旅行業界への転職は未経験でも可能?仕事内容や有利な資格を解説

旅行業界への転職は未経験でも可能?、仕事内容や有利な資格を解説

「旅行が好き」という気持ちを仕事にしたい、多くの人の思い出作りに関わりたい、という思いから旅行業界への転職を考える人は少なくありません。華やかなイメージがある一方で、「未経験でも大丈夫だろうか」「どんな仕事があるのだろうか」「将来性はあるのか」といった不安や疑問を抱えている方も多いでしょう。

結論から言うと、旅行業界への転職は未経験からでも十分に可能です。異業種で培ったスキルや経験を活かせる場面も多く、むしろ新しい視点を持つ人材が求められています。しかし、成功のためには業界の構造や仕事内容を正しく理解し、適切な準備をすることが不可欠です。

この記事では、旅行業界の全体像から具体的な職種、働く上でのやりがいと厳しさ、求められるスキルや資格、そして業界の将来性までを網羅的に解説します。未経験から旅行業界への転職を成功させるための具体的なポイントも紹介しますので、ぜひ最後までご覧いただき、あなたのキャリアプランの参考にしてください。

旅行業界とは?

旅行業界と一言で言っても、その事業形態は多岐にわたります。転職を考える上で、まずは業界の全体像を把握し、どのような企業がどのような役割を担っているのかを理解することが第一歩です。旅行業界は、旅行業法という法律に基づいていくつかの種類に分類されており、それぞれ取り扱える業務の範囲が異なります。ここでは、旅行会社の主な種類とその事業内容について詳しく見ていきましょう。

旅行会社の主な種類と事業内容

旅行会社は、旅行業法で定められた登録区分によって、主に「第1種」「第2種」「第3種」「旅行業者代理業」の4つに大別されます。これに加えて、近年急速に存在感を増している「オンライン旅行会社(OTA)」も重要なプレイヤーです。それぞれの特徴を理解することで、自分がどの分野で働きたいのか、どのようなキャリアを築きたいのかが明確になります。

旅行業の種類 主な事業内容 取り扱える旅行の範囲
第1種旅行業 海外・国内の企画旅行、手配旅行の企画・実施・販売 全ての旅行商品(海外・国内)
第2種旅行業 国内の企画旅行、海外・国内の手配旅行の企画・実施・販売 国内の募集型・受注型企画旅行、国内・海外の手配旅行
第3種旅行業 一定の区域内における企画旅行、海外・国内の手配旅行の企画・実施・販売 出発地と目的地が同じ市町村および隣接市町村内などの限定的な範囲の募集型企画旅行、国内・海外の手配旅行
旅行業者代理業 旅行会社(元請け)の代理として旅行商品を販売 所属する旅行会社が取り扱う旅行商品
オンライン旅行会社 (OTA) Webサイト上で航空券・宿泊施設・ツアーなどを販売 サービスによる(多くは第1種旅行業の登録を持つ)

第1種旅行業

第1種旅行業は、海外・国内を問わず、すべての形態の旅行商品を取り扱うことができるのが最大の特徴です。具体的には、自社で旅行プランを企画して参加者を募集する「募集型企画旅行(パッケージツアー)」、顧客の要望に応じてオーダーメイドの旅行プランを作成する「受注型企画旅行」、そして顧客の依頼に基づき航空券や宿泊施設などを個別に手配する「手配旅行」のすべてを、国内外問わず実施・販売できます。

海外旅行のパッケージツアーや、大規模な国際会議に伴う旅行手配など、グローバルな事業展開を行っている大手旅行会社の多くが、この第1種旅行業の登録を受けています。事業範囲が最も広いため、登録には観光庁長官の許可が必要であり、営業保証金も最も高額(新規登録時で7,000万円)に設定されています。参照:観光庁「旅行業法」

第1種旅行業の企業で働くことは、多様な旅行商品に触れ、グローバルな視野で仕事ができるチャンスがあることを意味します。海外の支店や提携先とのやり取り、海外視察など、語学力を活かしたり、国際的なビジネススキルを磨いたりしたい人にとっては非常に魅力的な環境と言えるでしょう。

第2種旅行業

第2種旅行業は、国内の募集型企画旅行と、国内外の手配旅行を取り扱うことができます。第1種との最も大きな違いは、「海外の募集型企画旅行」を自社で企画・実施できない点です。ただし、他の第1種旅行業者が企画した海外パッケージツアーを代理で販売することは可能です。

主に国内旅行に強みを持つ旅行会社や、特定の地域に根ざした事業を展開する企業がこの登録を受けていることが多いです。例えば、バス会社が母体となって日帰りバスツアーや国内宿泊ツアーを企画・販売するケースなどがこれに該当します。

登録は都道府県知事の許可が必要で、営業保証金は新規登録時で1,100万円です。第1種に比べて参入のハードルは低いですが、国内旅行に関する深い知識と企画力が求められます。地域の魅力を発掘し、新しい国内旅行の形を提案したい、という思いを持つ人にとって最適なフィールドです。

第3種旅行業

第3種旅行業は、募集型企画旅行の範囲が限定されているのが特徴です。具体的には、出発地と同じ市町村内および隣接する市町村、観光庁長官が定める特定の区域内に限定した募集型企画旅行しか企画・実施できません。一方で、手配旅行については国内外を問わず取り扱うことが可能です。

この形態は、特定の地域に密着した小規模な旅行会社や、インバウンド(訪日外国人旅行)専門で、特定のエリアの着地型観光(現地発着ツアー)を企画・販売する会社などに多く見られます。例えば、ある市内の観光スポットを巡るガイド付きウォーキングツアーや、特定の空港に到着した外国人観光客向けの近隣エリアへの日帰りツアーなどがこれにあたります。

登録は都道府県知事の許可で、営業保証金は新規登録時で300万円と、最も参入しやすい区分です。ニッチな分野や特定の地域で専門性を発揮したい、地域活性化に貢献したいと考える人にとって、非常にやりがいのある働き方ができる可能性があります。

旅行業者代理業

旅行業者代理業は、特定の旅行会社(所属旅行会社)の代理として、その会社が企画・造成した旅行商品を販売することを専門とします。自社で旅行商品を企画することはできず、あくまで「販売窓口」としての役割を担います。

駅の構内やショッピングモールなどにある旅行代理店のカウンターの多くがこの形態にあたります。大手旅行会社の看板を掲げていますが、運営しているのは別の会社というケースです。このビジネスモデルのメリットは、自社で企画や在庫リスクを抱えることなく、ブランド力のある商品を販売できる点にあります。

登録には都道府県知事の許可が必要ですが、所属旅行会社が業務に関する責任を負うため、営業保証金の供託は免除されます。旅行業界の入り口として、まずはお客様への旅行提案や販売のスキルを身につけたいと考える未経験者にとって、挑戦しやすい分野と言えるでしょう。

オンライン旅行会社(OTA)

オンライン旅行会社(Online Travel Agent、OTA)は、実店舗を持たず、インターネット上ですべての取引を完結させる旅行会社です。航空券やホテル、レンタカー、アクティビティなどを横断的に検索・比較し、オンラインで予約・決済できる利便性の高さから、近年急速に市場を拡大しています。

多くのOTAは、グローバルに事業を展開するため第1種旅行業の登録をしていますが、そのビジネスモデルは従来の旅行会社とは大きく異なります。テクノロジーを駆使して膨大な情報量を効率的に処理し、ダイナミックプライシング(需給に応じた価格変動)などを用いてユーザーに最適な価格を提示します。

OTAで働く場合、カウンターセールスや添乗員といった職種は少なく、Webマーケティング、データ分析、システム開発、UI/UXデザインといったIT・デジタル系の専門職が中心となります。テクノロジーの力で旅行の未来を創造したい、データに基づいた戦略立案に興味があるという人にとっては、非常に刺激的な職場環境です。

このように、旅行業界は多様な事業形態の集合体です。自分が「何をしたいのか」――例えば、世界を股にかけるツアーを企画したいのか、地域の魅力を発掘したいのか、最先端のテクノロジーで旅行体験を変えたいのか――を明確にすることが、最適な転職先を見つけるための鍵となります。

旅行業界の主な職種と仕事内容

カウンターセールス、法人・団体営業、ツアープランナー(旅行企画)、手配・仕入れ(オペレーター)、添乗員(ツアーコンダクター)、Webマーケティング

旅行業界には、お客様の旅を様々な側面から支える多様な職種が存在します。表舞台で活躍する仕事から、裏方で旅行を支える専門的な仕事まで、その役割は多岐にわたります。ここでは、旅行業界の代表的な職種とその具体的な仕事内容について解説します。自分のスキルや興味がどの職種にマッチするのか、想像しながら読み進めてみてください。

カウンターセールス

カウンターセールスは、店舗のカウンターで個人のお客様に対して旅行相談、商品提案、予約手配を行う、まさに「旅行会社の顔」とも言える職種です。お客様の漠然とした「どこかへ行きたい」という要望をヒアリングし、予算や日数、興味関心に合わせて最適な旅行プランを提案します。

主な仕事内容は以下の通りです。

  • ヒアリング・カウンセリング: お客様の旅行の目的、希望、予算、不安な点などを丁寧に聞き出します。
  • プラン提案: パンフレットに掲載されているパッケージツアーから、航空券とホテルを組み合わせた個人旅行まで、幅広い選択肢の中から最適なプランを提案します。目的地の魅力や注意点、現地の最新情報なども提供します。
  • 予約・手配: 航空券、宿泊施設、鉄道、現地ツアーなどの予約システムを操作し、必要な手配を正確に行います。
  • 契約・精算: 旅行契約に関する重要事項を説明し、申込書の記入や代金の収受を行います。
  • 最終案内: 出発前に、確定した日程表や航空券(eチケット)、クーポン券などをまとめた最終書類をお客様に渡し、最終的な説明を行います。
  • 帰国後のフォロー: お客様からのフィードバックを受けたり、次回の旅行の相談に乗ったりすることもあります。

この仕事には、高いコミュニケーション能力と傾聴力が不可欠です。また、膨大な旅行商品や目的地の知識、複雑な予約システムの操作スキルも求められます。お客様の夢を形にし、感謝の言葉を直接聞けることが最大のやりがいですが、繁忙期には長時間労働になりがちで、クレーム対応なども発生します。未経験から挑戦しやすい職種の一つですが、常に学び続ける姿勢が重要です。

法人・団体営業

法人・団体営業は、企業や学校、官公庁などを顧客とし、社員旅行、報奨旅行(インセンティブツアー)、視察研修、修学旅行、国際会議といった団体旅行の企画提案から手配、添乗までを一貫して担当する職種です。個人旅行とは異なり、旅行の目的が明確であり、大規模かつ複雑な手配が求められます。

主な仕事内容は以下の通りです。

  • 新規開拓・ルートセールス: 既存顧客へのアプローチに加え、新たな顧客を開拓するための営業活動を行います。
  • ヒアリング・要件定義: 顧客企業の担当者から、旅行の目的(慰安、研修、チームビルディングなど)、予算、人数、日程などの要望を詳細にヒアリングします。
  • 企画・提案: ヒアリング内容に基づき、オリジナルの旅行プランを企画し、見積書とともに提案書を作成します。競合他社とのコンペティションになることも多く、独創的なアイデアや付加価値の高い提案力が求められます。
  • 手配・調整: 受注後、航空機やバスのチャーター、宿泊施設の一括予約、視察先との交渉、食事や宴会の手配など、多岐にわたる項目を調整・手配します。
  • 添乗業務: 旅行に同行し、旅程がスムーズに進むように管理します。現地でのトラブル対応やスケジュール変更など、臨機応変な対応が求められます。
  • 精算・報告: 旅行終了後、精算業務を行い、実施報告書を作成して顧客に提出します。

BtoBの営業経験や企画提案のスキルが活かせる職種です。一つのプロジェクトを動かすダイナミズムと、成功させた時の大きな達成感が魅力です。一方で、顧客の厳しい要求に応えるプレッシャーや、大規模な手配をミスなく進める責任の重さもあります。

ツアープランナー(旅行企画)

ツアープランナーは、パッケージツアーなどの旅行商品を企画・造成するクリエイティブな職種です。市場のトレンドや顧客のニーズを分析し、「売れる」旅行商品のコンセプトを立案、ルートや日程、宿泊先、観光内容を決定し、原価計算を行って旅行代金を設定します。

主な仕事内容は以下の通りです。

  • 市場調査・分析: 観光庁の統計データ、航空会社の運行情報、競合他社の動向、SNSのトレンドなどを分析し、新しい旅行先の候補やテーマを探します。
  • コンセプト設計: ターゲット顧客(例:アクティブシニア、ファミリー層、女子旅など)を定め、旅行のテーマやコンセプト(例:「絶景を巡る」「美食を堪能する」など)を決定します。
  • コース造成・原価計算: 航空会社や現地のホテル、レストラン、バス会社などと交渉して料金を仕入れ、具体的な旅程を作成します。各コストを積み上げて原価を算出し、利益を考慮して販売価格を決定します。
  • パンフレット・Webサイト制作ディレクション: 商品の魅力を伝えるため、キャッチコピーを考えたり、掲載する写真を選んだりして、パンフレットやWebページの制作をデザイナーやライターに指示します。
  • 販売促進: 完成した商品を社内の営業担当者や販売店に説明し、販売目標達成のための戦略を立てます。

情報収集能力、分析力、創造力、そして交渉力といった多様なスキルが求められる専門職です。自分のアイデアが形になり、多くの人々に旅行の楽しみを提供できることが大きなやりがいです。しかし、販売実績が直接評価に繋がるため、売れ行きが悪かった際のプレッシャーは大きいものがあります。通常、カウンターセールスや営業などで経験を積んだ後に就くことが多い職種です。

手配・仕入れ(オペレーター)

手配・仕入れは、旅行の裏側を支える重要な職種で、オペレーターとも呼ばれます。 営業担当者や顧客の依頼に基づき、航空券、ホテル、鉄道、バス、現地ツアーなどの予約・発券業務を専門に行います。また、ツアープランナーと連携し、旅行商品を構成する各パーツ(座席や客室など)を航空会社やホテルから有利な条件で仕入れる役割も担います。

主な仕事内容は以下の通りです。

  • 予約・発券業務: GDS(Global Distribution System)やCRS(Computer Reservation System)といった専用端末を駆使し、航空券の予約、発券、変更、キャンセル手続きを行います。
  • 宿泊施設等の手配: 国内外のホテルや旅館、レストラン、交通機関などの予約・手配を行います。
  • 仕入れ・交渉: 航空会社から航空座席をブロック(まとまった数を事前に確保)したり、ホテルと年間契約を結んで客室を確保したりするなど、安定した商品供給とコスト削減のための交渉を行います。
  • 見積もり作成: 営業担当者からの依頼に応じて、複雑な旅程の見積もりを作成します。
  • 書類作成: ビザ(査証)の申請代行や、関連書類の作成なども行います。

正確性、迅速性、そして専門知識が何よりも求められる仕事です。特に航空券の発券ルールは非常に複雑であり、専門的なスキルが必要です。縁の下の力持ちとして旅行全体を支えることにやりがいを感じる人に向いています。地道な作業が多いですが、この部門の専門性なくして旅行会社は成り立ちません。

添乗員(ツアーコンダクター)

添乗員は、パッケージツアーに同行し、参加者が安全で快適に旅行を楽しめるよう、旅程管理や案内を行う仕事です。ツアーコンダクターとも呼ばれ、まさに旅の演出家であり、危機管理者でもあります。

主な仕事内容は以下の通りです。

  • 出発前の準備: 最終日程の確認、参加者名簿のチェック、関係各所との最終打ち合わせなどを行います。
  • 旅程管理: ツアー中は、スケジュール通りに旅程が進行するように時間管理を行います。交通機関の遅延や渋滞など、予期せぬ事態にも対応します。
  • 案内・説明: 集合場所や時間の案内、観光地での説明、注意事項の伝達などを行います。
  • 安全管理・トラブル対応: お客様の健康状態に気を配り、急病や怪我、盗難などのトラブルが発生した際には、迅速かつ適切に対応します。
  • お客様対応: お客様からの様々な質問や要望に応え、快適な旅行をサポートします。

添乗員として働くには、「旅程管理主任者」の資格が必須です。高いコミュニケーション能力、リーダーシップ、危機管理能力、そして体力が求められます。お客様の笑顔や感謝の言葉が直接の報酬となる魅力的な仕事ですが、勤務時間が不規則で、常に緊張感を強いられる厳しい側面もあります。派遣会社に登録してフリーランスとして働く人も多い職種です。

Webマーケティング

Webマーケティングは、特にOTAの台頭以降、旅行業界で急速に重要性が高まっている職種です。自社のWebサイトやSNSなどを活用して、旅行商品の認知度向上、集客、そして販売促進を行います。

主な仕事内容は以下の通りです。

  • SEO(検索エンジン最適化): Googleなどの検索エンジンで、自社サイトが上位に表示されるようにコンテンツの作成やサイト構造の改善を行います。
  • Web広告運用: リスティング広告やディスプレイ広告、SNS広告などを運用し、費用対効果を最大化します。
  • SNS運用: Instagram、X(旧Twitter)、Facebookなどで魅力的な旅行情報を発信し、ファンを増やしてエンゲージメントを高めます。
  • コンテンツマーケティング: 旅行先の魅力を伝えるブログ記事や動画コンテンツを制作し、潜在顧客にアプローチします。
  • データ分析: Webサイトのアクセス解析ツールなどを用いて顧客の行動データを分析し、マーケティング施策の改善に繋げます。

デジタルマーケティングの専門知識やデータ分析スキルが求められます。自分の施策が予約数などの具体的な数字に直結するため、成果が分かりやすいのが特徴です。変化の速いWebの世界で、常に新しい技術やトレンドを学び続ける意欲が不可欠です。異業種のWebマーケティング経験者にとっては、非常に転職しやすい分野と言えるでしょう。

旅行業界で働くやりがいと大変なこと

お客様の喜びを直接感じられる、自分の「好き」を仕事にできる、クリエイティブな仕事に挑戦できる、グローバルな視野が広がる、旅行に関する特典や知識が得られる

旅行業界は、人々の楽しみや思い出に関わる華やかなイメージがある一方で、厳しい現実も存在します。この業界への転職を考えるなら、光と影の両面を正しく理解しておくことが重要です。ここでは、旅行業界で働くことの「やりがい・魅力」と「大変なこと・厳しさ」を具体的に解説します。

旅行業界で働くやりがい・魅力

多くの人が旅行業界に惹かれる理由は、この仕事ならではの特別な喜びにあります。金銭的な報酬だけでは測れない、大きなやりがいを感じられる瞬間が数多く存在します。

  • お客様の喜びを直接感じられる
    最大の魅力は、お客様の夢や憧れを形にし、その喜びを分かち合えることです。カウンターセールスであれば、「あなたに担当してもらって本当に良かった。最高の新婚旅行になりました」といった感謝の言葉を直接いただけます。添乗員であれば、旅行中に参加者の満面の笑みを見るたびに、この仕事をしていて良かったと感じるでしょう。ツアープランナーにとっては、自分が企画したツアーに参加したお客様からの「楽しかった」というアンケート結果が何よりの報酬です。人々の人生における特別な瞬間を演出し、感動を共有できることは、他の業界ではなかなか得られない大きなやりがいです。
  • 自分の「好き」を仕事にできる
    旅行が好き、特定の国や地域の文化が好き、という純粋な探求心を仕事に活かせます。自分の知識や経験が、お客様への提案や新しいツアーの企画に直結します。例えば、自分が訪れて感動した秘境の地を新しいツアーとして商品化したり、得意な語学を活かしてインバウンドのお客様に日本の魅力を伝えたりすることができます。常に新しいデスティネーション(目的地)の情報を収集し、自身の知見を深めていくプロセスそのものが楽しみとなり、仕事へのモチベーションに繋がります。
  • クリエイティブな仕事に挑戦できる
    特に法人営業やツアープランナーの仕事は、非常にクリエイティブです。法人営業では、クライアントの課題を解決するためのユニークな研修旅行を企画したり、参加者全員が楽しめるような工夫を凝らした報奨旅行を提案したりします。ツアープランナーは、まだ誰も知らないような現地の魅力を発掘し、新しい旅行のトレンドを自ら作り出すことも可能です。ゼロからイチを生み出し、それが商品として世に出て多くの人に体験してもらえるという達成感は、何物にも代えがたいものがあります。
  • グローバルな視野が広がる
    旅行業界は、必然的に世界と繋がる仕事です。海外旅行を扱う部署であれば、現地のホテルや交通機関、ランドオペレーター(現地手配会社)とのやり取りが日常的に発生します。海外出張で現地の視察を行ったり、国際的な観光見本市に参加したりする機会もあります。こうした経験を通じて、多様な文化や価値観に触れ、自然とグローバルな視野が身についていきます。語学力を磨きたい人や、国際的な環境で働きたい人にとっては、これ以上ない環境と言えるでしょう。
  • 旅行に関する特典や知識が得られる
    多くの旅行会社では、社員向けの旅行割引制度(福利厚生)が用意されています。これにより、通常よりも安く旅行に行けるため、プライベートでも旅を満喫しやすくなります。また、仕事を通じて航空券のルール、ホテルの選び方、ビザの知識など、旅行に関する専門知識が豊富になります。この知識は、自分自身の旅行計画を立てる際にも大いに役立ちます。

旅行業界で働く大変なこと・厳しさ

一方で、旅行業界には特有の厳しさも存在します。憧れだけで飛び込むと、理想と現実のギャップに苦しむことになるかもしれません。事前に大変な側面も理解しておくことが大切です。

  • 給与水準と労働環境
    旅行業界は、薄利多売のビジネスモデルであることが多く、他業界と比較して平均年収が低い傾向にあります。特に若手のうちは、給与面に不満を感じることもあるかもしれません。また、GW、夏休み、年末年始といった世間一般の連休が最も忙しい繁忙期にあたるため、カレンダー通りに休むことは難しくなります。カウンターセールスでは店舗の営業時間に合わせたシフト勤務となり、添乗員は長期間家を空けることも珍しくありません。ワークライフバランスを重視する人にとっては、厳しい労働環境と感じる可能性があります。
  • 責任の重さと精神的プレッシャー
    お客様にとっては、一生に一度かもしれない大切な旅行です。その手配にミスがあれば、お客様の期待を裏切るだけでなく、金銭的な損害や重大なトラブルに発展する可能性があります。パスポートの名前のスペルミス一つで飛行機に乗れない、ホテルの予約が取れていなかった、といった事態は絶対にあってはなりません。こうした「失敗が許されない」というプレッシャーは常に付きまといます。また、お客様からのクレーム対応も重要な仕事の一部であり、時には理不尽な要求に対応しなければならない場面もあり、精神的なタフさが求められます。
  • 緊急時の対応と不規則な勤務
    旅行には、天災、政情不安、テロ、感染症の流行、交通機関のストライキや遅延・欠航など、予測不可能なトラブルがつきものです。こうした事態が発生した場合、営業担当者や手配担当者は、深夜・休日を問わず対応に追われることになります。お客様の安全を確保し、代替の交通手段や宿泊先を手配するなど、迅速かつ冷静な判断が求められます。添乗員は、まさにその最前線で対応にあたります。このような緊急対応は、身体的にも精神的にも大きな負担となります。
  • 常に学び続ける必要がある
    旅行業界を取り巻く環境は、常に変化しています。各国の入国条件やビザ制度、航空会社の運賃規則、新しい観光地のオープンや既存施設の閉鎖など、覚えるべき情報は膨大かつ流動的です。特に、カウンターセールスやツアープランナーは、お客様に最新かつ正確な情報を提供するために、常に知識をアップデートし続けなければなりません。学習意欲がなければ、すぐにプロとして通用しなくなってしまう厳しい世界です。

これらの「やりがい」と「大変なこと」を天秤にかけ、それでも「人々の思い出作りを支えたい」という強い情熱を持てるかどうかが、旅行業界で長く活躍するための鍵となるでしょう。

旅行業界の仕事に向いている人の特徴

旅行や異文化への関心が高い人、人と接するのが好きな人、企画や情報収集が得意な人、語学力を活かしたい人、柔軟な対応力がある人

旅行業界で成功し、やりがいを感じながら働き続けるためには、いくつかの共通した素養や志向性があります。ここでは、旅行業界の仕事に特に向いている人の特徴を5つ挙げ、それぞれがどの職種でどのように活かされるのかを解説します。自分自身に当てはまる項目があるか、チェックしてみてください。

旅行や異文化への関心が高い人

これは最も基本的な素養と言えるでしょう。しかし、単に「旅行が好き」というレベルに留まらず、特定の国や地域の歴史、文化、地理、食などに対して深い探求心を持っていることが重要です。この知的好奇心は、お客様への提案に深みと説得力をもたらします。

例えば、カウンターセールスでイタリア旅行を提案する際、「ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアを巡る定番コースです」と説明するだけでなく、「フィレンツェでは、ルネサンス芸術だけでなく、職人の工房を訪ねて革製品のオーダーメイド体験はいかがですか?」といった具体的な提案ができるのは、深い関心があってこそです。

ツアープランナーにとっては、この探求心が新しい旅行商品を企画する源泉となります。まだあまり知られていない魅力的な村を発見したり、現地の祭りや伝統行事を組み込んだユニークなツアーを造成したりと、他社との差別化を図る上で不可欠な能力です。常にアンテナを張り、新しい情報や知識を吸収することを楽しめる人は、旅行業界で大いに活躍できるでしょう。

人と接するのが好きな人

旅行業界は、究極的には「人」と「人」を繋ぐサービス業です。そのため、人とコミュニケーションを取ることに喜びを感じるホスピタリティ精神が不可欠です。

特に、カウンターセールス、法人営業、添乗員といった職種では、コミュニケーション能力が業務の核となります。お客様の言葉の裏にある本当のニーズを汲み取る傾聴力、お客様の不安を解消し信頼関係を築く対話力、そして旅先で参加者全員を楽しませるエンターテイメント性も求められます。

また、社内の他部署や、社外の航空会社、ホテル、現地手配会社など、多くの関係者との円滑な連携も欠かせません。手配・仕入れ担当者であれば、取引先との良好な関係を築くことで、有利な条件を引き出す交渉力に繋がります。相手の立場を理解し、思いやりを持って接することができる人は、社内外から信頼され、成果を出しやすいでしょう。

企画や情報収集が得意な人

旅行という商品は、無形のサービスです。顧客の要望や市場のトレンドといった情報をもとに、魅力的な「体験」を企画し、形にしていく能力が求められます。

ツアープランナーや法人営業は、まさに企画力が試される職種です。市場のデータを分析してターゲット顧客を設定し、心に響くコンセプトを立て、具体的な旅程に落とし込んでいく一連のプロセスを楽しめる人に向いています。例えば、「SDGsをテーマにした企業の研修旅行」や「eスポーツの大会と観戦を組み合わせたファンツアー」など、時代を捉えた新しい発想ができる人は重宝されます。

また、企画の土台となるのが情報収集能力です。Webサイト、専門誌、SNS、現地からのレポートなど、様々なソースから信頼できる情報を効率的に集め、整理・分析するスキルは、すべての職種で役立ちます。「面白いネタはないか」「もっと良い方法はないか」と常に考え、自ら情報を探しに行動できる人は、付加価値の高い仕事ができるでしょう。

語学力を活かしたい人

インバウンド(訪日外国人旅行)の増加や、企業のグローバル化に伴い、旅行業界における語学力の重要性はますます高まっています。英語はもちろん、中国語、韓国語、スペイン語など、多言語に対応できる人材は非常に価値が高いです。

海外旅行を扱う部署では、現地のサプライヤーとのメールや電話での交渉、海外出張、英文契約書の読解など、語学力が必須となる場面が数多くあります。インバウンド部門では、外国人観光客向けのツアー企画やガイド、情報発信などで語学力を直接的に活かせます。

国内旅行がメインの会社であっても、外国人観光客の対応をする機会は増えています。カウンターで道を聞かれたり、予約の問い合わせがあったりする際に、スムーズに対応できるだけでも大きな強みとなります。TOEICやHSKなどの資格はもちろん、実践的なコミュニケーション能力をアピールできれば、転職活動において非常に有利になります。

柔軟な対応力がある人

旅行にはトラブルがつきものです。天候によるフライトの遅延・欠航、パスポートの紛失、お客様の急病など、予期せぬ事態は日常茶飯事です。こうした状況でパニックに陥らず、冷静に状況を分析し、最善の解決策を見つけ出す能力が極めて重要です。

特に添乗員や手配担当者は、この柔軟な対応力が常に試されます。例えば、フライトが欠航になった場合、代替便の確保、ホテルの延泊手配、お客様への説明などを迅速に行わなければなりません。複数の選択肢の中から、お客様への影響が最も少なく、かつコストも考慮した最適な判断を下す必要があります。

このスキルは、日々の業務でも活かされます。お客様からの急な要望変更、営業からの無理な依頼など、計画通りに進まないことは多々あります。そうした際に、「できません」と断るのではなく、「では、このような方法はいかがでしょうか」と代替案を提示できるような、前向きで柔軟な思考ができる人は、困難な状況を乗り越え、周囲からの信頼を得ることができます。

旅行業界の平均年収

専門性を磨く、マネジメント職を目指す、インセンティブの高い職種・企業を選ぶ、資格を取得する

転職を考える上で、年収は非常に重要な要素です。旅行業界の給与水準は、他業界と比較してどのような位置づけにあるのでしょうか。ここでは、公的なデータや一般的な傾向を基に、旅行業界の平均年収について解説します。

まず、旅行業単独の正確な平均年収データは公表されていませんが、国税庁が発表している「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、旅行業が含まれる「宿泊業、飲食サービス業」の平均給与は268万円となっています。これは、全業種の平均給与である458万円と比較すると、低い水準にあることが分かります。(参照:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」)

ただし、この「宿泊業、飲食サービス業」には、ホテルやレストランなどで働くパート・アルバイト従業員が多く含まれているため、旅行会社の正社員の平均年収はこれよりも高くなると考えられます。転職情報サイトなどのデータを総合すると、旅行業界全体の平均年収は350万円~450万円程度が一つの目安と言えるでしょう。

もちろん、この金額は企業の規模、職種、年齢、個人のスキルや実績によって大きく変動します。

  • 企業規模による違い: 一般的に、JTBやHISといった大手旅行会社の方が、中小の旅行会社よりも給与水準や福利厚生が充実している傾向にあります。大手では、30代で500万円以上、管理職になれば700万円以上を目指すことも可能です。一方、中小企業では、給与は低めでも、個人の裁量が大きく、インセンティブ(報奨金)の割合が高い場合があります。
  • 職種による違い: カウンターセールスや一般事務職に比べて、法人営業や専門性の高いツアープランナー、Webマーケティング職などは、給与水準が高い傾向にあります。特に法人営業では、個人の営業成績に応じてインセンティブが支給されることが多く、実績次第では高収入を得ることも可能です。また、近年需要が高まっているデータサイエンティストやITエンジニアといった専門職は、さらに高い給与で迎えられるケースもあります。
  • 年収アップのキャリアパス:
    旅行業界で年収を上げていくためには、明確なキャリア戦略が必要です。

    1. 専門性を磨く: 特定のデスティネーション(例:南米、アフリカなど)の専門家になる、クルーズ旅行のスペシャリストになる、MICE(会議、研修、国際会議、展示会)のプロフェッショナルになるなど、「この分野なら誰にも負けない」という専門性を築くことで、市場価値が高まります。
    2. マネジメント職を目指す: 現場での経験を積んだ後、チームリーダーや支店長、部長といった管理職を目指すのが、年収を上げる王道ルートの一つです。部下の育成や組織の目標達成に責任を持つことで、相応の報酬が得られます。
    3. インセンティブの高い職種・企業を選ぶ: 個人の成果が給与に反映されやすい法人営業や、成果主義を導入している外資系のOTAなどに転職するのも一つの選択肢です。
    4. 資格を取得する: 「総合旅行業務取扱管理者」などの難易度の高い国家資格を取得すると、資格手当が支給される企業も多く、キャリアアップにも有利に働きます。

給与の額面だけで判断するのではなく、旅行割引制度などの福利厚生を含めた「トータルリターン」で考える視点も重要です。旅行好きにとっては、金銭的な報酬以上の価値を感じられるかもしれません。自身のキャリアプランとライフプランを照らし合わせ、納得のいく選択をすることが大切です。

未経験から旅行業界への転職は可能?

営業経験、接客・販売経験、IT・Web業界での経験、事務・秘書経験

旅行業界に憧れを抱きつつも、「自分は全くの未経験だから…」と諦めてしまう人がいます。しかし、それは非常にもったいないことです。結論として、未経験から旅行業界への転職は十分に可能であり、多くの企業がポテンシャルのある未経験者を採用しています

その理由はいくつかあります。まず、旅行業界は慢性的な人手不足の傾向があり、特に若手の人材を積極的に採用したいと考えている企業が多い点です。また、旅行という商品は非常に幅広く、顧客層も多様であるため、異業種で培った経験やスキルが意外な形で活かせる場面が少なくありません。

例えば、以下のような経験は、旅行業界で高く評価される可能性があります。

  • 営業経験(業界問わず): 目標達成意欲、顧客との関係構築力、提案力などは、法人営業やカウンターセールスでそのまま活かせます。
  • 接客・販売経験(アパレル、飲食など): お客様のニーズを汲み取るヒアリング力やホスピタリティ精神は、カウンターセールスや添乗員に不可欠です。
  • IT・Web業界での経験: Webマーケティング、データ分析、UI/UX改善などのスキルは、特にOTAやDXを推進する旅行会社で即戦力として求められます。
  • 事務・秘書経験: 正確な書類作成能力、スケジュール管理能力、きめ細やかな調整力は、手配・仕入れ(オペレーター)業務で大いに役立ちます。

もちろん、未経験者が挑戦しやすい職種と、ある程度の経験が求められる職種があります。

  • 未経験者が挑戦しやすい職種:
    • カウンターセールス: OJT(On-the-Job Training)や研修制度が整っている企業が多く、未経験者採用の門戸が最も広い職種の一つです。コミュニケーション能力や学習意欲が重視されます。
    • 法人営業(アシスタント・若手): まずは先輩社員のサポート業務から始め、徐々に顧客を引き継いでいく形でキャリアをスタートできます。営業経験者であれば、即戦力として採用される可能性も高いです。
    • 添乗員(派遣): 派遣会社に登録し、研修を受けて「旅程管理主任者」の資格を取得すれば、未経験からでも添乗員としてデビューすることが可能です。
  • 経験者が優遇される職種:
    • ツアープランナー(旅行企画): 商品の採算性を判断する原価計算や、サプライヤーとの交渉力など、専門的な知識と経験が求められるため、多くは社内で営業や手配の経験を積んだ人が異動するケースが一般的です。
    • 手配・仕入れ(オペレーター): GDS/CRSといった専用端末の操作スキルが必須となることが多く、経験者採用が中心です。
    • Webマーケティング(専門職): SEOや広告運用の具体的な実績が求められるため、他業界であってもマーケティングの実務経験が必要です。

未経験から転職を成功させるためには、「なぜ旅行業界なのか」「なぜこの会社なのか」という志望動機を深く掘り下げ、説得力のある言葉で語れることが何よりも重要です。単に「旅行が好きだから」という理由だけでは、他の応募者との差別化は図れません。「前職の〇〇という経験を活かして、貴社の△△という分野でこのように貢献したい」というように、自身のスキルと企業の事業内容を結びつけてアピールすることが成功の鍵となります。

旅行への情熱と学習意欲、そして異業種で培ったポータブルスキル(持ち運び可能な能力)を武器にすれば、未経験というハンディキャップは十分に乗り越えられます。

旅行業界への転職で有利になるスキルと資格

コミュニケーションスキル、語学力、企画・マーケティングスキル、マネジメント経験

未経験から旅行業界を目指す場合でも、経験者としてキャリアアップを目指す場合でも、特定のスキルや資格を持っていると転職活動を有利に進めることができます。ここでは、旅行業界で特に求められるスキルと、取得しておくと強みになる資格について詳しく解説します。

求められるスキル・経験

特定の資格以上に、実務で直接活かせるポータブルスキルが重視される傾向にあります。これまでのキャリアで培ったスキルを棚卸しし、旅行業界のどの仕事で活かせるかを具体的にアピールできるように準備しましょう。

コミュニケーションスキル

これは、旅行業界のあらゆる職種で求められる最も基本的なスキルです。単に話がうまいということではなく、相手の話を丁寧に聞く「傾聴力」、相手の意図を正確に理解する「読解力」、そして自分の考えを分かりやすく伝える「説明力」を総合した能力を指します。

  • 活かせる職種: カウンターセールス、法人営業、添乗員、手配(社内外との調整)など
  • アピール方法: 「前職の営業では、顧客の潜在ニーズを引き出すために、まず雑談の中から相手の課題を聞き出すことを徹底し、〇〇という成果を上げました」のように、具体的なエピソードを交えて説明すると効果的です。

語学力

インバウンド需要の回復とグローバル化の進展により、語学力、特に英語力は大きな武器になります。ビジネスレベルの英語力があれば、活躍の場は大きく広がります。

  • 活かせる職種: 海外旅行の企画・手配、インバウンド事業、外資系OTA、大手旅行会社の総合職など
  • アピール方法: TOEICのスコア(一般的に730点以上が目安)などの客観的な指標に加え、「海外の取引先と〇年間、メールや電話会議で交渉を行ってきた経験があります」といった実務経験をアピールすることが重要です。英語以外の言語(中国語、韓国語など)も、専門性を高める上で非常に有効です。

企画・マーケティングスキル

新しい旅行商品を開発したり、効果的な販売戦略を立てたりする上で不可欠なスキルです。市場のニーズを捉え、論理的に企画を組み立て、その魅力を発信する能力が求められます。

  • 活かせる職種: ツアープランナー、法人営業、Webマーケティングなど
  • アピール方法: 「前職で新商品のプロモーション企画を立案し、SNSを活用したキャンペーンで売上を前年比〇%向上させた経験があります」のように、具体的な成果を数字で示すと説得力が増します。異業種でのマーケティング経験は、新しい視点をもたらすとして高く評価されることがあります。

マネジメント経験

チームリーダーや管理職としての経験も、キャリアアップを目指す上では非常に有利です。部下の育成、目標設定、進捗管理といった経験は、業界を問わず通用する貴重なスキルです。

  • 活かせる職種: 支店長、営業所長、チームリーダーなどの管理職候補
  • アピール方法: 「〇人のチームを率い、各メンバーの強みを活かした役割分担と定期的な面談を行うことで、チーム全体の目標を〇期連続で達成しました」など、具体的なマネジメント手法と実績をアピールしましょう。

あると有利な資格

旅行業界には、業務を行う上で必須となる国家資格や、持っていると専門性の証明になる資格があります。特に未経験者の場合、資格取得は学習意欲と業界への本気度を示す有効な手段となります。

旅行業務取扱管理者

旅行業務取扱管理者は、旅行業法で定められた旅行業界唯一の国家資格です。旅行会社は、営業所ごとに一人以上の有資格者を「選任」として配置することが義務付けられています。そのため、この資格の保有者は転職市場で非常に価値が高く、企業によっては資格手当が支給されることもあります。

資格は3種類に分かれています。

  • 総合旅行業務取扱管理者: 海外・国内の両方の旅行業務を取り扱える最上位の資格。合格率は例年10%~20%台と難易度が高いですが、最も評価されます。
  • 国内旅行業務取扱管理者: 国内旅行業務のみを取り扱える資格。合格率は例年30%~40%台で、まずはこの資格から挑戦する人も多いです。
  • 地域限定旅行業務取扱管理者: 限定された地域内(営業所のある市町村および隣接市町村など)の旅行業務のみを取り扱える資格です。

未経験者であっても、選考段階でこの資格を持っている、あるいは勉強中であることをアピールすれば、業界への高い志望度を証明できます。

旅程管理主任者

旅程管理主任者は、添乗員(ツアーコンダクター)として募集型企画旅行に同行するために必須の資格です。この資格は、筆記試験に合格するだけでは取得できず、指定の研修を修了し、かつ一定の実務経験(研修修了後1年以内に1回、または3年以内に2回以上の添乗実務)を積む必要があります。

そのため、未経験者がいきなり取得することはできませんが、「将来的に添乗員として活躍したいため、まずは研修を修了したい」という意欲を示すことはできます。添乗員を目指すなら、避けては通れない資格です。

語学関連の資格

語学力を客観的に証明するために、以下のような資格が有効です。

  • TOEIC® Listening & Reading Test: 英語力を示す最も一般的な指標。外資系や海外部門を目指すなら800点以上、国内業務でも600点以上あるとアピールになります。
  • 実用英語技能検定(英検®): 準1級以上がビジネスレベルの一つの目安とされます。
  • HSK(漢語水平考試): 中国語の能力を証明する資格。インバウンド業務などで需要が高いです。
  • 通訳案内士: 外国語を用いて、外国人観光客に付き添い、日本の観光地や文化を案内するための国家資格。難易度は高いですが、インバウンドのエキスパートとして高い評価を得られます。

これらのスキルや資格は、あくまであなたの価値を高めるための一つの要素です。最も重要なのは、これらの武器を携えて、自分がその会社でどのように貢献できるかを具体的に語ることです。

旅行業界の現状と将来性

旅行需要の回復とインバウンドの増加、旅行スタイルの多様化、オンライン化とDXの加速

新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けた旅行業界ですが、現在は回復基調にあり、大きな変革期を迎えています。転職を考える上で、業界が今どのような状況にあり、これからどこへ向かおうとしているのかを理解しておくことは非常に重要です。

旅行需要の回復とインバウンドの増加

国内外の移動制限が緩和されたことにより、人々の旅行への意欲は急速に回復しています。国内旅行はコロナ禍以前の水準に近づきつつあり、これまで抑えられていた旅行消費が活発化しています。

さらに、円安を背景としたインバウンド(訪日外国人旅行)の急増は、業界にとって大きな追い風となっています。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、訪日外客数は多くの月でコロナ禍以前の2019年同月を超える水準で推移しており、消費額も過去最高を更新しています。これは、欧米豪からの旅行者に加え、東南アジア諸国からの旅行者も増加していることが要因です。
(参照:日本政府観光局(JNTO) 報道発表資料)

このインバウンド需要の取り込みは、旅行業界全体の成長の鍵を握っています。語学力のある人材や、外国人観光客向けの新しい体験型ツアーを企画できる人材の需要は、今後ますます高まっていくでしょう。

旅行スタイルの多様化

人々の価値観の変化に伴い、旅行のスタイルも大きく多様化しています。従来の有名観光地を巡る団体ツアーだけでなく、個々の興味関心に基づいた、よりパーソナルな旅行が求められるようになっています。

  • 個人旅行(FIT)の増加: インターネットで情報収集し、航空券やホテルを自分で手配する個人旅行者(Foreign Independent Traveler)が増加しています。これに対応するため、旅行会社もオーダーメイドの旅行プランニングや、現地でのオプショナルツアー販売などに力を入れています。
  • コト消費(体験型旅行)へのシフト: モノの所有よりも「体験」に価値を見出す傾向が強まっています。その土地ならではの文化体験(例:着物レンタル、茶道体験)、自然の中でのアクティビティ(例:ラフティング、トレッキング)、食を通じた交流(例:料理教室、農家民泊)など、付加価値の高い体験型コンテンツを造成できる企画力が重要になっています。
  • サステナブルツーリズム: 環境や文化、地域経済に配慮した持続可能な観光への関心が高まっています。環境負荷の少ない交通手段を選んだり、地元の産品を消費したり、観光客が地域の保全活動に参加したりするようなツアーが注目されています。
  • アドベンチャーツーリズム、ウェルネスツーリズム: 自然の中での挑戦的なアクティビティを楽しむ旅や、心身の健康増進を目的とした旅など、特定のテーマに特化した旅行のニーズも伸びています。

これらの多様なニーズに応えるためには、旅行会社も画一的な商品を提供するだけでなく、顧客一人ひとりに寄り添った提案力や、ニッチな分野での専門性が求められます。

オンライン化とDXの加速

旅行業界は、デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進んでいる業界の一つです。OTAの台頭により、予約・決済のオンライン化はもはや当たり前となりました。今後は、さらにテクノロジーを活用した新しいサービスが登場してくると予想されます。

  • AIの活用: AIチャットボットによる24時間365日の顧客対応、個人の嗜好を分析したAIによる旅行プランの自動生成、需要予測に基づくダイナミックプライシングの高度化などが進んでいます。
  • データの利活用: 顧客の検索履歴や予約データ、SNSでの口コミなどを分析し、マーケティング施策の最適化や新たな商品開発に繋げる動きが活発化しています。データ分析スキルを持つ人材は、業界を問わず引く手あまたです。
  • バーチャル体験の進化: VR(仮想現実)やメタバース(仮想空間)を活用して、旅行前に現地の様子をリアルに体験したり、遠隔地から観光やイベントに参加したりするサービスも登場しています。

これらの変化は、従来の旅行会社のビジネスモデルを脅かす側面もありますが、同時に新しいビジネスチャンスを生み出すものでもあります。例えば、煩雑な手配業務をテクノロジーで効率化し、人間はより創造的でホスピタリティが求められるコンサルティング業務に集中するといった働き方の変革も可能になります。

旅行業界の将来性は、こうした変化に柔軟に対応し、テクノロジーと人間の強みを融合させ、新しい旅行の価値を創造できるかどうかにかかっています。変革期だからこそ、異業種からの新しい視点やスキルを持つ人材が活躍できるチャンスは大きいと言えるでしょう。

旅行業界への転職を成功させるポイント

企業研究と自己分析を徹底する、志望動機とキャリアプランを明確にする、転職エージェントを活用する

未経験からでも挑戦可能な旅行業界ですが、人気のある業界だからこそ、ライバルも少なくありません。転職を成功させるためには、入念な準備と戦略的なアプローチが不可欠です。ここでは、転職活動を成功に導くための3つの重要なポイントを解説します。

企業研究と自己分析を徹底する

これは転職活動の基本ですが、旅行業界においては特にその重要性が高まります。なぜなら、「旅行会社」と一括りにできないほど、各社の事業内容、得意分野、企業文化が大きく異なるからです。

  • 企業研究のポイント:
    • 事業領域: その企業は、国内旅行と海外旅行のどちらに強いのか?個人旅行(BtoC)と団体旅行(BtoB)のどちらがメインか?インバウンド事業に力を入れているか?
    • 得意なデスティネーション・テーマ: 特定の地域(例:ヨーロッパ、ハワイ)や特定のテーマ(例:クルーズ、秘境ツアー、ビジネストラベル)に強みを持っているか?
    • 販売チャネル: 店舗での対面販売が中心か、オンライン販売に注力しているか、あるいは両方を組み合わせているか?
    • 企業文化・社風: 企業のWebサイトや採用ページ、社員インタビューなどから、どのような価値観を大切にしているか、どのような人材が活躍しているかを読み取る。堅実な社風か、挑戦を奨励する社風か。
    • 業績と将来性: 最新の決算情報やニュースリリースから、企業の経営状況や今後の事業戦略を把握する。

これらの情報を深く調べることで、数ある旅行会社の中で「なぜこの会社でなければならないのか」という問いに対する自分なりの答えが見つかります。

  • 自己分析のポイント:
    • 経験・スキルの棚卸し: これまでのキャリアで何を経験し、どのようなスキルを身につけたかを具体的に書き出す(例:営業成績、企画実績、語学力、PCスキルなど)。
    • 強み・弱みの把握: 自分の得意なこと、苦手なことを客観的に分析する。
    • 価値観の明確化: 仕事を通じて何を実現したいのか、どのような環境で働きたいのか、何を大切にしたいのかを考える。

企業研究で得た情報と、自己分析の結果を照らし合わせることで、自分に最適な企業が絞り込まれ、説得力のある応募書類の作成や面接対策に繋がります。

志望動機とキャリアプランを明確にする

「旅行が好きだから」という志望動機は、出発点としては良いですが、それだけでは採用担当者の心には響きません。企業は、あなたが「好き」という気持ちを、どのように仕事に活かし、自社に貢献してくれるのかを知りたいと考えています。

  • 志望動機の作り方:
    1. Why 旅行業界?: なぜ他の業界ではなく、旅行業界で働きたいのかを自分の言葉で語る。(例:「モノを売るのではなく、人々の思い出という無形の価値を創造する仕事に魅力を感じたから」)
    2. Why この会社?: なぜ他の旅行会社ではなく、その会社を志望するのかを、企業研究に基づいて具体的に説明する。(例:「貴社の『地域創生』という理念に共感し、前職の地方営業で培ったネットワークを活かして、まだ知られていない日本の魅力を発信するインバウンド向けツアーの企画に貢献したい」)
    3. How I can contribute?: 自分のスキルや経験を、その会社でどのように活かせるのかをアピールする。
  • キャリアプランの明確化:
    面接では、「入社後、どのような仕事に挑戦したいですか」「5年後、10年後、どのようになっていたいですか」といった質問をされることがよくあります。これは、あなたの成長意欲や、自社で長く活躍してくれる人材かどうかを見ています。
    「まずはカウンターセールスで基礎を学び、お客様のニーズを肌で感じたいです。将来的には、そこで得た知見を活かして、シニア層向けの新しい国内旅行商品を企画するツアープランナーになりたいです」のように、具体的で実現可能なキャリアプランを提示できると、計画性と熱意を高く評価されます。

転職エージェントを活用する

特に未経験からの転職や、働きながらの転職活動では、転職エージェントの活用が非常に効果的です。転職エージェントは、無料で様々なサポートを提供してくれます。

  • 非公開求人の紹介: Webサイトなどには掲載されていない、優良企業の非公開求人を紹介してもらえる可能性があります。
  • 客観的なキャリア相談: プロのキャリアアドバイザーが、あなたの経歴や希望をヒアリングし、あなたに合った企業や職種を客観的な視点で提案してくれます。
  • 書類添削・面接対策: 旅行業界に精通したアドバイザーから、応募書類の書き方や、面接での効果的なアピール方法について具体的なアドバイスを受けられます。これは、選考の通過率を大きく左右します。
  • 企業との連携: 面接の日程調整や、給与などの条件交渉を代行してくれます。また、直接は聞きにくい企業の内部情報(職場の雰囲気など)を教えてくれることもあります。

一人で転職活動を進めるよりも、はるかに効率的かつ効果的に進めることができます。複数のエージェントに登録し、それぞれの強みや担当者との相性を見ながら、自分に合ったサービスを利用するのがおすすめです。

旅行業界の転職に強い転職エージェント3選

転職エージェントは数多くありますが、それぞれに強みや特徴があります。ここでは、求人数の多さやサポート体制の充実度から、旅行業界への転職を目指す際に特におすすめできる大手総合型転職エージェントを3社紹介します。

転職エージェント 特徴 こんな人におすすめ
リクルートエージェント 業界No.1の求人数。幅広い業界・職種の求人を保有。 多くの求人の中から比較検討したい人。地方での転職を考えている人。
doda 転職サイトとエージェント機能が一体化。2つのアプローチが可能。 自分で求人を探しつつ、プロのサポートも受けたい人。幅広い選択肢を持ちたい人。
マイナビエージェント 20代~30代の若手層に強い。丁寧なサポートに定評。 初めての転職で不安な人。第二新卒や20代の人。手厚いサポートを希望する人。

① リクルートエージェント

リクルートエージェントは、株式会社リクルートが運営する、業界最大手の転職エージェントです。その最大の強みは、なんといっても公開・非公開を合わせた圧倒的な求人数にあります。旅行業界においても、大手から中小、ベンチャー企業まで、幅広い企業の求人を保有しており、多様な選択肢の中から自分に合った転職先を見つけられる可能性が高いです。

各業界に精通したキャリアアドバイザーが多数在籍しており、提出書類の添削や面接対策など、転職活動全般にわたって手厚いサポートを提供してくれます。また、独自の「エージェントレポート」では、各企業の社風や選考のポイントといった詳細な情報を提供しており、企業研究に非常に役立ちます。

全国に拠点があり、Uターン・Iターン転職にも強いのが特徴です。まずは多くの求人を見てみたい、幅広い可能性を探りたいという方には、最初に登録しておくべきエージェントと言えるでしょう。
(参照:株式会社リクルート 公式サイト)

② doda

dodaは、パーソルキャリア株式会社が運営する、転職サイトと転職エージェントの機能を併せ持つサービスです。自分で求人を探して直接応募できる「転職サイト」としての機能と、キャリアアドバイザーのサポートを受けながら転職活動を進める「エージェントサービス」の両方を、一つのサイト内で利用できるのが大きな特徴です。

「まずは自分のペースで情報収集したい」「良い求人があればエージェントにも相談したい」といったように、自分の状況に合わせて柔軟に使い方を選べる利便性があります。求人数も業界トップクラスで、旅行業界の求人も豊富です。

また、「キャリアタイプ診断」や「年収査定」といった自己分析に役立つツールが充実している点も魅力です。自分の市場価値を客観的に把握し、キャリアの方向性を考える上で参考になります。選択肢の幅を広げつつ、必要に応じてプロのサポートも受けたいというバランス重視の方におすすめです。
(参照:パーソルキャリア株式会社 公式サイト)

③ マイナビエージェント

マイナビエージェントは、株式会社マイナビが運営する転職エージェントで、特に20代~30代の若手層や第二新卒の転職支援に強みを持っています。初めて転職活動を行う人に対しても、時間をかけて丁寧にサポートしてくれると評判です。

キャリアアドバイザーが親身に相談に乗ってくれるため、「自分の強みが分からない」「志望動機がうまくまとめられない」といった悩みを持つ人でも安心して利用できます。各業界の専任アドバイザーが、企業の求める人物像を深く理解した上で、マッチングの高い求人を提案してくれます。

中小企業の求人も多く扱っているため、大手だけでなく、地域に根ざした優良企業や、アットホームな社風の企業を探したいというニーズにも応えてくれます。初めての転職で不安が大きい方や、手厚いサポートを受けながらじっくりと転職活動を進めたい方に最適なエージェントです。
(参照:株式会社マイナビ 公式サイト)

これらの転職エージェントは、それぞれに特色があります。一つに絞るのではなく、2~3社に登録してみて、各社の求人の質やキャリアアドバイザーとの相性を比較しながら、自分にとって最適なパートナーを見つけることが、転職成功への近道です。