の住宅の空き部屋や空き家、マンションの一室などを宿泊施設として旅行者に貸し出す形態です。

【アパートメントホテルとの違い】

  • 運営主体と品質: アパートメントホテルがホテル運営会社などの法人によって運営され、一定の品質基準が保たれているのに対し、民泊は個人がホスト(運営者)となっているケースがほとんどです。そのため、部屋の清潔さや設備の質、ホストの対応などが千差万別で、品質にばらつきが大きいのが特徴です。素晴らしい体験ができる施設もあれば、写真と実物が大きく異なり、がっかりするケースも存在します。
  • 体験価値: 民泊の魅力は、ホストとの交流や、ホテルやアパートメントホテルにはないユニークな家屋(古民家、デザイン性の高い家など)に泊まれるといった、「体験」そのものにあると言えます。ホストにおすすめのローカル情報を教えてもらうなど、人との触れ合いを求める旅行者に向いています。
  • 法規制: 民泊新法では、営業日数に年間180日以内という上限が定められています。一方、旅館業法で運営されるアパートメントホテルには、このような営業日数の制限はありません。

安定した品質と、ホテルライクな安心感を求めるならアパートメントホテル、価格の安さやホストとの交流、ユニークな体験を重視するなら民泊、というように、求めるものによって選択が分かれるでしょう。

失敗しないアパートメントホテルの選び方

宿泊人数と部屋の広さを確認する、キッチン設備や調理器具の有無をチェックする、スタッフの常駐時間やサポート体制を確認する

アパートメントホテルでの滞在を最高のものにするためには、施設選びが非常に重要です。せっかく予約したのに、「思ったより部屋が狭かった」「自炊しようと思ったら調理器具が足りなかった」といった事態は避けたいものです。ここでは、予約前に必ずチェックしておきたい、失敗しないための3つのポイントを解説します。

宿泊人数と部屋の広さを確認する

アパートメントホテルの魅力は広々とした空間ですが、その広さや間取りは施設によって様々です。快適な滞在を確保するためには、宿泊人数と部屋のスペックを詳細に確認することが不可欠です。

【チェックポイント】

  • 定員とベッドの構成: 「最大宿泊人数6名」と記載されていても、その内訳が「ダブルベッド2台+ソファベッド1台」といったケースもあります。友人グループで、全員が個別のベッドで寝たいと考えている場合、これでは対応できません。ベッドの数、種類(シングル、ダブル、二段ベッドなど)、そしてソファベッドや布団の有無まで、しっかりと確認しましょう。特にソファベッドは、寝心地が通常のベッドに劣る場合があるため注意が必要です。
  • 部屋の平米数(㎡): 人数だけでなく、実際の広さを示す平米数(㎡)も重要な指標です。同じ定員でも、平米数が大きい方が荷物を広げるスペースや、くつろぐスペースに余裕が生まれます。特に、長期滞在や小さな子供連れの場合は、余裕のある広さの部屋を選ぶことをおすすめします。
  • 間取り図の確認: もし予約サイトや公式サイトに間取り図が掲載されていれば、必ず確認しましょう。リビングと寝室の位置関係や、バスルーム・トイレの数(大人数で滞在する場合、トイレが2つあると非常に便利です)などを視覚的に把握できます。写真だけではわからない部屋の全体像を掴むために、間取り図は非常に有効な情報です。プライバシーを重視する場合、リビングを通らないと他の寝室に行けない間取りよりも、各寝室が独立している方が望ましいでしょう。

キッチン設備や調理器具の有無をチェックする

「キッチン付き」という言葉だけで判断するのは危険です。自炊を前提にアパートメントホテルを選ぶなら、キッチンのスペックを詳細にチェックすることが、滞在の満足度を大きく左右します。

【チェックポイント】

  • コンロの種類と口数: コンロは火力の強いガスコンロか、手入れのしやすいIHクッキングヒーターか。また、口数は1口か2口以上か。簡単な調理しかしないなら1口でも十分ですが、複数の料理を同時に作りたい場合は2口以上ないと不便です。
  • 調理家電のラインナップ: 電子レンジと冷蔵庫はほぼ標準装備ですが、炊飯器、電気ケトル、トースター、コーヒーメーカーといった家電の有無は施設によって異なります。特に、お米を炊きたい場合は炊飯器の有無は必須の確認項目です。冷蔵庫も、ミニバーサイズなのか、家庭用の大きなサイズなのかで、買い置きできる食材の量が変わってきます。
  • 調理器具と食器の詳細: 鍋やフライパンはどのようなサイズが何個あるか。包丁やまな板、お玉、フライ返しといった基本的な調理ツールは揃っているか。お皿やグラス、箸やフォークといったカトラリーは、宿泊人数分以上用意されているか。公式サイトの備品リストや、宿泊者の写真付きレビューなどが参考になります。もし本格的な料理をしたい場合は、ザルやボウル、計量カップといった細かな器具の有無も確認できるとより安心です。
  • 調味料の有無: 衛生管理の観点から、塩、砂糖、油といった基本的な調味料は用意されていないことがほとんどです。必要なものは自分で持参するか、現地で購入するつもりで計画を立てましょう。

スタッフの常駐時間やサポート体制を確認する

サービスの合理化が特徴のアパートメントホテルだからこそ、サポート体制の事前確認は重要です。万が一のトラブルに備え、安心して滞在できる環境かどうかを見極めましょう。

【チェックポイント】

  • フロントの営業時間: まず、フロントデスクにスタッフが常駐しているのか、常駐している場合は何時から何時までなのかを正確に把握します。特に、利用する飛行機や新幹線の到着・出発時刻が、フロントの営業時間と合っているかは必ず確認してください。時間外の対応(荷物預かりなど)が可能かどうかも、必要であれば事前に問い合わせておきましょう。
  • チェックイン・アウトの方法: チェックインは対面式か、タブレットでのセルフ式か、暗証番号入力式か。セルフチェックインの場合、操作方法や必要な情報(予約番号など)はどのように通知されるのかを把握しておきます。鍵の受け渡しや返却方法も同様です。スムーズな入退室のために、これらの手順は旅行前に必ず確認・準備しておくことをおすすめします。
  • 緊急時の連絡手段: フロントの営業時間外に、設備の故障や急病といった緊急事態が発生した場合の連絡先と対応フローを確認しておくことは、心の安心に繋がります。24時間対応の緊急連絡先(電話番号)が明示されているか、警備会社と提携しているか、といった点もチェックポイントです。
  • 口コミでの評判: スタッフの対応品質や、トラブル時の対応の迅速さなどは、公式サイトの情報だけではわかりにくい部分です。実際に宿泊した人の口コミサイトやレビューを参考に、「スタッフが親切だった」「トラブルにすぐ対応してくれた」といった生の声を確認するのも非常に有効な方法です。

これらの3つのポイントを丁寧に確認することで、滞在中の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを大幅に減らし、快適で満足度の高いアパートメントホテル体験を実現できるでしょう。

おすすめのアパートメントホテルブランド5選

日本国内でも、アパートメントホテルの人気は高まり、様々な特徴を持つブランドが次々と誕生しています。ここでは、数あるブランドの中から、特に知名度が高く、利用者からの評価も高い5つのブランドを厳選してご紹介します。それぞれのコンセプトや特徴を比較し、あなたの旅のスタイルに合ったブランドを見つけてください。

注意:各ブランドのサービス内容や設備は、施設(ホテル)によって異なる場合があります。宿泊を検討する際は、必ず各施設の公式サイトで最新かつ詳細な情報をご確認ください。

ブランド名 運営会社 主な特徴 特にこんな人におすすめ
① MIMARU 株式会社コスモスホテルマネジメント 全室キッチン・ダイニングスペース付き。4名以上で泊まれる広い客室。ポケモンルームなどユニークな部屋も。 家族連れ、国内外の友人グループ
② MONday Apart 株式会社JHAT デザイン性の高い空間と最新の家電。都市部へのアクセス良好。非対面でのチェックイン・アウト。 デザインやトレンドに敏感なカップルや友人グループ
③ 東急ステイ 東急リゾーツ&ステイ株式会社 全客室に洗濯乾燥機・電子レンジを完備。ビジネスとレジャーの両シーンに対応する利便性の高さ。 長期出張のビジネスパーソン、効率的な旅を求める人
④ シタディーン アスコット社 (The Ascott Limited) 世界展開するサービスレジデンス大手。フィットネスジムなど付帯施設が充実。グローバルスタンダードなサービス。 外国人旅行者、長期滞在のビジネスエグゼクティブ
⑤ KOKO HOTEL 株式会社からくさホテルズ 「Premier」ブランドを中心にキッチン付き客室を展開。機能的かつスタイリッシュなデザイン。 一人旅からグループまで、スマートな滞在を求める幅広い層

① MIMARU

「MIMARU」は、大和ハウスグループの株式会社コスモスホテルマネジメントが運営する、都市型アパートメントホテルブランドです。東京、京都、大阪といった日本の主要観光都市を中心に展開しています。

最大の特徴は、「みんなで泊まる」ことを徹底的に追求した客室設計です。全室が約40㎡以上の広々とした空間で、キッチンとリビング・ダイニングスペースを完備。定員も4名以上が基本となっており、中には最大10名まで宿泊可能なコネクティングルームもあります。

特にファミリー層やインバウンドのグループ客から絶大な支持を得ている理由の一つが、ユニークなコンセプトルームの存在です。例えば、壁一面に描かれたモンスターボールや巨大なカビゴンのぬいぐるみがある「ポケモンルーム」は、子供から大人まで楽しめる特別な空間として非常に人気があります。(参照:MIMARU公式サイト)

二段ベッドやロフトベッドを備えた部屋も多く、子供たちがワクワクするような工夫が随所に見られます。家族や友人と一緒に料理を作ったり、ダイニングテーブルでボードゲームを楽しんだり、まさに「みんなで過ごす時間」を大切にしたいというニーズに完璧に応えるブランドです。

② MONday Apart

「MONday Apart」は、株式会社JHATが展開するアパートメントホテルブランドです。東京や京都を中心に、交通の便が良いロケーションに位置しています。

ブランドのコンセプトは「自分の時間を大切にする旅へ」。そのコンセプトを体現するのが、洗練されたデザイン性の高い空間と、最新の高性能な家電です。客室には、デザイン性の高いトースターで知られるバルミューダ製品や、高品質なプロジェクターなどが設置されていることもあり、日常から少しアップグレードした、上質な滞在を体験できます。

多くの施設で、タブレット端末による非対面でのスマートチェックイン・チェックアウトシステムを導入しており、スタッフとの接触を最小限に抑えたいという現代のニーズにも対応しています。(参照:MONday Apart公式サイト)

おしゃれな空間で、まるでセカンドハウスのように気ままな時間を過ごしたいカップルや、トレンドに敏感な友人グループにおすすめです。「ただ泊まるだけでなく、滞在する空間そのものを楽しみたい」という方にぴったりのブランドと言えるでしょう。

③ 東急ステイ

「東急ステイ」は、東急不動産ホールディングスグループの東急リゾーツ&ステイ株式会社が運営するホテルブランドです。ビジネス街や都心駅近くを中心に、全国に多くの施設を展開しています。

東急ステイの最大の強みは、「出張・旅行・転勤・研修などの長期滞在を快適にサポートする」という明確なコンセプトです。その象徴的な設備が、全客室に標準装備された「洗濯乾燥機」と「電子レンジ」です。これにより、滞在者はいつでも洗濯ができ、テイクアウトした食事を温めるなど、ビジネスホテルよりも格段に快適な生活を送れます。(参照:東急ステイ公式サイト)

客室タイプによっては、簡単な調理が可能なミニキッチンを備えた部屋や、本格的なキッチンを備えたレジデンシャルタイプ、複数名で泊まれるツインタイプの部屋も用意されており、ビジネスでの長期滞在から観光での利用まで、幅広いニーズに対応できます。

「ホテルに暮らす」という利便性と快適性を高いレベルで両立させており、特に効率性と機能性を重視するビジネスパーソンから長年にわたり高い評価を得ている、信頼のブランドです。

④ シタディーン

「シタディーン」は、シンガポールに本社を置く世界最大級のサービスレジデンス(サービス付きアパートメント)のオーナーオペレーターであるアスコット社が展開するブランドの一つです。世界中の主要都市に展開しており、日本でも東京、京都、大阪などに施設があります。

シタディーンは、アパートメントホテルの自由度と、ホテルのサービスを融合させた「アパートホテル」というコンセプトを掲げています。客室にはキッチンやリビングスペースが備わっているのはもちろんのこと、多くの施設でフィットネスジム、ビジネスセンター、朝食ラウンジといった充実した共用施設を利用できます。

グローバルに展開するブランドならではの、洗練されたサービスと国際的な雰囲気が特徴です。フロントでは多言語対応が可能なスタッフが常駐していることも多く、海外からの旅行者やビジネスエグゼクティブも安心して滞在できます。(参照:ディスカバーアスコット公式サイト)

ホテルライクなサービスや付帯施設も享受しながら、プライベートな空間で自由な滞在をしたいという、少し贅沢なニーズに応えるブランドです。

⑤ KOKO HOTEL

「KOKO HOTEL」は、株式会社からくさホテルズが運営するホテルブランドです。「心(KOKORO)に残る時(KOKU)を」というコンセプトのもと、全国の主要都市で展開しています。

KOKO HOTELブランドの中でも、特に「KOKO HOTEL Premier」や一部の施設では、キッチンや洗濯機を備えたアパートメントタイプの客室を提供しており、「暮らすように泊まる」滞在が可能です。

その特徴は、機能性とデザイン性を両立させた、スマートでスタイリッシュな空間づくりにあります。無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインの中に、快適に過ごすための工夫が凝らされており、落ち着いた雰囲気の中でリラックスした時間を過ごせます。(参照:KOKO HOTEL公式サイト)

客室タイプも、コンパクトなシングルルームから、家族やグループで利用できる広い部屋まで多様に揃っているため、ビジネスでの一人旅からカップル、友人同士まで、幅広い層のニーズに対応できます。スマートで質の高い滞在を、リーズナブルに実現したい方におすすめのブランドです。

まとめ

今回は、新しい宿泊の形として注目を集める「アパートメントホテル」について、その基本から具体的な活用法まで、多角的に解説してきました。

最後に、この記事の要点を改めて振り返ってみましょう。

  • アパートメントホテルとは、キッチンや洗濯機、広いリビングなどを備え、旅先で「暮らすように過ごす」ことを可能にする、アパートとホテルの長所を兼ね備えた宿泊施設です。
  • 一般的なホテルとの主な違いは、「部屋の広さ」「キッチン・洗濯機の有無」「1室単位の料金体系」「限定的なスタッフサービス」「清掃頻度」などにあります。
  • 大きなメリットとして、「自宅のようなリラックス感」「自炊による食費節約」「大人数・長期滞在でのコストパフォーマンスの高さ」「プライベート空間の確保」が挙げられます。
  • 一方で知っておくべきデメリットは、「食事提供やルームサービスがないこと」「フロントが24時間対応でない場合があること」「セキュリティ面で注意が必要な場合があること」です。
  • 特におすすめなのは、「旅行費用を節約したい人」「出張やワーケーションで長期滞在する人」「家族や友人グループで旅行する人」、そして「『暮らすような旅』を体験したい人」です。

アパートメントホテルは、もはや単なる宿泊施設の一つの選択肢ではありません。それは、私たちの旅のスタイルそのものを、より自由に、より豊かに、そしてよりパーソナルなものへと変革する可能性を秘めたプラットフォームです。

観光地を巡るだけの「非日常」な旅も素晴らしいですが、時にはその土地の日常に溶け込み、現地の人と同じようにスーパーで買い物をし、部屋で料理を作り、リビングで語り合う。そんな「日常の延長線上にある旅」は、きっとあなたの心に深く刻まれる、新しい発見と感動をもたらしてくれるはずです。

この記事が、あなたの次の旅行計画のヒントとなり、あなたにぴったりのアパートメントホテルを見つける一助となれば幸いです。ぜひ、新しい旅の扉を開けて、忘れられない滞在を体験してみてください。